戦前という今

16日の衆議院選挙までもうすぐだ。なのに自分の周りでは無関心が多数を占めている。よくよく聞くと無関心ではなく、『どうしたら良いのかわからない』という声が多い。つまり、選挙に行ってもどこに投票したら良いのかわからない、という意味である。

マスコミ報道によると自民・公明が優勢で民主は劣勢であるという。この三年間の政権運営マニフェストを勝手に反故にしたばかりか、当初の期待とは正反対の方向へと舵を切り続けた民主党が凋落するのはよくわかるのだが、一方で国民からNOを突きつけられたはずの自民・公明が優勢と言われるのはどういうことなのか。

そしてここに維新の会が絡んで問題を余計に複雑にしている。維新は第三極と言われながらも、党首に石原慎太郎を担ぎ、やれ徴兵制だの核武装だの、もはや正気を失っているとしか思えない言葉がこの党の中心部から響いてくる。その党がどうして第三極なのか、考えれば考えるほどわからなくなるだろう。

よくみると日本未来の党みんなの党などに関する報道は極端に少ない。たいていの人は報道された内容から政治を理解しようとする。だから情報がないと考えることが出来なくなる。今はまさにそんな状態な訳だ。

既に多くの人が指摘しているように、自民・公明に対して維新はその補完勢力である。自民と公明の獲得議席数が少ない時に、その数合わせをするのが補完勢力である。だから内容自体が自民や公明と違わない。橋下大阪市長は次から次へとコロコロと論点を変えながら、そして石原慎太郎タカ派としての本音を剥き出しにして、自民や公明の政策を更に過激なデコレーションを施して並べてみせる。

結局のところ、自民・公明・維新は消費税の増税を肯定し、原発を再稼働・推進し、TPPという従米隷属経済外交にも積極的であり、そして自衛隊国防軍化、徴兵制、憲法九条の改正にまで踏み込もうとしている。そうした主張に反対の立場を取る政党に関してはまるで報道がなく、言論が封殺されているのである。

こうした流れの行き着く先は『いつか来た道』である。極端な右傾化社会と対抗勢力の封殺という構図はもはや現代のものではなく、戦前の空気の再現としか思えない。太平洋戦争の敗北から、日本人は何も学ばなかった。そのツケを今払わされようとしている。

今のところ、自民・公明優位ということであるが、これは投票率が極めて悪いと予想される事が理由でもある。無党派と呼ばれる支持政党を持たない人々が『第三極』という嘘っぱちに混乱し、その結果投票行動が抑制されてしまっている。無党派層が投票に行かないと組織票を持つ自民・公明が優位である。

今回の選挙は争点が分かり辛いと言われるけれど、実は好戦的なタカ派が実権を握るかどうかという瀬戸際の選挙でもある。今までのどの選挙とも違って、特に若年層はその命が掛かっているといってもいいだろう。今自分の頭で考えることをしなければ、戦前という時代がもう一度やって来ることになる。そのような時代に生きる人々は不幸である。

とりあえず投票率を上げることが全ての抑止効果を持つ。周りの人々にとりあえず選挙に行くように声を掛けよう。

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