小沢一郎の政倫審出席会見で追い込まれた菅政権執行部

昨日小沢一郎が緊急記者会見を行い、政治倫理審査会出席問題に対して、出席すると発表した。

勿論、少しでもこの問題を調べたことのある人々は、政治倫理審査会というものは党や他の議員に強制されるべきものではなく当事者自身の意志で行うものであり、しかも小沢一郎の「政治と金」という問題もその中身がなんであるのか誰も具体的に示すことも出来ないにも関わらず、検察審査会が二度の起訴議決を出して強制起訴が決まり、今後司法の場にこの問題が移ることが決まっている状況で政治倫理審査会など行っても意味がないし、そもそもの大儀がないことなど承知のはずである。

それでも菅首相以下幹事長や官房長官までもが小沢一郎の政倫審出席をごり押しするかのように推し進め、マスゴミはそれをさも当然だと報道する今日この頃である。年の瀬の冷たい風が駅前のシャッター通りを吹き抜けて、若者から中高年まで男女問わずに求職数が激減し青息吐息となっていることなどまるで他人事のようである。

昨日の小沢一郎会見で配られた文章が中村哲治参議院議員のブログで読むことが出来、PDFもダウンロードできる。短い文章なのでそのままここにも転載してみよう。

挙党一致で「国民の生活が第一。」の政治を実現するために

私はこれまで、菅代表及び岡田幹事長から、自発的に政治倫理審査会へ出席するよう要請を受けて参りました。それに対し、私は、政治資金に関する問題はすでに具体的な司法手続きに入っており、三権分立基本的人権の尊重という憲法上の原理原則からいえば、立法府の機関である政倫審に出席する合理的な理由はない、ただ、私が政倫審に出ることで、国会運営が円滑に進められ、あるいは、選挙戦においても国民の皆様の支持を取り戻すことができるということであれば、政倫審に出席することもやぶさかでないと、繰り返し表明して参りました。

そうした中で、先般、民主党の最大の支持母体である連合から、挙党一致の体制で難局を乗り越えるよう、強い要請を受けました。また、国民の皆様、同志の皆様にも、多大なご心配をおかけしていることを、大変申し訳なく思っております。これらのことを総合的に考え、私は政治家の判断として、来年の常会において、政倫審に自ら出席することを決意致しました。

具体的に申し上げます。

第一点目として、常会において私が政倫審に出席しなければ国会審議が開始されないという場合、すなわち、私が出席することにより、予算案の審議をはじめ、国会の審議が円滑に進められるということであれば、常会の冒頭にも出席し、説明したいと思います。

第二点目は、私が政倫審に出席するかどうかということが、国会審議を開始するための主たる条件ではないということであれば、国民の生活に最も関連の深い予算案の審議に全力で取り組み、その一日も早い成立を図らなければなりません。したがって、私はこの場合には、予算成立の後速やかに政倫審に出席したいと考えております。

平成22年12月28日

衆議院議員 小沢一郎

この声明文の中で出色の部分は、出席の条件の第一と第二がリンクして円環を構成し、それが綺麗に閉じていることだろう。その円環に閉じこめられてしまったのは菅首相、岡田幹事長、仙谷官房長官などである。

つまり岡田幹事長などが常々小沢一郎の政倫審出席は「政治的な動機ではなく政治家として国民への説明を行うのが当然という道徳的な理由から要請している」と述べている。であるならば、小沢一郎が第一の条件として挙げている「私が政倫審に出席しなければ国会審議が開始されないという場合」というものは存在しない。なぜならこれこそ岡田幹事長自身が否定した政治的な動機だからである。

次に小沢一郎が第二の理由に挙げている「国民の生活に最も関連の深い予算案の審議に全力で取り組み、その一日も早い成立を図らなければ」ならないのは政権政党として当然のことであり、優先順位は明らかに高い事項なので次の「予算成立の後速やかに政倫審に出席したい」という言葉が生きてくる。

逆説的に言うと、「予算案審議前に政倫審をしたいというのであれば、その必然性を政治的動機を絡めずに証明せよ」となる。

こうなると執行部が逆に追い込まれることになる。なぜならば、彼らこそ口では政局を否定していたが、実は政局として小沢一郎の政倫審問題を利用していたから、こうした正論を言われると返すべき言葉がなくなってしまう。これ以上この問題を続けるのであれば「政治的動機を含めない証明」が必要になるのだが、それはもとより存在せず、何を言っても政治的動機が前提となってしまうので自らの論理に破綻を来すのである。つまり、今後は何を言っても「政倫審問題は純粋に政治的な動機です」と言っているのと同じことになる。

小沢緊急会見の後、菅政権執行部が慌てて集まり話し合ったようで、その後の岡田幹事長の憮然としたコメントが報道されている。

記者会見直後、岡田幹事長、枝野幸男幹事長代理らが首相の元に集まった。政倫審への出席条件を列挙した小沢氏の配布文書の内容に、出席者の一人は「返答文書を作って、小沢氏に取りに来させよう」と憤った。

岡田幹事長は憮然(ぶぜん)とした表情で記者団に語った。

「いろいろ条件が付いている。出るなら、(無条件で)出ると意思表示してもらいたい」

この岡田幹事長にもし返事をするなら、「何が気に入らないんで?」で十分だろう。

国民の生活が第一、であるならばまずは予算案審議を行わなければならないのは当然のことである。支持率低下に悩む菅政権が「小沢イジメ」と「小沢切り」で低空安定飛行を行おうとすることこそ問題がある。菅政権は自前の予算案を国民に問い、それで支持をもらうのが本筋であり、それが出来ないのであればとっとと引っ込むべきであることがまるで分かっていない。

そして、野党から問責決議の出ている仙谷官房長官と馬淵国交通大臣に対して処分を下さないことには予算案審議が暗礁に乗り上げることも自明である。この小沢会見のタイミングで西岡参議院議長が動いた

西岡参院議長は28日、国会内で民主党の岡田幹事長と会談し、来年1月の通常国会召集前に、参院で問責決議が可決された仙谷官房長官と馬淵国土交通相を交代させるよう求めた。

関係者によると、西岡氏は「通常国会が開会したら、仙谷氏らを代えるしかない」と岡田氏に伝えた。

仙谷氏らを巡っては、自民、公明両党が辞任要求を強め、応じなければ通常国会で審議拒否に踏み切る構えを崩していない。民主党内でも、菅首相と距離を置く小沢一郎元代表らに近い議員から辞任を求める声が出ている。

参院での議会運営を取り仕切る西岡氏が仙谷氏の辞任に言及したことで、与党内で今後、仙谷氏や馬淵氏の辞任論が拡大し、通常国会前の内閣改造を検討する首相の判断に、影響する可能性がある。

正に追い込まれたのは小沢一郎ではなく菅政権の方である。

菅首相は来月の通常国会開幕前に内閣改造を行う腹積もりであるといわれている。基本的には仙谷、馬淵を外すことになるのだろうが、ここで小沢グループからの登用をまたもや見送り、仙谷などを幹事長に横滑りさせるようなことになると菅政権はアウトである。そしてそんな簡単な理屈さえ分かっていないようなのが菅首相なので、来年早々菅政権は綺麗に大掃除されるかも知れないと願っておこう。来年こそいい年にして欲しいものである。

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