総務省が一般記者に会見を開放した模様

原口大臣が率いる総務省が会見を記者クラブだけではなく、フリーランス等の記者にも開放した様子なのだが、あまり報じられていないので取り上げてみようと思う。

総務省は、NHKを始め各報道機関等の窓口にもなっている省庁である。また原口大臣は日本版FCCの創設にも積極的で、記者クラブ解放問題にも当初から理解を示した大臣だった。それがここまで遅れた経緯は昨年12月8日のJ-CASTニュースの下記記事を読むと少しわかる。

「ネット中継大歓迎」 総務相記者会見も開放へ (J-CASTニュース)

ここで記者クラブに加盟していないJ-CASTの記者は、記者クラブに申請をして総務大臣の記者会見に参加する。しかし記者クラブに加盟していない記者には制限があって、会見を聞くことは出来るが質問してはいけないというローカルルールが存在したのである。以下は上記リンクからの抜粋である。

そのようなわけで前日までに幹事社に打診して参加許可をもらっていたのだが、そこには「参加するのはいいが、質問してはいけない」という条件が付けられていた。記者として会見に参加するのに質問できない――あまりにも不合理で、不可解なルール。「なぜ質問できないのか」。そう記者クラブの記者にたずねても、「理由はよくわからないが、制度だから仕方ない」という返事が返ってくるばかりだった。

そしてこの記者は質問できない事態に悶々としながら会見を聞き続け、最後に意を決して手を挙げることになる。

会見から約30分がたったとき、原口大臣が「よろしいでしょうか?」と会見終了の問いかけをして、クラブの記者が「ありがとうございました」と応じた。そのときだ。「大臣!」。J-CASTニュースの記者は思い切って手をあげ、発言を求めた。

「今日は『質問してはいけない』というクラブからの申し入れがありましたので、『質問』ではなく『問題提起』としてお話させていただきます」

そう口火を切って、記者会見オープン化についての「問題提起」に及んだのだ。

「9 月に記者会見をオープンにするという提案を大臣がされていますが、2か月以上たっても、まだ実施にいたっていません。金融庁では亀井大臣主催の会見が開かれていて、まさしくいまネットで中継されています。情報通信政策を主導する総務省として、また国民の平等なアクセスという観点から、もう一つ別に、クラブ以外の会見を開いたらいかがでしょうか」

そう一気に話した。「質問」ではなかったためか、記者クラブの記者による制止はなかった。

その「問題提起」に対する原口大臣の答えが以降続く。

原口総務相は一瞬驚いた表情を浮かべたが、こちらの目をしっかり見て、話を聞いてくれた。そして、次のように発言したのだ。

問題提起ということで、質問に答えるのはできないということですが(笑)、それも変な話です」

と「奇妙なルール」への感想を述べたうえで、記者会見オープン化についての見解を明らかにした。

「私は、すべての人にアクセスされるということで、記者クラブには『セキュリティの問題などをクリアーしたうえで、オープンにしてください』というお願いをしています。まだそのことが検討中なのだと思いますが、もうそろそろ70日を超えますので、どういうご決断をいただいたのかをうかがって、私たちの意図と違うのであれば、また話し合いを進めていきたいと思います」

このように記者会見オープン化に向けた強い意欲を示し、最後にこう付け足したのだった。

「インターネットの中継、大歓迎です」

原口総務相の発言によって、総務省記者クラブは改めて宿題を突きつけられた形になった。

その原口大臣の啖呵が本当に実行されるのか、空手形に終わるのか、どちらともつかないまま年が明けて、そして昨日1月4日、記者クラブ解放問題で有名になったフリージャーナリスト上杉隆氏のtwitterによって、総務省の会見が開放されたことを知ることになったのである。以下はその上杉隆氏のtwitterからの抜粋である。twitterの性格上一つの記事は140文字までとなり、短い記事が次々と投稿された。

  • 原口総務大臣、本日より政務三役会議を公開。これは一種の革命だな。12:48 PM Jan 4th
  • 総務省に電話。上杉「本日の政務三役会議を取材したいのですが」 総務省記者クラブにつなぎます」 上杉「私は記者クラブ員ではありません」 総務省「幹事社に申請してください」 上杉「大臣主催のはずですが…」 総務省「少しお待ちください」1:46 PM Jan 4th
  • 総務省に電話2です。総務省「正面入口で受け付けてください」 上杉「入れますか?」 総務省「大臣面会と言っていただければ」 上杉「面会じゃなくて取材ですが」 総務省「傍聴ということで」 役人の意識改革はまだまだ遠そうですね、原口さん。1:49 PM Jan 4th
  • これより、総務省に突撃します。某「名人」ではありません(笑)。1:56 PM Jan 4th
  • 案の定、入口で足止め。上杉「政務三役会議の傍聴。アポもあります」 総務省「入れません。許可もしてません」 上杉「そんなことないでしょう。確認してください」 総務省「聞いてません。面会票に記入してください」2:35 PM Jan 4th
  • 大臣に直接電話したら、入れました。なんなんだ。いま政務三役会議始まった。アタマ撮り中@大臣室。新年早々、可能な限りtsudaります。2:36 PM Jan 4th
  • 原口大臣から冒頭の言葉。2:37 PM Jan 4th
  • 原口大臣「政務三役会議はフルオープンです。国民に示したい」 役人「ここでカメラマンは出て行ってください」 原口大臣「いいです。フルオープンですからそのまま残ってください」 役人「えっ」。2:39 PM Jan 4th
  • メンバーは原口大臣、渡辺周副大臣内藤正光副大臣、小川政務官、長谷川政務官、逢坂政務官。四角いテーブルに座り、モニターを見ながら渡辺副大臣が医療大学のモデル事業を説明中。2:42 PM Jan 4th
  • 正面の窓際の壁に並べた椅子に役人が座る。1、2、3、4人。衝立の姿を隠した役人が多数。変なの。テレビ東京ガイアの夜明け」が映像で流される。医療問題。旭川医科大学。2:45 PM Jan 4th
  • 記者は約30人。私は最前列の中央の席に。後ろからつぶやいているのを見られているような・・・(笑)。2:46 PM Jan 4th
  • 遠隔医療に関しては、総務省として古川元久内閣府副大臣と連携し、着地することで確認。これぞ、政策決定の瞬間。2:49 PM Jan 4th
  • 内藤副大臣から「成長戦略」について。それにしても役人はまったくタッチできないのは本当。どんな心境なんだろう。きっとむかついているんだろうなぁ。2:50 PM Jan 4th
  • 原口大臣「成長戦略について、勝手に文言を変えていたことがわかった。いったい誰が中途で変えたのか。夜中に変えたのか。どこで変えたのか。誰が変えたのか。選挙で選ばれていない人が勝手に変えるのは許しがたい。小川政務官、文書の上書きについて対応をしてください」 大臣、役人の暴走を牽制。2:53 PM Jan 4th
  • 内藤副大臣が通信分野政策について発言。原口大臣、NTT西日本の不祥事について、内藤副大臣に厳しい対応を指示。ツイッター使いの逢坂政務官が発言。2:55 PM Jan 4th
  • 代々木の派遣村。原口大臣視察。16歳から80歳が滞在。具体的な話をしてきた。かなり雇用状況は厳しい。お、終わった。2:57 PM Jan 4th
  • 終わった。いま大臣室脇で秘書たちと談笑。役人たちの視線が厳しい。なぜだろう(笑)。と思ったら、挨拶してくれた。気のせいだったら。気が弱いから、イジメられることに敏感なんです、ぼく。3:02 PM Jan 4th
  • 秘書官たちが別室で事後対応。政務三役会議は政務も事務も大変だ。小川政務官を待っているんだけど、長引きそうなのでそろそろ帰ろうかな〜。3:15 PM Jan 4th
  • ツイッターを観ている朝日新聞記者(池田さん)が言及。「上杉さん、役人じゃなくて、記者たちからの視線が厳しいんじゃない?」。確かに…(笑)。3:17 PM Jan 4th
  • つぶやくの、疲れた。原稿書かなきゃ。バイバーイ。3:17 PM Jan 4th

何と原口大臣は大臣会見だけではなく政務三役会議そのものを開放し、しかも会議中の撮影まで許可してしまった。現場で中継していた上杉隆氏も仰天していたようだが、それを見ていたこちらも驚いた。役人たちも驚いていたようだが、その様子を想像すると何とも可笑しい。

携帯電話からなのかノートパソコンからなのか、上杉隆氏がこの時使っていたデバイスが何なのかわからない。またtwitterの性格上、これらは記事というよりもメモ書きというか呟きのようなものである。しかし、こうしてまとめて読むと実況されている迫力が伝わってくる。ちなみにtwitterとは小鳥などのさえずり、という意味である。

例えば上記のtwitter上でも、原口大臣が「成長戦略について、勝手に文言を変えていたことがわかった。いったい誰が中途で変えたのか。夜中に変えたのか。どこで変えたのか。誰が変えたのか。選挙で選ばれていない人が勝手に変えるのは許しがたい。小川政務官、文書の上書きについて対応をしてください」と発言していることも、記者クラブの中だけで行われていたら、外に出ることはなかったろう。

こうして国民に知れることで、民主党の成長戦略を役人が勝手に改竄した事実があり、その首謀者が誰かを大臣が調査するように命じたことが明らかになった。次に記者たちは、勝手に成長戦略を改竄したのは誰か、しつこく会見で質問すればよいのである。役人とズブズブの関係となっている記者クラブ加盟記者には出来ないだろうけれど。

斯様に記者クラブを開放し、政府の手の内を役人と記者クラブ内だけで留めておくことよりも、直接政治家の言葉を国民に伝えることの方が、国民の知る権利を守ることになる。

鳩山首相も昨年末に行った偽装献金問題への釈明会見において、記者クラブ開放について「必ずやる」と明言した。鳩山首相は小沢元代表から民主党代表をバトンタッチされた時も、記者クラブ開放をやると明言してそのまま放ったらかした前科があり、この点では眉唾物なのだが、もはや野党代表の言葉ではなく、一国の総理大臣として約束したのだから、その重みは遙かに大きい。もうそろそろじゃないか、と期待している。


21:10 追記
総務省記者会見開放の確認がとれた。まだまだ完全なオープン状態とは言えないようだけれど、とりあえずは一歩前進したようである。

フリーやネットの記者が張り切る 総務大臣会見の開放スタート (J-CASTニュース)

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