野田新代表は民主党の死に水を取れるのか

今日の午後、菅首相の退陣表明を受けて、民主党の新しい代表が選ばれた。結果は意外にも野田佳彦財務大臣で、はっきり言って財務相時代に特に目立った実績を残していない人である。

この野田議員がどのような経緯で選ばれたのかという細かな話は他所に譲るとして、今回の党代表を選ぶという選挙は、実は新しい日本の総理大臣を選ぶことはもちろん、民主党の最後の総理大臣となる可能性を秘めていることを忘れてはならない。

つまり、野田新政権は衆議院の解散を行う可能性が鳩山〜菅政権時代よりも高く、総選挙の結果民主党は惨敗し政権を明け渡す可能性が高いのである。

何故かというと衆議院の任期は4年なので2013年の8月頃までがその任期ではあるが、任期ギリギリまで政権を保たせると大抵失敗することは三木や麻生政権を見ても明らかな事実であり、野田が早期退陣するとしても早期退陣した首相に代わって選挙を指揮し勝利に結びつけることの出来るスーパーパワーの持ち主など今の民主党にいるわけもなく、基本的に野田がしくじったら心中するしか道が残されていないからである。

さて、今回の野田財務相の総理大臣への横滑りとも言うべき結果に対して、2009年の政権交代を応援してきたこのブログとしても一応は意見を表明するべきだろうと思い今回のブログ更新となった。

まず目につくのは、今回野田を代表に選んだ民主党議員たちの見識のなさである。菅首相に退陣を公然と迫りながら、その重要閣僚を次の代表に選ぶということ自体、これは政策論争ではなくただの権力争いであることを如実に表している。それは例えば野田の代表選挙演説に現在危急の案件とされている原発問題に関する意見がまるでなかったことにも明らかである。

また、相変わらずの「反小沢」」ぶりも、情けないを通り越して目を覆わんばかりの破廉恥さが見えた。一体全体、彼らの「反小沢」の根拠は一体何であるのか、一度たりとて明確に説明されたことなどないのである。これは、報道が一斉に「反小沢」の合唱を行うとき、その流れに逆らう場所にいると自分まで巻き込まれてしまうというおおよそ国会議員にあるまじき行動原理によるものであり、その結果起こる自分の選挙区での有権者離れを畏れているからだろうと容易に推察できる。

そのような情けない性根の議員たちであるから、菅政権で失敗した原因の究明も総括も行わず、そのままダラダラと反小沢で結集し、菅政権の重要閣僚を代表に選ぶという愚行さえも厚顔無恥に行えてしまうわけである。

もう一つ、外の世界を知らない無菌室で純粋培養された松下政経塾系議員たちが今回とった行動は、この代表選挙が東アジアの覇権を賭けた重要な選挙であることに恐ろしく無頓着であるか、知っていて無視しているのかのどちらかであり、これは日本という国の国益を損ねるほどの犯罪行為を働いているに等しいのである。

ケビン・メア著「決断できない日本(文春新書)」等を読めば一目瞭然であるが、米国が日本に期待しているのは、崩壊する米国の財政支出を肩代わりすることと、東アジア圏に於ける中国覇権への対抗手段の礎となることである。つまり米国は日本が独自に東アジア外交を行うことに神経を尖らせている。中国やロシアと友好関係を結ぶことは現在の米国覇権を損なうことになると畏れているのである。

小沢=鳩山ラインは正に「東アジア共同体構想」と銘打った思想を正面に掲げ、これが米国の顰蹙をかったことは先のメアの本にも明らかにされている。鳩山退陣後に出来た菅政権が「東アジア共同体構想」を反古にしまったく触れなかったことは紛れもない事実であり、菅は政権維持のため米国にアジア覇権を売り飛ばすことを厭わなかったわけだ。

今日投票の行われた代表選挙でも、小沢=鳩山ラインが推す海江田が中国通であり、この「東アジア共同体構想」を再び口に出したことは、米国とズブズブに懇ろになっている議員たちを再びパニックに落とし込んだことは想像に難くない。

そのような議員たちが選んだ、菅政権という旧態依然の従米隷属政権から横滑りしてきた新代表を掲げることになる民主党という政党は、これから急速に死に向かうだろう。菅政権でどん底まで墜ちた政党支持率は回復することもなく、多くの国民の期待を裏切ったまま解散総選挙を迎えることになることは必然となる。そしてそれまでの期間、日本はさらに経済的に没落を続けることとなる。

小沢一郎はこの程度のことは十分承知であろうから、年末に向けて新党という選択肢を考慮することになるだろう。しかしながら、もはや小沢自身にそうした破壊と再構築というパワーを一人でこなす余力も期待できず、ひょっとするとこのまま水沢に消えることになるのかもしれない。

どちらにせよ、今日の野田代表の誕生で民主党の死は確実となった。2009年の輝きは二度と戻ることはなく、多くの民主党議員たちは訳もわからぬままに次の選挙で落選していくことだろう。そして、日本は増税による景気悪化と天井知らずの円高によって産業も崩壊し、福島の事故原発の収束も来世紀まで持ち越されることとなる。

こうした事態の責任は今回野田何ぞを選んだ民主党議員たちにあるわけだが、小沢一郎がよく言うように「国民のレベルを超える政治家はでない」のである。つまり、現状の日本人は菅の後に野田を選ぶレベルであるということだ。これは甚だ悲観的である一方、いわれてみると納得できる理屈である。

さあ、果たして野田は民主党の死に水をとることになるのかどうか、小沢新党に期待をしつつ、シニカルに見守ることにしようと思う。

無料アクセス解析