広瀬隆氏による「福島原発事故とメディア報道のあり方」をみて
3月17日、ジャーナリストの広瀬隆氏が衛星テレビの朝日ニューススター「ニュースの深層」という番組に出演したのだが、その時広瀬氏が話した内容がネットの中で話題になっている。
YouTubeへアップロードされた動画をここに貼り付けたのだが、いずれ削除されるかも知れないので、保存用として別サーバーにもあげておいた。万一YouTube動画が削除されても下記リンク先より見ることができるはずである。これらは上記YouTube動画とまったく同じものである。
広瀬隆氏というと一貫して反原発という立場を鮮明にしてきたジャーナリストであり、その事で多少バイアスがかかった言説を述べているはずだと色眼鏡で見ていたのだが、しかしこの動画を見ると論理は明快で大変分かりやすく、枝野官房長官や東京電力などの会見と比べても十分に対論として成立するように思える。
宮台真司は自身のtwitterでこの放送を紹介し、内容を箇条書きにしていた。
僕にできるのは情報拡散。緊急に拡散すべき広瀬隆の最重要論点。(1)空間線量発表に意味がなく内部被爆を起こす放射性物質飛散状況がポイント。(2)解説者やゲストが繰返す「直ちに健康に影響しない」はペテンで、通常は生涯のガン発症率がポイント。
(3)ただし若い女性や女児については内部被爆が妊娠出産に重大な障碍を与えうること。/それとは別に原発の現在状況についても各種論点が。広瀬氏と別に大切な論点。炉心温度変化のモニタリングデータが公表されないのは変。データが取れないのか公表しないのか
最後に情報拡散の必要性について確認。広瀬氏は「混乱させてはいけないから」というパターナリズムを無責任な犯罪だと断言し、従来の海外マスコミは起こり得る最悪事態を(できれば確率論的に)伝えてきたと仰言った(実際炉心温度データを絶えず報道)。この構えの大切さ自体をも伝える必要。
RT @buvery: まちがい。広瀬さんの意見は知っています。正しくは(γ線)線量率こそ放射線量(主にヨード131)の飛散の測定そのもの。線量率のデータこそが大事。@miyadai (1)空間線量発表に意味がなく内部被爆を起こす放射性物質飛散状況がポイント。
RT @buvery: 原子炉付近での線量率<=原子炉から直接+付近に飛散した放射性物質から、原子炉から遠くはなれたところの線量率<=風で飛散した放射性物質から、です。原子炉の作業している人は前者、遠くはなれた一般人には後者が意味のあるもの。
またビデオニュース・ドットコムでは福島原発事故の現状と今後想定される問題点について、京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏に、ジャーナリストの青木理氏が電話インタビューした模様が無料で公開されている。
福島原発事故 京都大学原子炉実験所助教・小出裕章氏電話インタビュー
ここで小出助教綬は、まずメルトダウンの基礎的な説明から始める。
- 広島原発で燃えたウランは800グラムだが100万キロワット級の平均的原子炉が1日で燃やすウランは3キロである。
- そのウラン燃料が冷やせない状態になり一部で溶融が始まっている。
- スリーマイル島原発事故では45パーセントのウラン燃料が溶融し下に溜まったが底が抜けることはなかった。
- スリーマイル島原発事故では電源は生きていて冷却ポンプが動き原子炉の冷却が出来た。
- しかし福島第一原発では電源がなく燃料を冷やすことが出来ない。これが最も大きな問題となっている。
- 政府や報道が大丈夫といっているのだが実際はどんどん悪化している。
- 炉心が熱で溶けると圧力容器の底に溶融した燃料が溜まり(メルトダウン)そこに水が残っていると水蒸気爆発を起こす。
- 水蒸気爆発が起こると圧力容器が壊れてしまう。
- その時には圧力容器の中にある格納容器も壊れる可能性が高い。
- その時は放射能を閉じこめている全ての機能が失われる。
- 水蒸気爆発がたとえ起こらなくてもメルトダウンした場合には圧力容器の底を抜く可能性がある。何故ならば炉心は2.800度にならないと溶けないが圧力容器は鋼鉄製なので1.500度で溶けてしまう。
- 圧力容器から抜けた燃料は格納容器の薄い鋼鉄にたまり、そこに水があると蒸気爆発を起こすことになる。
- 原子力保安院はこの事故をレベル4といっているが実際はチェルノブイリ級のレベル7に可能性がある。なぜなら4基の事故原発を合わせるとチェルノブイリの2倍の規模となる。
- メルトダウンしたときは風向きによって放射能の届き方が違う。
- その時は東京にも届くがどの程度かは分からない。
- 放射線と放射能物質とは違う。放射能物質が拡散すると相当な汚染が広がるだろう。
- 福島から東京まで約200キロ。チェルノブイリの時は200〜300キロ離れたカナダで放射能汚染が見つかった。これは放射能物質が雨雲に乗って長距離を移動したものである。
- だから放射能物質が流れ出たときにはどこで雨が降るのかが最も重要である。
- 放射能物質の被害はすぐに出るものではなく将来の癌発生率などに繋がるものであり、子供などは特に注意が必要である。
- 現状の事故原発周辺は正確には分からないが相当汚れることが予想できるが多分現時点の汚染で済むのであれば除洗後住民が帰ることも可能。
これはビデオを視ながら粗っぽくメモをとったものであり、やはりビデオニュース・ドットコムの番組を実際に見た方が確実である。
このビデオを見て、先の広瀬隆氏の番組も見ると、かなりの部分が重なっていることが分かるのである。それ故、一部の広瀬隆嫌いの人々がこんなビデオは嘘だと言っていても、広瀬隆の方を納得して見てしまうことになるのである。
現在、情報というものはその全てが正しいわけではなく、色々な情報を受け手側が判断し忖度することが必要である。どの情報にも何らかのスピンがかけられていて、完全に公平中立な情報などないと思った方が利口だ。官邸情報や東電の会見を信じるのもよし、広瀬隆を信じるのもよし。全て自分がリスクととらなければならないのである。
(3月22日追記)
ビデオニュース・ドットコムにおいても広瀬隆氏のインタビューが行われ無料公開されています。収録は3月19日のようです。
予言されていた“原発震災”広瀬隆氏インタビュー(ビデオニュース・ドットコム)