タイタニックに乗るもの

はやいもので今年も後一月を残すのみとなった。

今年は日本という国が未曾有の災害に襲われた年である。それにも関わらず、誰もがそう思うように、被害の収拾やそれ以前の旧既得権益層の払拭などを行うことが出来ずに、結局以前のフレームに戻ることを選んでしまった年である。

今年一年だけを振り返ってみても、政治は全く無力で、この国で実際に生活を営んでいる市井を守ることを迂回し続け、国家の権力欲を満足させるためだけに突き進んできた。

多分、政治家達は彼らの信じる国家観というものがあって、それを達成したときに国民の満足が最大になると盲目的に信じた結果が現状なのだろう。しかし僕たち国民は今も放射能の恐怖に怯え、生活の負担に疲弊し、将来の不安に為す術なく呆然としている。誰も政治の恩恵を受けていない一方、もはや期待もしていない。増税もTPPも嫌だけれど、やりたいなら勝手にやればいい、という厭世観が巷間に満ちている。

このブログは2009年の3月に、所謂西松事件というものが起こった時に始めたブログである。当時は正に長らく続いた自民党政権が風前の灯火となっていた時期で、政権交代前夜の風が至る所に吹いていた。そのような時代の空気を押し戻そうとするかのように、時の権力は野党第一党の党首の秘書らを逮捕し、彼らを使って党首を貶め、最終的には政権交代そのものを阻止する為に暴走したのである。マスゴミ達は権力の走狗となり、一緒になって当時民主党代表だった小沢一郎の失脚を煽り立てた。

まともな人間なら、あの時期にこのような強制捜査とバッシング報道が徹底的に展開される様子に戦慄したはずである。民主主義の世の中にあってはならないことが、さも正義であるかの如く平然と行われたことに対する憤りがあって、僕はこのブログを書き始めたのである。

結局のところ、僕の不安は現実のものとはならず、民主党は夏の選挙で国民からの圧倒的な支持を得て政権交代を成し遂げたのである。これは民主主義の手続きに沿った合法的な革命だった。この政権交代が何よりも貴重なのは、この革命が日本という国にとって、有史以来初めてとなる一般大衆の意思によって成されたものだったという点だった。

しかしながら、この政権交代の熱気は、鳩山政権が実務を執るに従って急速に萎み始めた。東アジア経済共栄圏、沖縄県の米軍基地移転問題、高速道路の無料化、年金改革、八ッ場ダムをはじめとした公共事業の見直しのような理想は次々と覆され、その度にマスゴミは「それみたことか」と舞い上がり罵声を浴びせ続けたのである。

鳩山政権は一年を保たず訳の分からない理由で崩壊し、次に菅直人が総理大臣の地位に就いた。菅直人総理在任中の今年3月11日、東北地方太平洋側沖で激しい地震が発生し、その後の津波の被害も含めて夥しい国民の命が奪われた。同時に福島第一原子力発電所では地球最大規模の原発事故と放射能汚染が起こり、これはまだ収斂の兆しすら見せてはいないどころか、露出した燃料棒は今この瞬間もメルトダウンの過程にあり、大気中や海中に放出された放射能による汚染はどんどんと広がっているのが現実である。

ポピュリズムをあてに打ち出した浜岡原発の停止要請だけが業績といっていい菅政権もやはり1年ほどで退陣の憂き目となり、なぜかその菅政権で重要閣僚を務めた野田佳彦が総理大臣に選ばれて現在に至るのだが、この野田政権はどういう訳か消費税増税を事実命題とする財務省傀儡政権としての性格を持つ。政権交代から2年と少しで民主党も変われば変わるものである。

もはや政治に何を期待せよというのかと、愚かしい現実の前に呆然と立ち竦む以外ないのだけれど、自民党も駄目で民主党も駄目という結果だけは確かなことのようだ。せめてそこから近い将来を占おうとすると、深くて暗い穴の底しか思い浮かんでこないのである。

日本は今まさに北極海で氷山に激突し沈没した豪華客船タイタニック号と同じ運命を辿ろうとしている。タイタニック号が氷山の存在に気付くのがもう少し早ければ衝突は迂回できたかもしれない。今の日本がまさにその時期にあり、今舵を切らないと手遅れになる瞬間なのである。しかしその一方で、僕たち国民はタイタニック号の乗客と同じように衝突するまで危機を知らないでいようとしている。

このブログの更新を長らく休んでいたのだけれど、今月は出来るだけ更新をしてみたいと思っている。その中で、今この国を襲っている本当の危機について自分なりの考えを次回以降纏めていきたい。

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