菅内閣支持率急落に思う

参議院選挙が始まり街宣車が行き交うようになった。拡声スピーカーは相変わらず候補者名連呼という騒音を撒き散らせていて、ただでさえ蒸し暑いのに余計に苛々して体感湿度が急上昇するような気持ちである。

さて、出足は快調だと言われていた菅内閣の支持率がここのところ急落しているという。

無理もないと思う。そもそも内閣発足直後はご祝儀相場のようなもので支持率は上がるものなのだ。新しいものに対する期待感がムードを盛り上げただけの話だ。そしてそれはすぐに落ち着きを取り戻す。だから政権発足直後の支持率なんて当てには出来ない。

しかも菅総理所信表明演説で消費税増税について言及してしまった。昨年の民主党マニュフェストで消費税は4年間は上げないと公約しているのだから、総理大臣が替わったどさくさに紛れて消費税を上げようというつもりかと世論は気色ばんだ。

世論の反応を見て菅総理「消費税の議論を与野党で始めようと言っているだけだ」と反論した。しかし反論が周知される以前に、菅政権は消費税を10%上げるつもりだと世論に刷り込まれてしまった。国民というものはこうした悪い予感は常に当たるということを知っている。総理の意図がどうあれ、菅内閣は消費税増税の扉を開けてしまった内閣であることは事実である。

一方、小沢前幹事長は会合で「高速道路無料化、子ども手当、(農業の戸別)所得補償などを昨年の総選挙で約束して議席をもらった。政権を取ったら、金がないからできませんなんて、そんなバカなことがあるか」と述べ、現執行部を強く批判した

この小沢前幹事長の発言こそが世論を代表していると思う。昨年の衆議院選挙からまだ一年も経っていない。それなのに民主党は昨年の公約を次々と反故にしようとしている。金がないから出来ないというなら、きちんとした議論を経て総理が会見を開き、こうした事情で公約は達成できませんでしたすいません、と国民に平身低頭詫びを入れ、その上で衆議院を解散し新しい公約を掲げて選挙するのが筋だろう。選挙は予算がかかるというのなら、少なくとも昨年のマニュフェストの総括はするべきである。

要するに、菅民主党は新しいマニュフェストをなし崩し的に国民に認めさせようとしているのだ。民主主義は手続きだとよく言われるのだが、菅首相にはその手続きが一切ない。マニュフェストの内容自体が財務官僚に媚びを売った内容だとか、今消費税を上げることは更なるデフレに突入させてしまうという議論もあるけれど、それ以前に、手続きを無視したなし崩しの強引さである。今の時代、これでは支持は得られまい。

さて、先の小沢前幹事長の発言に対して、さっそく仙谷、玄馬、野田、枝野といった連中から批判が返ってきた。

小沢氏の批判に党内から反論 玄葉氏「一丸で戦うべき時」 (47NEWS)
枝野幹事長「小沢氏は無責任だ」 公約見直し批判に反論 (asahi.com)

小沢前幹事長の意見に反論しているこれら連中というのは、何とか小沢を失脚させようと前政権以前から暗躍し批判を繰り返していた連中であり、政局にばかりうつつを抜かしてきた政治家たちである。漸く鳩山政権を葬り小沢を無役に貶め、自らは政府要職に就き、昨年の公約のことなど忘れやりたい放題をやろうとしていて、まさにこの世の春なのである。

しかし、彼らが現在の地位にあるのも、去年の公約のおかげであることを忘れてはならないのである。今の民主党のマニュフェストが去年提示されていたら、民主党は今の地位にあったのかどうか甚だ疑問である。

その小沢前幹事長は、今日もまた執行部批判ともとれる発言を繰り返し、菅政権幹部から批判を浴びた。

小沢氏:再び執行部批判 「正しいこと主張する」 (毎日jp)
小沢、枝野両氏が応酬=公約修正 (時事ドットコム)

どう考えても小沢前幹事長の言っていることの方が正論に聞こえる。小沢の言うことは手続き論であり、民主主義の基本なのだ。

参議院選挙で民主党単独過半数を割るだろうといわれている。国民新党社民党など、現在の連立政権との合計でも過半数を割った場合、菅民主党は議会運営のために自民党みんなの党と協調していくしかないだろう。それが部分的な協力関係となるのか、あるいは大連立といわれる保守連合と呼ばれるものが出来上がるのか予断を許さない。しかし、自民党みんなの党と組んでしまえば、そこで民主党は存在価値を失う。

なぜならば、昨年の政権交代とは、とにかく自民党政治を終わらせて欲しいという国民の願いが民主党政権を生んだのである。それが自民党みんなの党を復活させてしまえば、いくら最もらしい言葉を並べても国民の失望は大きいだろう。小泉政権の人気が高かったのは、小泉の公約が「自民党を終わらせる」というものだったからであり(結局それはまやかしでしかなかったのだが)、昨年の民主党の公約も実は「自民党を終わらせる」ことが第一義だったのである。だから国民は期待して票を入れたのだ。それもまやかしであれば、菅政権は小泉政権以降に出来た安部・福田・麻生政権らと同じく、早々に国民に飽きられてしまう惨めな結末となるだろう。

この事態を防ぐには、結局は小沢の復活しかないのだが、今の菅政権は聞く耳を持つことはないだろう。何とも息苦しく暑苦しい毎日にふさわしい現在の政局である。

追記:参考
「今の民主党は約束に無神経」―亀井・国民新代表 (asahi.com)
野田財務相「意味が分からない」 小沢氏の批判けん制 (日本経済新聞)
民主党 新旧幹事長が批判の応酬 (日テレNEWS24)
消費税あらためて前面に 首相と小沢氏、対立鮮明 (asahi.com)

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