アメリカの凋落に巻き込まれた日本

昨日、ロシアのメドベージェフ大統領が国後島訪問した。ロシア大統領がこの辺境にある島に特別な用事などある訳もなく、これは明確に政治的な牽制であり、その相手国は日本以外にない。

菅首相や前原外相はこのロシア大統領の北方領土訪問に不快感を表したコメントを発し、実際にロシア大使を一時帰国させる様子であるが、ロシア側にとってはそれも想定内だろう。外交に関して手練手管に長けたロシアが何も考えずにモスクワから最も遠い場所に大統領を運ぶはずなどないのである。

遡ること約2ヶ月前の9月7日に、尖閣諸島沖で中国のトロール漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりしたとして中国人船長が海上保安庁に逮捕されている。その後中国は船長の解放と尖閣諸島における領有問題に関して一歩も引かず、沖縄地検がこの船長を独断で解放して以降も日本に対して募らせた不信感を解く気配はない。

尖閣諸島中国漁船衝突事件 (Wikipediaのまとめ)

米国ではヒラリー・クリントン国務長官、ロバート・ゲーツ国防長官、マイケル・マレン統合参謀本部議長クローリー国務省次官補らをはじめ、オバマ大統領に至るまで「米国は日本を明確に支持」し「尖閣諸島有事の際は日米同盟の安保条約が適用」されると公式非公式に談話を発表した。

しかし「日米同盟の安保条約」には色々な抜け道があって、例えばこの条約は日本が実行支配している領土に関して発効されるとしているので、もし中国が電撃作戦を展開し、一夜にして尖閣諸島を実行支配してしまえばそこは日本が実行支配している領土ではなくなり安保条約の適用外となる。またこの安保条約では米国内法に基づいて軍事支援は行われるとあり、米国内法が約束しているのは、米国軍が動くまでに米国議会で議論され議決を行い大統領が承認するというステップを踏むということである。だから議会で否決されて日本防衛のために米軍を派遣できなくても安保条約違反にはならない。

この船長拿捕問題が生じて以降、中国側は日本の出方を観察し研究し分析したようである。その結果得た結論は日本は恐るるに足らずであったようで、つい先日のハノイの首脳会談拒否などもその分析の結果だろうと思う。

これは日本の背後にいるはずだった米国の動きが読まれてしまったことが原因だ。日本と紛争を起こしても、米国は日本を助けに来ないことがばれてしまった。米国が日米同盟上の安保条約をどのように解釈するのか、今まで具体的に表す機会がなかった。それが今回、米国の解釈が公にされた訳である。つまり、米国内法に基づく処置は拡大解釈されないという事実である。これで日本が軍事紛争に巻き込まれた場合、米軍が素早く展開し反撃の構えを見せる可能性はなくなったのである。

この米国の姿勢に関しては、オバマ大統領の戦争縮小の方針、米国経済がこれ以上の戦争出費に耐えられないという経済的現実、そして米国にとって日本の価値低下と中国の台頭などが理由に挙げられるだろう。何せ今や米国債を買って米経済を支えてくれている最恩寵国は中国であって日本ではないのである。こうして米国にとって日本は今やワンオブゼムとして認識され、その結果東アジア全体に対する米国の影響力が低下しているのである。

その状況をロシアが見逃す訳がない、というのが昨日のメドベージェフ大統領の国後訪問であり、それは東アジアに於ける新しい覇権競争という大国ゲームへの参加表明だろう。米国の地位低下が中国とロシアの覇権競争に火をつけてしまったと見るべきだ。ロシアは明らかに極東アジアに対して何らかの仕掛けを考えている。それが中国への牽制なのかアメリカへの牽制なのかまだ分からない。たぶん振ったサイコロがどのような目を出すのかロシアも様子見だろう。しかしゲームには参加するという意思の表明である。

こうした大国の動きは東アジアに緊張をもたらせ政治的な不安定を強要する。状況は太平洋戦争前夜と驚くほど酷似している。しかも外務交渉を司る外務省のトップは好戦的挑発的な前原誠司という親米政治家であり、内閣の要である官房長官は国内での権力闘争しか頭にない元活動家、そしてトップである総理大臣は「一に雇用、二に雇用」であってこの難局に対するべき方策などまるでなきに等しい状態である。彼らの本当の姿を報道し国民に知らせるべきマスゴミはというといまだに「政治と金」などとやっていて低レベルも甚だしく何も期待できない。

現状の日本は国家危機の最中にあり、それは半世紀後に日本という国が存続しているかどうかといった瀬戸際にまできているとの危機感を持つべきだろう。日本は早く独自外交が出来る環境を整備し、共通の危機を共有する東アジア諸国と連携しなければこのまま太平洋に沈没してしまう危惧があるのだ。

この独自外交と東アジア諸国との連携は鳩山=小沢時代の政策の要であった。こうした政策を覆そうと画策し成功した米国保守派と親米ポチ日本人達の行動は、今やそれが裏目裏目に出ていることを早く認識すべきである。もはや日本のおかれた現状は日本にも米国にも何の利益ももたらさないばかりか、かえって不利な状況を作ってしまっている。

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