日本の国体を変化させえる者を探す

昨年、小沢一郎の秘書が東京地検特捜部に逮捕された所謂西松事件から、日本という国は実は民主主義国家ではなくて全体主義国家であって且つ暗黒国家でもあるということが朧気に分かってきた。

僕たち日本人は選挙で投票し政治家を選んでいるから日本は民主主義国家なのだと思っている。しかし選挙で選ばれた政治家ではなく官僚が国政を担っているので、結局は選挙自体が茶番となる。いくら選挙で政治家を落とそうが当選させようが変わりはないのが真実だ。この国に民主主義など機能していない証左である。

そのような国政の実態は、それを現実に動かしている官僚からすると、既にシステムが出来上がっていて、官僚らの利益も確保されているので居心地が良く、この状態を継続し洗練させていくことが官僚の目的となる。またアメリカにとっても日本は何でも言うことをきく理想の友好国である。財政は援助してくれるし国際問題でも常にアメリカに賛同してくれる。勿論それはアメリカの国益に適ったのである。勿論ここに国民のための政治という主題は欠落している。

このことを裏付けるのが昨今の円高である。円高だから政府は為替介入をしようとする。為替介入というから分かりづらいが実際はアメリカ国債の購入である。先月も野田財務大臣財務省主導で2兆円規模のアメリカ国債購入を指揮した。そして為替レートは2〜3週間ほど81円から84円程へと円安に振れたが、すぐに戻って昨日の終値は81.4円である。結局2兆円使って2〜3週間だけ4%ほど円安誘導できただけという為体である。

一方のアメリカはドル安を続けることがメリットとなる。自国経済が逼迫しているからメリットのあるドル安政策をやめるわけがない。FRB議長のバーンナキなどはことあるごとにドル安政策を自己批判してはいるが、これは所謂ガス抜きである。ドルを必要以上に刷り続けて流通させるなど野蛮な政策であることが分かっているからアリバイ作りをしているだけである。特に民主党政権になってからアメリカ国債を買い渋る日本も、円高防衛のための介入であれば大義名分が立つことなどお見通しである。

このようにアメリカが日本の栄養分を吸い取るような対応は日本の政治が弱体化し始めた時期から次第に表面化し、小泉政権以降は目に見えるほど顕著に表れだした。当時の自民党政権の無能さは極限に達していて、官僚は日本の政治家ではなくアメリカ政府の意向に従って国家を運営していく方が日本の利益にも彼らの権益にもプラスになると信じたのである。当時から政治不信といって日本国民は政治家を信用していなかったのだが、官僚達はそれ以上に政治家を信用していなかったのである。

しかし何時までも日本からアメリカへの資金の移動が続くはずもない。日本の財政は逼迫している。日本の財政危機は製造業主体の産業構造から別の産業に転換する政策をとらず、旧来の産業構造を残したまま公共事業等に巨額の投資を続けたことが主な原因の一つである。簡単に言うと「変わらなきゃならない時に変わろうとしなかった」ツケなのである。

昨年の政権交代を目前にして東京地検特捜部が行った一連の小沢一郎バッシングはこうした「変わるべき時に変わろうとしない」人々が行った、既得権益者のための防衛闘争である。郷原信郎氏などが常に言うように、小沢一郎の政治資金収支報告は1円の単位まで記載されているし、所謂「政治と金」といった問題は起こり得ないはずだった。それが無理矢理事件を作られ小沢一郎はパージされようとした。

今回のケースの場合最も困ったこととして、本来真実を伝えるべきマスコミもまた既得権益側についいることがある。それ故この事件は小沢一郎魔女裁判といった趣を持つに至った。こうなれば中世の暗黒時代に逆戻りなのである。冒頭で「日本という国は実は民主主義国家ではなくて全体主義国家であって且つ暗黒国家でもある」と書いたのはそうした理由による。

今マスコミ報道を見て、その紙面や画面の中にいる菅首相や仙谷官房長官、前原外務大臣、岡田幹事長、そして野党自民党側の谷垣代表、石原幹事長など、彼ら小沢一郎を糾弾している政治家こそ実は旧体制の権益を守ろうとしていることを自覚した方がいい。彼らは皆エリートであり、小沢一郎が不当にパージされようとしていることを知っている。万一知らないというならただの馬鹿である。彼らは知っていて知らないふりをしてそれを政治的に最大限に利用しているだけである。これは政治ではなくただの政局でありショーでしかない。

どうして彼らがこれほど政治から離れ政局にうつつを抜かすのかというと、実は日本に危機はなくすこぶる安定しているからではないかというのが最近の結論である。日本ではデフレだ不況だと経済危機を嘆き、雇用問題は行き詰まり、年金や医療など社会保障は崩壊寸前、外交でも中国に先を越され国際舞台では常にジタバタしているように見えるし、実際そうした危機を市民生活の中で肌に感じることは多い。

アメリカがリーマンショック以降本格的な不況に入って日本と同じく政局が混乱しても超大国としての対面はそのまま保っているように、日本もまた先端技術に特化した経済大国としての体面は保ち続けている。1ドルが80円を切ろうとして、マスコミはそれは危機だと騒ぐけれど、トヨタキヤノンユニクロも潰れたりはしない。それらの企業は強固な経営基盤を持っていて、ダメージを受けても危機を乗り切る胆力を持っている。不況の中でもまだ一時のアルゼンチンやメキシコほど世相は荒れてはいない。

ここで僕は小沢一郎が夏の代表選の時に言っていた「円高なら海外の資源に投資すればいい」という政策を思い出すのである。それを日本という大国が国家規模で行えば、日本は間違いなくこの不況に乗じて経済的にも政治的にも超大国として再びのし上がることになるだろう。勿論国民生活は豊かになるだろうが、同時にアメリカとの関係は修正せざるを得なくなるだろう。それはそのまま日本の国体の変化に繋がることになるだろう。

しかし菅政権のような旧来からの既得権記者達が日本の国体を守っている限り、徐々に日本は弱体化する。余裕がないのに何時までもアメリカ国債購入などしていられるわけがない。これをチェンジさせることが出来る者、そしてその国体の変化についての「責任」を引き受けることの出来る人を注意深く探そうとしている。最も違い位置にいるのは小沢一郎だろうが、今は刑事裁判絡みで動けない。では誰だろうか。

残念ながらその解はない。日本の国体を責任持って変化せしめる者。ある意味それは革命家である。その出現を首を長くして待っているのである。

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