予定調和の民主党敗北と政権交代の終焉

昨日行われた参議院選挙で、菅首相率いる民主党は惨敗を喫した。事前調査からある程度は予想がついていたが、実際に獲得議席数を見ると予想を遙かに下回る負けっぷりで、現状の民主党政権の置かれた状況がハッキリと現れているように思う。

民主党の敗因として、マスゴミ菅首相自らも「唐突に持ち出した消費税」問題を挙げているが、消費税なんぞは起爆剤にすぎない。本当の理由は、昨年度の衆議院選挙の時に掲げ圧倒的な支持を得たマニュフェスト公約に目に見える進展がなく、民主党は本気でこれを推進する気持ちがないのではと、国民に疑念を抱かれてしまったことが大きい。そして総理大臣が替わって疑念は確信へと変わった。

八ッ場ダムは今も造り続けているし、日航にも巨額の政府補償融資をしたし、高速道路は無料にならないし、取り調べの可視化はその声すら聞かなくなり、記者クラブは開かれず、官房機密費も公開されず、沖縄の米軍基地は従来案のまま辺野古に移設する。挙げ句の果てには4年間上げないと言っていた消費税の増税を既定路線に乗せてしまった。これらが去年のマニュフェストとどう整合性があるというのか。これでは支持しろと言う方が無理な話だ。

鳩山前首相が辺野古移設問題の責任をとって辞任したことを国民は真摯に受け止めた。一国の首相が辞任するほどの事態を国民は目の前に見たのだ。しかしその跡を継いだ菅首相は沖縄については従来案を支持すると言ったきりで以後殆ど触れず、消費税増税だの、最小不幸社会だの、おおよそ理解に苦しむような理念を語るだけで、「国民の生活が第一」路線から逸脱してしまった。前首相を辞任に追い込んだ問題の解決策すらないなんて、一体どのツラ下げて総理大臣張ってるんだろう。この覚悟のなさは簡単に見透かされてしまう。

民主主義は手続きが大事であるという。独裁国家ではなく民主主義国家なのだから物事は一つ一つ丁寧な議論を経て決定されねばならない。しかし昨年のマニュフェストがどのような手続きを経て実現が困難になったのか国民に説明されていない。あったのは鳩山辞任だけである。鳩山前首相は辞任の挨拶の時、昨年度のマニュフェストをチャラにするなんて言ってはいない。

しかも菅首相が掲げた参議院選用の新しいマニュフェストは、昨年度のマニュフェストを大幅に修正したものに替わっている。昨年のマニュフェストは4年かけて実行すると言っていたわけだが、それが1年も経たないうちに何の説明もなくいきなり骨格を替えられてしまったのである。信用も期待もこれでは地に墜ちてしまう。

つまりは民主党はこの8ヶ月間、マニュフェストに謳った公約を目に見える形で結実できなかった。出来ないなら出来ないなりに、国民に説明をするべきだった。それが出来ずに前任者は辞任をしたが、後任に至っては国民との約束であるマニュフェストを勝手に改竄し、国民に負担を強いる政策を当然のことのように出して支持しろと迫ったのである。ここには民主主義で重視される手続きに関するものは一切なかった。

そして国民はというと、菅総理の挑発に反発し、こともあろうに自民党に票を投げ入れた。菅は確かに消費税を上げたそうであったし事実上げるつもりであったが、それは議論を経てから先のことである。しかし自民党はマニュフェストで明確に消費税増税を謳っている。国民はその自民党に票を与えてしまったわけだから、これは消費税増税に信任を与えてしまったという詭弁が成り立ってしまう。消費税増税政党に投票したのは消費税増税に怒った人々だったのだ。今更後悔したってもう遅い。もう投票は行われたのである。このあたりが今の日本人のレベルであろう。郵政選挙の頃とまるで変わっていない。

菅総理はしかも、これだけの敗北を前に総理の座に居座るつもりのようで、党執行部の面々も留任とのことである。また選挙で落選した千葉景子を議員失職したまま民間人として法務大臣に続けて就けるという。選挙民が明らかにその業績に対してノーと言い、落選させた人である。憲法で主権を保証された選挙民を無視した許し難い行為である。こうなると何をか言わんやであり、もはや狂気と言うほかないだろう。

どちらにせよ、菅内閣は国民からは不信任を突きつけられたのである。このまま居座ると、それは正に民主党の解体を見ることになるだろう。それはまず小沢一郎系議員の離反を招き、その離反の穴埋めとして自民党みんなの党などとの連立や合併に至ることになる。それは分かりやすく言うと政権交代の終焉である。それはもちろん官僚の勝利である。

今度の参議院選挙で民主党が10議席を減らしたことの意義は歴史的なほど大きい。たった10議席だけれど、これで日本はさらに出遅れることになる。従米隷属構造は改まらず、竹中平蔵のようなプードルが大手を振って日本を米国に切り売りする。売られるのは富だけではない。日本の歴史も民族の尊厳も野も山も海も空も水も空気も何もかもである。

今、どこかで誰かが「いっちょあがり」と言ってほくそ笑んでいるんだがね。笑っちゃうね。

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