官僚の逆襲と政権の迎合主義と

年末となり何もかもがめまぐるしいスピードで自分の周りを飛び交っていく。まるで自分だけがスローモーションの動きのようで、何とか辻褄を合わせるだけで精一杯である。必然的にブログの更新も滞るのだが書きたいことは次から次へと止めどなく発生する。そこで生じた苛々感が余計に自分をスローモーション化させるのは分かってはいるのだけれど、菅政権を巡る気持ちの悪さは如何ともし難い。だからちょこっとブログを更新してみる。

マスゴミ報道もなかったし、ネットジャーナリズムでの報道もあまりなかったことなのだけれど、実は先月末に菅政権はとんでもない法案を通してしまった。これはもう法案が通ってしまったので今更声を荒げて机を叩いてみても何も始まらない。今の時点で既に終わったことだし、敗北感を噛み締めることしかできることはない。後の祭り、その通りの現状である。

その法案とは「放送法改正案」である。このニュースを伝えていた唯一のメディア(かも知れない)ビデオニュース・ドットコムから要旨を引用してみる。

60年ぶりの放送法改正案が、26日、参議院本会議で可決され成立したが、この法案はインターネットも規制の対象に含む可能性のある条文を含んでいる上、クロスメディアの見直しや日本版FCCの創設など、民主党が掲げてきたメディア政策がことごとく抜け落ちており、問題が多い。
今回の法改正の趣旨は、インターネットの普及によって融合が進む放送や有線放送、電気通信などを一つの法体系の下に統合するというもの。元々、自民党政権の下で議論が進められ、総務省がまとめた。

この放送法改正案で問題な点が「インターネット規制」と「クロスメディア規制の廃止」である。以下同じくビデオニュースドット・コムより引用してみる。まずはインターネット規制に関しての部分。ここで登場する佐川氏という人は立教大学社会学部メディア社会学科准教授である。

砂川氏が問題視するのは、改正放送法では放送の定義が、旧法の「公衆によって直接受信されることを目的とする無線通信」からを「公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信」に変更されている点だ。これまで「無線」に限られていた放送の範囲が「電気通信」となったことで、不特定多数の顧客にサービスを提供するインターネット放送局やウエッブサイトなども、この法律の規制対象になる可能性が、少なくとも条文上は否定できなくなった。
上記の条文の中の「公衆」を「不特定多数」と解釈することで、通常のウェブサイトは対象外と解釈することは可能だが、それでもユーチューブやニコニコ動画のような、誰でも無料動画を視聴できるウェブサイトは放送の定義に押し込められ、既存の放送と同様の規制が加えられる可能性は否定できないと、砂川氏は言う。

つまり、今までインターネットのビデオ放送やブログなどは放送法の規制の及ばない場所にあったのだが、この法案が通ったことで政府側はいつでもインターネットを放送と見なし規制し処罰或いは罰則を与えることが出来るようになった。

勿論大臣はインターネット放送は規制の対象とはならないと言ってはいるのだが、大臣が交代したり政権が変わったとき、最後に残るものは法律の条文であり、条文を元に幾らでも解釈が入る可能性は残されている。そして実はこの解釈が問題なのである。何故ならば解釈を行うのは官僚であって、解釈を行うための組織や役職というものが彼らのために用意されるからである。ここに官僚権力の源泉がある。

次にクロスメディア規制の廃止については下記の部分を引用してみよう。

また、この法律からは、民主党が政策集『インデックス2009』で掲げ、原口一博総務相の下で進められてきたクロスメディアの見直し(マスメディア集中排除原則の見直し)条項は自民党からの求めに応じる形で法案から削除された。また、民主党が政策集『政策インデックス2009』に掲げていた日本版FCCの設置なども、盛り込まれていない。原口氏は総務相当時、既得権益を打破するためには、新聞の全国紙とテレビ局が系列化したクロスメディアは禁止もしくは制限されるべきとの考えを明示していた。

昨年、鳩山政権下で総務大臣を務めた原口元大臣が積極的に進めていたクロスメディア規制は、ここにきて正式に削除されたのである。これで新聞社とテレビ局の系列化による情報の専有状態は今後も続くことになり、政府とマスゴミ記者クラブを介して行われる情報統制は野放しとなる。

引用部分にも記されている通り、クロスメディア規制の削除は自民党側からの要請に応じたもののようで、民主党の支持率が減って自民党側が僅かずつ盛り返している現状で、自民党という政党がどういう政党であったのか思い起こす切っ掛けにしたいものである。自民党が代弁したのは、記者クラブという旧態組織を守り既得権益のうま味を吸い続けたいマスゴミと、記者クラブによる情報談合によって都合のよい情報だけを発し情報コントロールできる余地を残したい官僚側の利益の保護である。ここには国民のため、という視線は一切ない。

一方で昨日、東京都で青少年健全育成条例改正案が都議会で可決された。この条例案は、6月の改正案で批判の多かった「非実在青少年」のくだりが、「刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為」や「婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為」などに変更されている。その結果、18歳未満という年齢制限を外した代わりに、年齢にかかわらず、刑罰法規に触れるものとしたことで、むしろ規制の対象が広がってしまった。

この経緯も先のビデオニュース・ドットコムで解説されているのだが、簡単に言うと、6月に廃案となった元の条例案を作った官僚達がいたくプライドを傷つけられたようで、何が何でもこの法案を通そうと東京都民主党側に熱心に働きかけ、落としどころを作り、陥落させたのが真相のようだ。

今、民主党は次から次へと官僚に譲歩をし始めていて、もはや取り返しのつかないところに差しかかっている。これはウォフレン教授によると、鳩山政権が崩壊する原因の一つに官僚のサボタージュがあり、これにより鳩山政権は歯車が上手く廻らず、結局崩壊するに至ったということである。そして菅首相はそれを自分なりに研究し、自分が首相になった時には官僚の言い分を最大限に聞き、彼らに気に入られるようにしようとしたのではないかと述べている。

昨年の政権交代時に掲げた民主党マニュフェストは次々と反古にされ、国民の怒りと苛々感はかなりのレベルに達している。しかし官邸側はそんなことに目を向けようとはしない。彼らが見ているのは官僚と記者クラブメディアの顔色ばかりと言えるだろう。誰もそんな民主党を望んではいないのだが、一体何時までこの状況が続くのかと思うとますます師走の苛々感が募るのである。

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