亀井静香劇場が開幕していますよ、っと。

6月2日に採決のあった内閣不信任案は、菅首相が辞めると約束したということで否決となったのだが、菅首相は辞める気配もないどころかますます首相続投に意欲を燃やしているようである。この裏事情には色々な憶測があるけれど、結局は人のいい鳩山前首相がまんまと嵌められたということだろう。

魑魅魍魎の跋扈する政界ではいかにも起こりそうなことであり、しかも人格障害としか言い様のない菅直人のことなので、例え総理大臣という役職にあってもその地位に相応しい振る舞いなど元から期待できるわけもなく、さもありなんという感想である。そんなことよりも、その結果何が起こったのかを観察する方がずっと興味深い。

当初は不信任案が否決されたことを前面に出していた岡田幹事長や枝野官房長官らが、一夜明けると首相退陣を前提に話を進めるようになり始めた。これは結局のところ、震災対応した第2次補正予算案の参議院通過と引き替えに、菅首相を辞任させるという進路を取り始めたという訳である。

同時に、次の首相候補に野田財務大臣の名前がマスコミを賑わせることになった。これまで地味で存在感の薄かった野田財務相としては初めて檜舞台に躍り出た感じである。因みに、野田財務相自身は総裁選に立候補する意向を述べはしたが、それは首相候補として騒がれだして以降のことである。つまり、次期首相として野田財務相の名前はマスコミにリークされた訳だ。もちろんこれはリークした側の戦略があってマスコミは利用されているのだが、相変わらずマスコミはそれを有り難そうに報じているだけの話である。

一方で菅首相はますます総理大臣の椅子に固執し始めたようである。自分の首を賭けて第2次補正予算案を通過されては堪らないから1.5次補正と呼び方を変えた。姑息さもここまでくると笑ってしまうのだが、菅首相はどうやら真剣である。また、仙谷・岡田・枝野らが自分から離れていったことをみて、いきなり再生可能エネルギーを唱え始めた。

これはドイツやイタリアで脱原発運動が起き、社会が原発の未来を否定し始めていることを見据えて乗っかったわけである。昨日6月15日も、再生可能エネルギー勉強会にやってきてスピーチを行い、パネリストの孫正義氏らから絶賛を受けたという*1。こうした最近の菅首相の動きは例えば下記リンク先にある岩上安身氏による飯田哲也氏へのインタビューでもわかるように、脱原発ムーブメントの中心にいる人々の心を揺さぶっているようである。
飯田哲也氏のコメント で漠然とした不安が事実と気が付いた6/11(内容書き出し) みんな楽しくHappy♡がいい♪ブログ様

菅首相といえば、昨年の参議院選挙前では消費税増税を口走って失敗し、代表選の時は「一に雇用二に雇用」を連発し、その後TPPに注力するかと思えばいつの間にやらそれら全てをまったく忘れてしまったかのような責任感のなさが身上で、この一年間というもの、自身の支持率に効果がないと分かるとさっさと次の案件に首を突っ込むだけだった訳である。

だから、再生可能エネルギーへの傾注具合もそれが保身に効果がないと分かるとさっさと忘れ去るだろうと思うのだが、一方で脱原発派の人々も菅首相再生可能エネルギーにやる気を見せているので、取り敢えず総理大臣職にあるうちに電力の買い取り法案だけでも通させようと狙っているようである。

現在は菅首相は総理大臣を辞めないし、閣僚は菅首相を下ろしたいし、脱原発派の人々は菅が総理でいる間に電力の買い取り法案を通させようとしている。自民党は鳩山前首相が菅首相辞任を約束したと同時に不信任案を取り下げるべきだったのに強行してしまったおかげで、今国会は不信任案を出せないという痛恨のミスを犯しているので、参議院での問責決議案という強制力のない決議案しか切り札がない*2

こうした表面上の動きとは別に、今政府が熱心に動いているのが実は増税案である。本来菅首相のミッションは消費税でも所得税でも何でもいいから増税を行うことであった。しかし菅首相では力不足であり、自身の保身ばかりしているのでなかなか増税へリーチをかけられない。そこで菅を替えてしまおうというのが、不信任案否決後の民主党執行部の本当の意図だろうと思う。野田財務相など増税に躍起になっている財務省のお墨付きである。

実は、仙谷・岡田・枝野が離れていった菅首相にとって、今最も知恵袋的な役割を担っているのが亀井静香であるようだ。不信任案決議の前日、鳩山前首相の前に菅首相と会談し「断腸の思いで辞任を勧めた」と言ったとされる亀井静香であるが、その後もちょくちょく菅首相を訪れ政局指南を行っているようである。実際、菅首相亀井静香のおかげかどうか意気軒昂のようであり、自然エネルギーへの理解を示してみたり、1.5次補正などと2次補正の呼び名を替えたり、挙げ句の果ては内閣改造まで言い始めている。

この期に及んで内閣改造など殆ど狂気の世界に思えるのだが、菅は本気で言っているのだろう。そして亀井静香はそんな菅を上手く利用しているのだろう。多分仙谷らが離れていったのを見据えて、孤立無援となった菅首相に取り入り被災地対策の一つでも成し遂げようというくらいだろうが、何せ百戦錬磨の亀井静香である。この機会に仙谷一派と自民党を上手くパージするするところまで画を描いているのかもしれない。少なくとも、財務省が目論むような安易な増税は少し難しくなってきたといえるだろうと思う。何せ亀井静香国民新党郵政民営化に反対して自民党を追われた議員らが作った政党なのである。これは財務省支配とは対極にある考えである。

東北の震災と福島第一原発事故により被害を被った人々の為にも、仙谷一派に代表される現民主党執行部や自民党長老など政局バカ達はなるべく早くパージし、復興策を制定する必要があると思う。その為には火をつけて回って追い出すべき者達は早々に追い出すべきなのである。

菅首相は8月あたりまで続投することになるかもしれないし、その後は衆議院選挙になるかもしれない。僕としては既に気が触れているとしか思えない菅首相などさっさと退陣してほしいところではあるが、どうにもならない政界を浄化できるのであれば多少回り道であっても仕方がないと思う。多少楽観論が過ぎるとは思うけれど、急がば回れ、である。

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*1:会場には宮台真治もいて熱心に拍手していたという。

*2:不信任案を取り下げなかったことで自民党のレベルの低さがよく分かる。