民主公約の記者クラブ開放、今日は間に合わなかったみたい。



(当初挿入していた動画がリンク切れしたため別の動画に変更しました。10/10)

今日、麻生内閣は総辞職し鳩山由紀夫政権が発足した。とりあえずは目出度いことである。

ただ、僕は残念でならないことがひとつある。それは、民主党代表が岡田氏の頃から続いてきた記者会見の開放である。岡田代表時代以降、民主党の記者会見は、記者クラブ所属の報道機関のみでなく、外国人記者、雑誌メディア、そしてフリーランスのジャーナリストらにも開放されてきた。

また、ことあるごとに、上杉隆神保哲生といったフリーランスや、インターネットメディアのジャーナリスト等が、政権をとっても記者会見を開放する方針に変更はないかどうか当時の代表に質問してきた。その答えは上記の動画を見ればわかるとおり、小沢一郎鳩山由紀夫もはっきりと記者会見開放の方針に変更はない、と答えているのである。

しかし、先週あたりから官房長官に事実上内定したとされる平野博文あたりが、記者会見の開放について否定的な見解を出しているようだという噂が流れ、今週にはいるとフリーランスのジャーナリスト等が一斉に記者会見は閉鎖される模様だ、と発信し始めた。

宮台真司によると、平野博文官房長官は、現在のところセキュリティーに関して問題がある、と話していたらしく、そうであればセキュリティ問題が解決すれば記者会見は全てのメディアに開放されるのではないか、と僕は思っていた。何せ総理大臣等重要閣僚の会見であり、国家としてVIPの人々と直接面する場に出席するわけであるから、ある程度の身辺確認は必要だろうと思うのである。

しかし、インターネットメディアのThe Journalによると、事情はもう少し複雑なようだ。

新聞が書かない民主党の「公約破り」 (山口一臣の「ダメだめ編集長日記」)

上記記事の中で山口氏は相当怒っているようだが、多少はポーズとして割り引いても、やはり裏切られた感が強いのだろうと思う。その怒りの理由を述べた部分を、少々長いけれども以下に引用する。

 総選挙が終わった直後から、実はこの問題に関して水面下で熾烈な戦いが繰り広げられていた。記者クラブを形成する既得権メディアが経営幹部から一線記者まで動員して、さまざまなルートで民主党の各層に働きかけを行っていた。鳩山由紀夫代表に直接、電話を入れた大手新聞社の首脳がいれば、秘書や側近議員の籠絡を担当した記者もいたという。
 そのときの共通する殺し文句が、「新聞、テレビなどのメディアを敵に回すと政権が長く持ちませんよ」というものだったという。政権発足前からさかんに行われていた「小沢支配」「二重権力構造」批判といった実体を伴わないネガティブキャンペーンも、実はこの延長線上にあったのではないか、とわたしは疑っている。
 こうした既得権メディアの意を受けた党内抵抗勢力の中心が、藤井裕久@新財務相平野博文@新官房長官だった。とくに平野氏は官房長官として内閣記者会とのパイプ役となる立場だけに、取り巻きの記者に対して「『記者クラブ開放』は俺がツブす」と息巻いていたという。平野氏にとっては民主党のDNA(by神保さん)であり民主党革命の真髄といえる「情報公開」(ディスクロージャー)よりも、目先の自分の仕事をやりやすくすることのほうが重要なようだ。こんなことで既得権の牙城といえる霞が関に本気で切り込めるのか、先が思いやられるというものだ。

こうなると民主党には説明責任が発生する。何せ小沢、鳩山各代表がテレビカメラの前で堂々と約束していたのである。その約束が履行されないとなれば、どうしてなのか理由を説明するべきだろう。セキュリティ問題なのか、或いは記者クラブ側との裏取引があったのか、きちんと説明して欲しく思う。

記者クラブ制度がどうしていけないのかというと、それが外国メディアの記者や雑誌記者、フリーランス記者等が排除されるという閉鎖的な報道クラブであるからで、その結果、政権と記者クラブ側との馴れ合いの場となってしまうからである。

記者クラブを特権的に位置づけ、記者クラブのみに一次情報を渡す。すると記者クラブ側はそれを元にして紙面を作ることが出来る。面倒な独自取材は必要ないし、記者クラブ報道機関は全て同じ情報でニュースを作るのでお互い出し抜かれる心配もない。

権力と報道が馴れ合ってしまうと、権力側に都合のよい報道しか行われず、国民は真実を見ることが出来なくなる。つまり最終的には国民の知る権利が阻害されるのである。郵政民営化の時など、小泉首相に都合のいい報道しか為されず、その結果自民党衆議院選挙で圧勝し、その後麻生政権が潰れるまで国民は悪政に苦しんだことを忘れてはならない。

また、下記のリンク先(J-CASTニュース)ではさらに突っ込んだ書き方をしている。
首相記者会見「オープンにする」 鳩山政権「公約」破り、ネット「締め出し」 (J-CAST ニュース)

民主党関係者はJ-CASTニュースに対し、
「会見をオープンにするよう努力して記者会側と交渉しています。ネットメディアも会見に参加できるよう要望していると聞いています」
と話している。もっとも、記者会幹事社の共同通信によると、ネットメディアに関する要望は民主党側からはなかったという。

これが本当だとするとちょっと酷い。

ただ僕としては、政権交代がこうして現実に起こって、鳩山内閣が誕生したこと自体は喜ぶべきことであり、これを記者会見の開放が為されなかったからというだけで否定するわけではない。新政権が出来て、先ずは100日ほどは様子を見る、というのがアメリカの新大統領に対する国民のスタンスであると聞く。それなら、僕も100日ほどは目を三角にせずにいこうと思う。

小沢氏も鳩山氏もあれだけはっきりと約束したんだもの。100日以内に明るい道筋を指し示してくれるだろうと大いに期待している。