有権者の後ろ向きな投票行動が日本の未来を狭めてしまったこと

16日に投開票が行われた衆議院選挙の結果は何とも不思議なものだった。

小選挙区制の特徴が現れたといったらそれまでだが、選挙区において43%の得票率でしかなく、比例区では27.6%の得票率に過ぎない自民党が294議席(約61.3%)を獲得するという結果である。今更小選挙区制の弊害を議論したって始まらない。これが現実である。

公明党も前回21議席から31議席へと増やすことに成功した。これで自公併せて衆議院の約68%を占有することになり、今後参議院で否決された法案であっても衆議院に差し戻されれば三分の二以上の賛成可決でその法案は通ることになる。つまり、少なくても来夏の参議院選挙までは自公のやりたい放題が出来る訳である。

一方の民主党は57議席を何とか守ったといった程度で、今回大躍進した日本維新の会の54議席にあと少しで逆転される可能性まであったほどの大惨敗である。なにせ前回は308議席だったのである。投票直後の議席数ではなんと251議席の減少だ。これはちょっと聞いたことがない数字である。

その大躍進を果たした日本維新の会の得票数の内訳を見ると、選挙区では14議席に過ぎない一方で、比例区では圧倒的に強く40議席をとっている。この比例区での強さが躍進の原動力であり、多分マスコミを使った空中戦の賜物だろうと思われる。

さて、ここで日本未来の党である。このブログでも公言していたように、僕自身はこの党に期待をしていた。今回の選挙の本当の争点である『消費増税』『原発政策』『TPP参加』などに対して厳しい態度で挑んだ政党である。嘉田滋賀県知事を党首に飯田哲也という反原発運動の第一人者を副党首に据えて話題性も十分だと思っていたし、小沢一郎支持者も併せて30議席は堅いだろうと思っていたのだが、結果は9議席に過ぎず大惨敗となった。小沢一郎は選挙の神様のように言われているけれど、こんな大惨敗は嘗てなかったと思う。いくら小沢が仕切った選挙でないとはいってもあんまりな負けっぷりである。

自民党が第一党に返り咲くことは既定の事実であったし、民主党の凋落も誰もが予測していた。しかしその一方で、未来の党の不人気ぶりが不思議でならなかったのである。何せ、未来の党が掲げた先の三つの政策は、多くの有権者民主党に裏切られたと感じたマニュフェストをもう一度やり遂げようとするものであったからである。

結論を先に述べてしまうと、今回の選挙ではマニュフェストだの公約だの政策だの日本の将来だのについて有権者は判断しようとしなかったことだろうと思う。多くの有権者は『民主党には投票しない』ことを争点にしたのだろう。約束を守らなかった民主党政治家にお灸を据えるために投票したのである。

前回民主党に投票した有権者の票は自民党にもいっていない。今回自民党が獲得した票は小選挙区比例区共に前回と比べて微減となっているほどである。つまり前回民主党に入った票は今回は日本維新の会に行くか棄権となって投票率を下げることになった。日本未来の党へは向かわなかったのである。

その原因は新党の準備期間がほとんどなかったことでぶっつけ本番となってしまったことがあるだろうし、飯田哲也小沢一郎という組み合わせに、小沢支持者さえもが馴染むことが出来なかったこともあるだろう。しかし僕の印象では、小沢一郎はインターネットメディアに積極的に登場し好感触を得ていたのだが、逆にそれが変な自信をもつことに繋がったように思っている。

インターネットの世界では小沢一郎への支持は多いし日本未来の党も人気なのだが、現実の世界はそうではないのである。インターネットの中の世界を世論と勘違いすると痛い目を見る。今回の小沢一郎の動きの基礎部分にインターネットメディアで得た好感触があったとするのならば大いなる見込み違いだったろう。

近く国会では首班指名が行われ、安倍自民党総裁が総理大臣に就任し、再び安倍内閣が組閣されるだろう。前回就任直後はそこそこの支持率ではあった安倍内閣だが、半年もすると支持率は低下の一途で、やがては参議院選挙に惨敗し、結局は総理大臣を投げ出して終わってしまったあの安倍内閣である。極めてタカ派色の強い、憲法改正に熱心な、自衛隊国防軍化すると堂々と公言する安倍内閣である。消費増税に賛成し、原発の再稼働はおろか新規増設にも積極的で、TPPにも参加してアメリカの言いなりになることを好む安倍内閣である。そのような内閣に有権者衆議院の三分の二以上の数の力を与えてしまったのである。

安倍政権がタカ派としての本領を発揮し始めた時、国民はそれを止めさせる術をもたない。もう後で言っても遅いのである。残念なだけれどこれが現実だ。

日本という国家や、自分たちの社会の未来をどのようにするべきか真剣に考えず、政権与党にお灸を据えるために投票するなどといったバカな行為の行きつく果てがもうすぐ現実として見ることが出来るだろう。ヒトラーは革命を起こしてドイツ総統に就任したのではなく、ドイツ国民の投票によって民主的に選ばれたのである。今から100年近く前にドイツ人が起こした過ちを、今日本人が再び犯してしまったように思う。

社会のあり方を真剣に考えることなく、芸能人の人気投票のようなノリで投票した国民の未成熟度が、今後大きな不幸を呼ぶような気がしてならないのである。

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