菅内閣不信任案が否決されるこれだけの屁理屈

最近はブログを怠けてTwitterでつぶやきを発するようになっているのだけれど、少々込み入った話はTwitterの140文字迄という限界に突き当たってしまう。というわけで久しぶりにブログを更新してみようと思う。

野党自民党菅内閣への不信任案をとうとう提出する腹を決めたと報道されている。

自民党、内閣不信任案を6月1日にも提出へ 2日の本会議で採決の見通し自民党は、菅内閣への不信任案を1日にも提出する方針を固めた。
菅内閣不信任案の2日の採決が固まったことで、与野党の動きは一気に緊迫化している。
自民党の谷垣総裁は、1日の党首討論の最後で、「到底、菅首相を信任することはできないので、直ちに不信任案を提出する」などと宣言する見込み。
そして自民党として、早ければ1日中に不信任案を提出する方針で、不信任案は、2日に本会議で採決される見通しとなった。
これを受けて、民主党内では、造反をめぐる駆け引きが本格化しており、態度を決めていない鳩山前首相のグループが、31日午後に会合を開いたが、結論は出なかった。
現在、不信任案に同調する覚悟の議員は50人台とみられ、可決に必要なおよそ80人には及んでいない情勢。
一方、小沢元代表らの造反回避に向けては、渡部恒三最高顧問らが動いているが、小沢氏サイドは、将来的な菅首相退陣の確約など、高いハードルを掲げているもようで、対立回避は難しいもよう。

民主党衆議院で300議席以上を持つマンモス与党なので、基本的には野党の不信任案などなんてことはない。しかし、昨年政権に就いてからマニュフェストを否定し、次々と出鱈目ばかりを並べ立てては増税など官僚の都合のよい政策ばかり推進しようとする菅政権には、民主党内からも反感を持つ議員が少なからず出てきていた。そして3月に起こった震災への対応が不十分であり、さらには福島第一原発事故に関連する情報を一方的に隠蔽するといった対応には国民の側からも大いに疑問が投げかけられている。

そうした菅政権に最も不満をつのらせているのが小沢一郎元代表に通じる議員達で、中には露骨に政権批判を繰り返すものも多くいるのが現状である。また、小沢一郎自身もWSJ等のインタビューで臆面なく菅政権を批判しており、これは倒閣へ向けた政局の表れではないかと憶測をよんでいた。

そこで配下の議員達も優柔不断と認める谷垣自民党総裁が、いよいよ内閣不信任案の提出をする腹づもりを固め一気に政局の様相を呈し始めたのである。

谷垣自民党総裁が内閣不信任案の提出を決めたのは、独自の調査で今解散総選挙があると自民党は単独で300議席をとれるのではないかという結果が出たからだといわれている。それと共に、小沢一郎のグループ内に菅政権への不満のガスが充満しており、一気に火を噴くのではないかといった期待も込められている。

さて、上記記事にもあるように、この内閣不信任案が賛成多数となるためには、民主党側から約80名以上の衆議院議員が野党自民党の出した不信任案に賛成票を投じなければならない。しかし今のところ小沢グループを中心とした造反議員は50名前後といわれているようだ。

造反議員の数が伸びないのは、菅内閣側が不信任案が通れば総辞職ではなく衆議院解散総選挙を選ぶと恫喝しているからである。今衆議院解散して総選挙をすると民主党議員の多くは落選の憂き目を見ることになるだろう。

この程度の恫喝に屈するような議員など、例えば北朝鮮が本気で恫喝してきたときに何の役にも立たないヘタレな訳でさっさと消えてくれればいいと思うのだが、彼らは自分の身分を守るために造反することはしないだろう。大体、3月に被災した東北の町は今もまだ瓦礫の山なのである。一体どうやって総選挙など行うというのだろうか。しかも、福島を選挙区にしている安住国対委員長までもが不信任案が通ったら総選挙を進言するなどとヌケヌケと言っている。こんな低レベルの執行部に怒りを感じない議員など木偶の坊と呼ぶ以外にないだろう。

鳩山グループの議員達が二の足を踏んでいるのは、彼らこそ民主党を結党したオーナー一族に通じている真性民主党であるという自負があるからだろう。彼らにしてみれば造反して処分されるのは理に適っていないし、彼らが引き金となって民主党が割れることは我慢ならないのである。特に鳩山前首相はその気持ちが強いだろう。

民主党と連立を組む社民党国民新党も内閣不信任案に反対することを表明している。

つまり、現状に於いて、内閣不信任案を成立させるためには小沢グループ議員と鳩山グループ議員が除名覚悟で造反しなければならないということになり、これは既に大変にハードルが高いことな訳である。結論を言うと、内閣不信任案は否決され、菅首相はそのまま居座ることになるだろうし、不信任案否決により信任されたという理屈を述べさらに長期間内閣を継続させようとするだろう。

さて、しかし問題はここからである。素人の僕にだってこの程度のことは分かっている。それならば小沢一郎ならさらに先を読んでいるだろうことは明白である。

小沢一郎が何度も表明しているとおり、政権交代はまず自民党を下野させることが最大の目的だった。だから、自民党を政権に返り咲かせることは何としても阻止するべきである。不信任案が可決され菅首相が解散を選んだ場合、民主党は総選挙で敗北し、自民党は再び政権に返り咲いてしまう。それは阻止したい。しかし一方で菅内閣を転向させたい。

こうした相矛盾する目的を一気に成し遂げることが出来る手法は一つだけである。それは大量の欠席である。例えば80名ほどが内閣不信任案決議を欠席した場合、不信任案は通らず菅内閣は一応は信任される。しかし党側が欠席議員を除名等の処分を行おうとしても、80名を一気に処分など出来るわけはない。小言を言う程度で終わらせるしかない。

一方で小沢・鳩山グループにとっては、ここで党内指導力を削がれた岡田幹事長を替えることが出来るかもしれない。また野党自民党に不信任案をみすみす提出させてしまった安住国対委員長や、こうした混乱を招いた原因を作った責任者である枝野官房長官も更迭できるかもしれないのである。というか現状で目指すことの出来る最も有効な手段はそのあたりだろう。

どのみち菅政権は長くはない。何と言っても参議院で圧倒的少数なのである。今後は震災関連法案以外は尽く参議院を通らないだろう。震災関連法案にしたって重箱の隅をつつかれるに違いない。小沢・鳩山グループとしてはあと少し菅の自滅を待てばよい。その時、自滅した菅首相とは一線を画した位置にいた方が有利でさえある。

今回の内閣不信任案は否決されることになると考える方が合理的だろう。ただし、それが菅内閣への信任とならないよう、民主党側から大量の棄権が出るだろう。そしてあわよくば岡田、枝野。安住といった三バカを放逐できれば小沢グループの勝ちとなる。

こうした予想が当たるのかどうかは分からないけれど、僕はそうした目で今回の政局を見ている。

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