結局小沢しか民主党を救えないという現実

混雑する昼食時に漸く天麩羅屋のカウンター席に落ち着き、年配の職人が無駄な動きもなく海老や茄子などを揚げる手つきに見惚れていると、その少し離れたところで既にビールなどを飲みながら親戚のお祖母さんの介護経験談やら演芸観劇の話などを楽しそうに話している妙齢の婦人らがいて、何せ声が大きいので聞くともなく耳に入ってきたわけだが、それがいきなり「政治と金」などといった言葉が飛び出してきたのでつい興味を持って聞いてしまった。

もういい加減イヤになる、と言うのである。テレビをつけると何とかの一つ覚えのように「政治と金、政治と金」。もうそんなものどうでもいいでしょうと言ってやりたくなる。これからどうすんのこの国を。小沢さんでいいじゃない。菅さんにはガッカリした。

村上春樹の随筆に「自分が本屋に行って偶然自分の本を買う人を目撃したらその本はベストセラーになる」という法則が紹介されている。それと同じように、思いがけないところで思いがけない人が偶然自分と同じ考えを述べているところに居合わせると、その考えは自分が思っている以上にポピュラーな考え方なんだろうと思っている。特に根拠はないけれど。

民主党の代表選挙が始まり、菅首相と小沢前幹事長が立候補した。民主党本部で両者が決意表明をしそれぞれの所信を表明した。日本記者クラブで討論も行った。その後菅首相は公務に戻り、小沢前幹事長はいつになくテレビ出演などを続けている。一部インターネット上での気の早いマスコミによる開票予想では小沢優位という予想が多いようだ。(一方で既存マスコミによるいつもの世論調査では菅首相優位が圧倒的で、それぞれの結果の乖離の凄さに驚かされる)

このブログを以前読んだことのある方ならご存じのように、僕は小沢一郎こそが今の日本の総理に相応しいと思う。是非菅首相を破って総理総裁の座について欲しく思っている。なぜなら、というのが今日のブログの論旨である。

2009年の民主党マニュフェストというものがあり、昨年の総選挙はマニュフェスト選挙とも呼ばれた。実際にはマニュフェストだけが原因ではなかったのだけれど、他の要因も重なり民主党政権交代を実現した。当時の鳩山代表がマニュフェストを前面に出して選挙を戦い、多くの得票を得たことは否定できない事実である。これは昨年のマニュフェストが信任を受けたということでもある。

だから、あの選挙の結果できた政権は2009年のマニュフェストを死に物狂いで遂行しなければならない。そしてこれは小沢前幹事長の主張であり、先の参議院選でこのマニュフェストを軽視して敗北した菅首相が今さら何を言おうと、僕が小沢を支持する大きな理由となっている。

つまり、小沢一郎が掲げるのは政治主導であり、従米隷属からの脱却であり、税の再配分の変革である。これは菅直人財務省主導の増税、そして従米隷属路線とは大きく違うことだと思う。

今、小沢一郎がテレビなどに出演し司会者からの意味不明の質問に一生懸命答えているけれど、その答えの殆どは2009年の民主党マニュフェストを踏襲したものとなっている。テレビである程度の時間を与えられて、途中殆ど遮られることもない状態で話をする小沢一郎は、思ったより雄弁で且つ論理的話法をも持っていることがわかる。

またマスコミは執拗に「政治と金」という問題を出してくる。これも実は何とか小沢一郎をトラップに嵌めようする策術のようなもので、現実には「政治と金」という問題は存在しない。その理由を週刊朝日編集長の山口一臣氏のtwitterから抜粋してみよう。

世の中には「政治とカネ」という犯罪はありません。ゼネコンから賄賂を受け取ったなら贈収賄だし、有権者にカネを配ったなら買収(公職選挙法違反)だし、親からカネをもらったのに申告しなければ脱税(所得税法違反)だし。検察は当初、西松事件陸山会事件も贈収賄だと思って捜査を始め(つづく)2010年8月29日 9:14:56
検察は当初、西松事件陸山会事件も贈収賄だと思って捜査を始めたにもかかわらず、そうした事実がないことがわかったため、面子を保つためだけに「政治とカネ」という言葉にすり替えたのです。こんな単純なことに引っかかってはいけません。9月10日(だっけ?)、奇しくも代表選の直前に(つづく)2010年8月29日 9:19:50
奇しくも代表選の直前に、大坂地裁で村木厚子さんの裁判の判決がでます。検察による”犯罪“が厳しく糾弾されることになるでしょう。ちなみに仙谷官房長官が千葉法相を通じて、無罪でも控訴しないよう検察に指揮権発動するとの噂が流れています。もちろん、人気取りのためだそうです。 2010年8月29日 9:26:00
「政治とカネ」つづき。もし、Aという政治家が賄賂をもらっている疑いがあるなら、「A議員には贈収賄の疑惑がある」と批判すべきです。他人を批判するには、それなりの覚悟が必要です。証拠がなければ、批判すべきではありません。政治家にとって汚職は致命的なことです。しかし、(つづく)2010年8月29日 12:14:04
しかし、最近は証拠もないのに「A議員には『政治とカネ』の問題がある」と覚悟もなく安易に他人を批判する傾向があります。この場合、「政治とカネ」とはどういう意味なのでしょう。わたしには、証拠はないけど相手を悪く言いたいがために使う言葉にしか聞こえません。本当に悪いなら、(つづく)2010年8月29日 12:20:53
本当に悪いなら、この汚職野郎とか、買収野郎とが、脱税政治家とか、強い言葉で非難したほうが罪状がハッキリしていいとわたしは思います。しかし、誰もそこまで強い言葉は使いません。いや、使えないのです。「政治とカネ」がいかに根拠のないインチキな言葉であるか、おわかりいただけましたか?2010年8月29日 12:25:32
ついでに、贈収賄、買収、脱税のほかに、政治資金規正法違反というのがあります。政治資金規正法違反はピンキリで、わたしは税金を使って捜査して処罰までする価値があるのは、カネを受け取っていながら報告書に記載のない、いわゆる裏献金、闇献金の類いくらいだと思います。あるいは、(つづく)2010年8月29日 12:32:31
あるいは、政治資金を政治活動以外に流用しているケースですね。しかし、政治家にとってどこまでが政治活動なのかの線引きはなかなか難しい。仙谷さんのケースも、新聞を読む限りギリギリ許容の範囲かなと。もちろん、息子の事務所に業務を委託し、政治資金を流すのはみっともいいことじゃないですが。2010年8月29日 12:38:59

もしこれを読んで、それでも「政治と金」問題に関して納得がいかないというのなら、一度自分に問いかけてみればよいかと思う。つまり、自分は「政治と金」を説明できるのか、と問いかけ、答を模索してみればわかると思う。具体的な論旨など思い浮かぶはずもない。そこにあるのは「政治と金」というイメージだけであり、それこそまさに虚構である。

もう一つ小沢支持に必要不可欠な論旨を展開してみよう。

それは先の参議院選挙で所謂捻れと言われる程に大敗した結果出来上がった、参議院に於ける民主党の少数派への凋落に原因がある。つまり衆議院で可決された法案が参議院で否決されることが極めて高い確率で起こるのである。政治は権力闘争であるから、それが起こるのは最も注目度の高い舞台だろう。それは来年度予算案の成立局面において他はない。

参議院に於ける否決を乗り越えるためには衆議院に差し戻されたときに衆議院の3分の2の再可決があれば参議院の否決を否定できる。しかし残念ながら民主党社民党国民新党をあわせても3分の2の多数など持っていない。だから予算案が通らずマニュフェストどころか内閣自体が崩壊する。

それを回避するためには現在野党にいる議員を引っ張ってこなくてはならない。政界再編というほど大袈裟でなくとも、法案可決のために何らかの手を打たねばならないのだが、菅首相の言うことは1998年の金融国会で当時の小渕首相に野党民主党案を丸呑みさせる代わりに政治責任を問わなかったという手柄話を引き合いに、所謂パーシャル結合と言われる法案ごとに一部野党に協力を求めていくという生温い手である。

当時小沢一郎菅直人の「小渕首相の責任を問わない」という手法に呆れたと言われている。権力闘争の裏の裏まで知り尽くしている小沢一郎にとってみればそんな生温いことをしているようでは何時まで経っても政権など覚束ないということだったのだろうし、事実そうだった。

現在参議院少数与党であることは分かりきっていることなのに、菅首相はじめ仙谷官房長官や枝野幹事長は野党側に手を突っ込もうとはしない。小沢的にみればこれは明らかに地獄へ向けてまっしぐらに見えるのである。法案ごとに作る野党とのパーシャル連合などを夢見ている場合ではない。このままでは菅内閣は予算案成立と同時に総辞職、下手をしたら衆議院解散と選挙敗北が起こり民主党は下野してしまう。これではせっかく成し遂げた政権交代自体が瓦解するのである。これこそ昨年政権交代を支持した国民に対する裏切りである。

最後にもう一点だけ付け加えよう。

よく日本の首相は短期間で替わるので世界に対して恥ずかしいという意見がある。僕は駄目な政権が続いている方が恥ずかしいと思うのだが、いい加減安定した政権が続いて欲しいという気持ちもよくわかる。

さて、知り合いのイギリス人に「日本人は総理が短期間でコロコロと変わってしまうことを恥ずかしいと言うんだよ」と言ったときの答である。「アホな首相をすぐに変えることが出来るなんてそれは日本の美点に付け加えるべきだよ。素晴らしいじゃないか。羨ましいね、まったく」

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