仲川元庸奈良市長のガム噛み事件に見る民主党の弱点

本来政権交代のサポーターであるはずのこのブログなのだが、昨日の記者クラブ存続問題に続いて民主党に苦言を呈する記事を書くことになってしまった。せっかく鳩山内閣がスタートしたというのに残念なことである。

7月の市長選挙で当選した民主党推薦の仲川市長が、就任後初の定例市議会本会議(11日)でガムや飴を食べながら答弁したと伝えられた。色々な記事を見たのだが、実際に演壇で喋るときにガムを噛んでいたのか、席について議会が進行していない待ち時間の時だったのか定かではない。とにかく議場で会議中にガムや飴を食べていたことは間違いないようだ。

奈良市長、ガムかみながら答弁 「せき込むの防ぐため」 (asahi.com)

要するに「気管支が弱く、せき込むのを防ぐため」だったからで、実は報道にある飴というのはトローチだったらしいとの記述もあった。国会などでも、年配の議員などが仁丹などを口に含むシーンをテレビなどで見ることがあるのだが、トローチや飴ならともかく流石にガムは如何なものか、という印象を持つ。

本日の件 (仲川げんのブログ)

上記リンクは仲川市長のブログであり、そこでは謝罪が行われている。仲川市長はまだ33歳という若さで全国で2番目に若い市長である。NPO職員からいきなり市長に抜擢されたという経歴を持つのだが、残念なことに議員経験がなく、議会も始めてのはずである。突端からケチが付いてしまった。残念なことである。

特に何か失政を行ったわけでもなく、勿論汚職などといった市民を裏切る行為ではないので、ここで舵を切り直し本来のマニフェストを実現すべく努力してもらえば奈良市有権者も大目に見るだろう。僕も奈良市民な訳だが、今のところ周りの市民は平静で、若気の至り程度の感想に感じる。

仲川市長に対しては、自分の周りは敵だらけであるという認識をもう一度持つべきだろう。奈良市市議会というのは魑魅魍魎の巣のようなところであり、今も利権に絡んだ市議達が、対立する市長や市議達の足を引っ張ろうと抜け目なく待ちかまえているのである。

例えば、仲川市長と市長選を争い落選した鍵田忠兵衛氏は2004年9月に市長職に就任した元市長なのだが、市長時代に、父・忠三郎の遺産を巡る相続税の不納欠損(未納)問題や、当選後に市内の寺への50万円を寄付した事が公職選挙法に触れるのではという疑惑を暴かれ、1年にも満たず市長を辞職している。

この時、相続税の未納問題を暴いたのは反鍵田派の市議であり、税務課の職員を使って私的に調べさせたという。その結果プライバシーの侵害等の法律に触れ、この市議自身も逮捕され執行猶予が付く判決を言い渡され有罪となったという。当然市議も辞職したのだが、先の市長選挙の時、奈良市市議会選挙も同時に行われ、この市議も再び立候補し見事に返り咲いている。勿論選挙の時には逮捕され有罪となったことなど一切伏せていた。魑魅魍魎の巣と言われるひとつの所以である。

これは極端な例だと思うのだけれど、33歳の全国で2番目に若い仲川市長が相対するのはそのような場所なのである。よほど心してかからないとすぐに足をすくわれる。

そして僕が思うに、民主党のひとつの弱点がここに現れていると思うのだ。それは民主党という政党がまだ若く、地方の組織にまで人材が行き渡っていないという点である。

仲川市長が人材として弱いというのではなく、こういう若い人が出てくる際に、周りを見渡せる手練手管に長けたベテランが重石としていると有り難いわけだ。民主党は若く優秀な人材は集まっているが、一方でこうしたベテランが欠けている。特に地方に欠けていると思う。

もう一つの例を出すと、先の衆議院選挙で比例東海ブロックで当選した磯谷香代子氏などがある。
「名簿に名前載せただけ」で当選 フリーター磯谷香代子議員の「超幸運」 (J-CAST ニュース)

磯谷さんを誘ったのは愛知選挙区の谷岡郁子参院議員。谷岡議員は公示3日前の8月15日、小沢一郎代表代行から「今日中に比例候補者を上げてくれ」との連絡を受けた。比例候補が不足しそうだからで、候補者の選抜の条件は仕事を辞める必要がなく、立候補に必要な住民票などをすぐに出せる人。谷岡議員は複数の人に声を掛けたが、最後に残ったのが「愛・地球博愛知万博)」の市民プロジェクトで知り合った磯谷さんだった。磯谷さんは市民活動に熱心で、谷岡議員は「人に迎合しないところが政治家向き」と評している。

磯谷議員の国会議員の資質をとやかく言う前に、選考の過程がかなり杜撰に見える。比例名簿の最後の方だったので、当選するはずがないと思っていたのだろうけれど、これも仲川市長のガム噛み事件と同じくあまりにも軽い。こうした選考過程に建設的な意見を言える経験者がいないことが露呈しているように思う。

もっとも逆に考えれば、そのようなベテランという一歩間違えば老害のような連中がいないというのも民主党の魅力であり、自民党とは違う雰囲気を常に醸し出している所以でもある。しかし、やはりそれは諸刃の剣であり、今回のような件に対してはその悪い面が出てしまったように思う。