木村剛振興銀前会長が逮捕されたことの覚え書き

先日任意聴取が行われた木村剛振興銀行前会長なのだが、とうとう逮捕されてしまったようだ。木村剛に関して詳しくはリンク先を読んでいただくのが手っ取り早いのだが、さらに手っ取り早く言うと木村剛竹中平蔵という惑星の周りをぐるぐる回っている衛星のような人である。それだけわかっていればよろしい。

木村剛・振興銀前会長を検査妨害容疑で逮捕 (Yomiuri Online)

 中小企業向け融資を専門とする日本振興銀行(本店・東京都千代田区)の検査妨害事件で、警視庁は14日午前、同行の前会長・木村剛(たけし)容疑者(48)(中央区)や社長の西野達也容疑者(54)(江東区)ら5人を銀行法違反(検査忌避)の容疑で逮捕した。

 同庁は、電子メールの削除は木村容疑者の指示で行われたとしている。木村容疑者は容疑を否認し、残りの4人は認めているという。同行を巡る検査妨害事件は、新旧の経営トップの刑事責任が追及されることになった。

 このほかに逮捕されたのは、同行元執行役・関本信洋(38)(埼玉県川口市)、専務執行役・山口博之(48)(江東区)、執行役・渡辺勝也(43)(神奈川県大和市)の3容疑者。

 発表によると、木村容疑者らは金融庁の立ち入り検査が行われた2009年6月、検査対象の電子メール280通をサーバーから意図的に削除し、同年9月には、検査官に対し「メールは担当者の過失で消えた」などと虚偽の説明をして検査を妨害した疑い。

 削除されたメールには、大手商工ローン「SFCG」(破産手続き中)から、出資法の上限金利(29・2%)を上回る手数料を受け取っていたとされる債権取引の内容などが記載されていたという。警視庁幹部によると、削除された業務に関するメールは全体で7百数十通に上るという。

 振興銀を巡っては、金融庁が同行に立ち入り検査の通知を出した3日後の昨年5月29日、木村容疑者ら当時の幹部が対策会議を開いていたことが判明している。関本容疑者は警視庁の事情聴取に対し、この会議で木村容疑者からメールを削除するよう指示されたと供述している。

 木村容疑者は04年4月、東京青年会議所のメンバーらと振興銀を開業し、05年1月から社長、同6月に会長に就任したが、今年5月、赤字決算となった経営責任をとって会長を辞任した。

 銀行法違反(検査忌避)の罰則は、1年以下の懲役または300万円以下の罰金で、法人には2億円以下の罰金が科される。04年に旧UFJ銀行の元副頭取ら3人が逮捕、起訴され、有罪判決が確定した例がある。
(2010年7月14日14時32分 読売新聞)

この事件で面白いのは捜査しているのが地検特捜部ではなく警視庁であるということ。また元々木村を狙っていたのが金融庁であるということ。

そんな関係でか、この件を元警察庁長官官房調査官の亀井静香前金融大臣と関連付けて考える向きもあるのだが、しかし金融庁の立ち入り検査は昨年の5月であり、この時はまだ麻生首相率いる自公政権であったわけである。つまり亀井静香はまだ野党だったので、直接関係しているとは考えられないだろう。

政権交代を跨いで捜査が続けられ、逮捕劇に至ったのであれば、それは政治的な意向であるとは考えにくい。但し、捜査が邪魔されず、逮捕にまで発展できたのはひょっとすると民主党政権だったからかもしれない。

それは兎も角、木村剛は自身や振興銀行がマスコミのネタになると執拗に名誉毀損などで告訴していたらしい。それはどういうことかというと、月刊誌FACTA発行人阿部重夫氏のブログを読むとよく分かるだろう。

月刊総合誌FACTAは日本振興銀行に対し不当訴訟の損害賠償請求訴訟を提起します (FACTA)

日本振興銀行前会長、木村剛が本日、検査忌避による銀行法違反容疑で逮捕された事態を受けて、弊誌は同行および木村、小畠晴喜取締役会議長をはじめとする同行経営陣に対し、不当訴訟による損害賠償請求訴訟(請求額約3000万円)を提起いたします。

本件の立件に1年以上先駆けて、弊誌は昨年5月号(09年4月20日発行)から4回にわたり振興銀行の内情を調査報道しました。これに対し同行は名誉を棄損されたとして、多額の損害賠償及び謝罪広告掲載を求める訴訟3件を提起しました。弊誌の言論および取材を訴訟によって封殺し、実態が露見するのを妨害しようとするとともに、弊誌報道に追随しようとした他のメディアに対しても「書いたら訴える」と威嚇する意図を持っていたことは明らかです。

先般の警視庁による家宅捜索を受けて、日本振興銀行代理人を通じて上記3件の訴訟をすべて取り下げました。しかし、訴訟提起から1年余にわたり、弊誌は訴訟対策のために厖大な時間と少なからざる所用経費を割き、他の取材や報道にも支障を来しました。かかる不当な訴訟提起行為は、メディアの表現の自由を圧殺するものとして断じて許されるべきではありません。

捜査当局のリークによらずとも調査報道によって社会的不正を知らしめるべきだとするメディアに対し、ともすれば訴権を濫用することによって隠蔽しようとする企業や組織、さらにはそれに便乗する弁護士が増えております。裁判所もメディア叩きに迎合し、慎重かつ妥当な取材に基づく報道に対しても、厳しい判決を下す例が増えております。このままでは調査報道は萎縮するばかりだと考え、かかる現状に警鐘を鳴らすため、弊誌は訴訟を提起することにいたしました。

日本振興銀行問題を他に先駆けて報道した弊誌は、検査忌避による立件は表面的かつ形式的なものにすぎないと考えます。背景には粉飾決算や特別背任等の成立の可能性を含む実態があり、捜査当局には今後ともそうした実態の捜査を進めていただきたいと考える次第です。

このFACTAという雑誌は一般書店で販売はなされず、読者に直接郵送するタイプの雑誌で、かなり薄いのに値段は高い。なぜ高いのかというと広告の類がほぼないわけで、それ故広告収入はないが遠慮すべきスポンサーもない。だから言いたいことが言えるというスタンスを創刊以来とっている。僕の知る限り、大阪梅田のジュンク堂書店など、買い取りで少数だけ入れているようなので、興味のある方は立ち読みしてみるのもいいだろう。ほかにも大型書店で仕入れているところはあると思う*1

で、切り込み隊長BLOGというブログがあるのだが、そこでも興味深い記事が書かれている。

 無事逮捕されて、身柄の安全が早期に確保できたことは大変結構なことだと素直に喜びたいと思います。

木村剛・振興銀前会長を銀行法違反容疑で逮捕

 記事中でもありますとおり、日本振興銀行を木村と共に開業した「東京青年会議所のメンバーら」に含まれる落合伸治氏の行方が分からなくなっており、消息筋によれば木村と喧嘩別れし日本振興銀行の問題でトラブルを抱えたまま東南アジア方面に一家で出国したあと、何らかの事件に巻き込まれたものと思われます。

ここで何気なく書かれているのだが、日本振興銀行を木村と共に開業した「東京青年会議所のメンバーら」に含まれる落合伸治氏が、木村と喧嘩別れし日本振興銀行の問題でトラブルを抱えたまま東南アジア方面に一家で出国したあと行方が分からなくなっており、何らかの事件に巻き込まれたものと思われるとのことな訳である。

大金が絡んだ事件でトラブルを起こし東南アジアで行方がわからなくなる、と聞いて観光旅行に行ったと考える人はよほどの世間知らずだろう。断定的なことを言うつもりはないが、かなり差し迫った状況があったはずである。また上記ブログでは木村剛自身もそれに巻き込まれる可能性もあったと予想している。だから木村剛の身柄の安全が確保されて素直に喜んでいるわけだ。

そしてもちろん木村剛は大きな事件に至る過程のドアである。これを踏み台にして次のステップに向かおうというのが、通常の捜査手順であろう。切り込み隊長のブログはさらに続けている。

今後、同様に債権飛ばしのように見える振興ネットワークの全容に関する解明や、飛ばしていった先の債権がロシアなど第三国の金融機関を通じて北朝鮮など海外へ送金された可能性に関する指摘、SFCGに騙されて事実上の資産流出になってしまった債権の二重譲渡に関する事案など、いろいろと問題は存在するわけですけれども。これらの根幹は二信組問題と同じく在日系の経済コミュニティと同化していく過程で起きている問題と考えるべきかとは思ってます。とはいえ、事件化するとか派手な動きにはならんようにするとは思いますけれども。

事実関係全部そろえて質問状を出したら訴えてくる人でしたので、まあ誣告罪で反訴されるところも一杯出てくるんじゃないでしょうかね、知りませんが。木村は単なる突破口なので、ここを入り口に引き続き頑張ってまいります。

僕としては、木村剛逮捕で、その親分である竹中平蔵や、さらにその親分である小泉純一郎あたりまでが捜査の対象になったら凄いことになると思うのだが、残念ながら現在の菅首相と千葉法務大臣らには手に負えないどころか、自らの保身のための保証として握りつぶしてしまいかねないのではという不信感を持つのである。上記ブログ引用にもあるように、事件化するとか派手な動きにはならないのだろうなと、少々無念な気持ちも持つのである。

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*1:書店買い取りなので商品に傷など付けないよう丁寧に扱って下さい。