鳩山首相の沖縄訪問は報道されているほど悲観的なものではない。

ゴールデンウイークの最中、5月4日に、鳩山首相は沖縄を訪問した。

その日のことは既にありとあらゆるメディアで報じられている。それらメディア共通の報道は、「国外、或いは県外に普天間飛行場機能を移転させることは不可能であり、鳩山首相自らがそれを諦めたことを沖縄に伝えに来たようだ」というものだった。

例えば、朝日新聞のサイトを見てみよう。

この現在のアメリカ、日米同盟の関係の中で抑止力を維持する必要性というようなことから、国外あるいは県外にすべてを、普天間の機能をですね、移設することは難しいということに至りました。したがって誠に申し訳ないという思いで今日はおうかがいしたんですが、沖縄の県民の皆さま方のご理解をたまわって、やはり沖縄の中に一部、この機能を移設をせざるをえないと。そのようなことに対してご理解をいただけないかということを、仲井真知事に申したところでございます。

上記抜粋は鳩山首相の言葉の中から、「普天間交渉をギブアップしこれまで通り沖縄に負担をさせる」と語ったように聞こえる部分をわざと抜いたものである。これだけを読むと、鳩山首相は文字通りギブアップ宣言をしたように思える。実際に、これまで鳩山首相に理解があると思われた評論家達も鳩山首相を見限る発言をした。僕も、こうした報道と評論家達の言説を聞いて、相当ガッカリとしたのである。

しかし一方で、今までマスメディア報道は国民を煽動するためにどれほど強引且つ巧妙な手段を尽くしてきたかを思い出し、何かがおかしいという気にもなっていた。これまでのマスメディアの期待通り、沖縄へ負担を押しつけるという決断を鳩山政権が行えば、たちまち内閣は国民の支持を失いバラバラになるだろう。

しかし、そんなことがこんなに簡単に起きるのだろうか。これほどあっさりと鳩山政権は官僚ーマスメディア連合の軍門に降ることを選ぶのだろうか。そう考えると、何かがおかしいという思いが湧き上がってくるのである。

何かヒントはないかと探すと、このブログを書くにあたりいつも頼っているジャーナリストの岩上安身氏のブログにヒントがあるように思う。以下がそのリンクである。
2010年5月4日、鳩山由紀夫首相と稲嶺進名護市長の会談から
2010年5月4日、普天間第二小学校における集会から
ここでは出来る限り、鳩山首相や討論に参加した人々の言葉を忠実にテキスト化しようとする試みが行われている。最初の朝日新聞のリンクで僕が勝手に抜粋したように、「そのように読める部分だけを恣意的に抽出した」ものではなく、議論全体の流れの中で、誰がどのように発言したのか読むことが出来る。

それでは、ここでも僕が鳩山首相の言葉から幾つかポイントになる部分を抽出してみよう。勿論、これは僕の恣意的な抽出操作が入っている。何かおかしいと感じる人はリンク先の全文に目を通し、流れを確認するといいと思う。

まずは名護市民会館中ホールにて行われた、鳩山首相と稲嶺名護市長の会談から。

鳩山首相「私のほうから御礼かたがた、稲嶺市長始め皆さんに、この場をつくっていただいたことに感謝します。さきほど、辺野古の海を改めて拝見しました。干潮だったが、とても綺麗な海でしたた。何度かこちらにおじゃましました。かつても参ったこともある。2000日も、という話があったが、辺野古の海を汚してはならないという一念で頑張っているお爺ちゃんお婆ちゃん達に激励に来たこともあります。いま改めて市長から話しを聞いて想いだしていました。

 今日も美しい海を眺めながら、この海を汚したくないという思いは当然、人間だから私の心の中にも強く存在します。それも正直に申し上げたい。選挙の時に言った言葉の重みも理解しています。県民の皆さんが… 一方で先ほど、普天間第二小学校で住民の皆さんと対話集会を開きました。その席で一方では普天間の基地を早く移してほしい。

難聴になって大変だ。騒音の問題も含めて危険の除去を一刻も早くしないといけない。これを13年も14年ものびのびにしている政府の責任を痛感しました。その人たちの要望のなかに、最低でも県外をという声も聞ました。それが両立できれば、当然、鳩山自身としてもそれを模索したい。それを実現したいと今でも思っています。

 今日から日米で協議が始まっています。私どもとしては政府の主張をしっかりとアメリカに伝えて、日米同盟を確かなものにするためにも、沖縄の加重負担を軽減させて頂くことが大事という論調の中で議論したい。将来的に、いつになるかは分からないが、将来的にはグアム・テニアンへの完全な移設もあり得る話かと思っているが、現在の北朝鮮を始めとする北東アジア情勢、アジアの情勢を鑑みたときに、やはり日米同盟を維持していく中での抑止力の観点から沖縄の皆さん、沖縄の周辺の皆さんに引き続いて負担をお願いせざるを得ない状況になってきていることも、政府の考え方と申し上げないといけません。

 その意味で県外をさまざま模索をしてきたが、やはり陸上部隊との共同訓練、共同行動の歩調がどうしても必要だという議論が先方からなされている中で、あまり遠いところに移設地を求めることができないという事実も、交渉の中で出てきております。今日、辺野古の海を見させていただいて、改めてこの海を汚したくないという思いに駆られております。できる限り環境に配慮するのは言うまでもないが、海というものを汚さない形での決着がないか、模索するのも非常に重要だと考えています。

 しばらくは県民の皆さんに、抑止力の観点からの基地に対する負担を一部お願いせざるを得ません。仲井真知事にも申し上げました。今日は名護市長が選挙の時に公約されたことを守るのは政治的に正しいことだと存じています。その想いも充分に学ぶ中で、できる限りトータルとしての沖縄の県民の負担が軽減される道はないか、交渉の中で求めていく。今日は基本的に市長の気持ちを学ばして貰う場としておじゃましました。

 そこを理解して頂く中で、市長や名護市の皆さんの見解も聞かせてほしい、市長は海も陸も不可能だと聞いています。その気持ちの話を聞かせて頂くことになります。市長に政府の立場を不十分だが、説明してほしくて名護に来たことを容赦していただきたい。今日も反対というか、市民の気持ちが外で伝わっています。それも胸に受け止めなければ行けません」

この言葉でまずわかるように、鳩山首相はまだ普天間飛行場建設を決断したわけではない。この日、沖縄にやってきたのは、あくまで沖縄の人々の意見を聞くために来たのであり、政府が決定したことを伝えに来たわけではないということである。そして政府はいまだ結論を出せていない。

なぜなら、アメリカとの交渉はこの日からスタートしたのであり、それは日米同盟についての議論も含まれる。それに沖縄の米軍基地が沖縄県民の負担になっていることを政府は理解し、それを出来れば何とかしようとしているから時間がかかっているということだろう。障害となっているのは、極東アジアという特殊な地理的環境のせいで、ここでは特に北朝鮮という国名が具体的に挙がっている。これが尖閣諸島を巡る中国の動きではないところが一つのポイントである。

ここで北朝鮮と具体名を挙げられてしまった彼の国は一体どのような気持ちでこの言葉を受け止めるだろうか。丁度この日、金正日の乗った特別列車が遼寧省大連を出発し、やがて北京へと向かうのである。その少し前に、韓国の哨戒艇が北朝鮮潜水艦によって攻撃され沈没し死傷者を出している。一部では、金正日の中国訪問はこの件と結びついているという考えもある。(5月3日、TBSラジオ荒川強啓デイキャッチの中での小西克也の説)

それは兎も角、鳩山首相の言葉に戻る。
ここでは、また将来におけるグアム・テニアンへの移設についても述べられているのである。僕自身も沖縄の基地は将来的にはグアムやテニアンへ移るのがスジだろうと思っているのだが、仮に移るとしてもそれはまだ少し先の話である。近代軍隊の基地機能を移すという話である。今日決めて明日移るというわけにはいかない。長い準備期間が必要だろう。その間の基地はやはり沖縄に置いたままとなる。

そのように考えると、鳩山首相が「しばらくは県民の皆さんに、抑止力の観点からの基地に対する負担を一部お願いせざるを得ません」と言っているのは何を表しているのか見えてくる。

そして市長の話のあとで鳩山首相は言う。

首相「確かに抑止力の話は、日本の国民全てのメリットの話であり、日本の平和を守るためだから当然、沖縄にのみ負担をお願いするのは筋違いだとは良く理解している。極力、沖縄の負担を前政権の時の環境よりも負担を軽減することは、それは当然物事を進める上で、不可欠な要因です。それは実現したいと存じます。

 トータルの中での負担軽減は何としても果たしたい。まだ政府として最終的な考え方をまとめている状況ではないので、これ以上を申し上げれないが、外で活動している人の思いも勉強、拝見して政府がアメリカともしっかり交渉できる体制を作る一助にしたいと考えています」

実はここでハッキリと、鳩山首相は「沖縄の負担を前政権の時の環境よりも負担を軽減することは、それは当然物事を進める上で、不可欠な要因です。それは実現したいと存じます」と言っている。

つまり、沖縄の負担は軽減されるのである。少なくとも自民党の圧政時代よりは。

また、鳩山首相の言葉の中に「トータルでの負担の軽減」という言葉が出てくる。この言葉はこの次に向かった普天間第2小学校での集会でも出てくる。この言葉にも注意しよう。

そしてここからはその普天間第2小学校での集会からの抜粋。勿論僕による恣意的な抜粋である。まずは挨拶から。

鳩山総理「お集まりの皆さん、こんにちは。今、伊波市長から話しがあったようにGW中にこのような集会を催すことになりましたことを、皆さん方にはご多忙の中お集まりいただき、心から厚く御礼申し上げます。ただいま伊波市長から、政府はアメリカの方を向いているんだと厳しいお話がありました。沖縄の皆さん方にそのようなつらい気持ちを味わわせて、まことに申し訳ない気持ちでいっぱいです。

 ただ、もしわたしが、米国のほうを向いてばかりいるということであれば…、わたくしにとっては、沖縄の皆様方のお気持ち、そのような思いの中で、今日はこちらに来さしてもらった。やはり今日まで過重な負担に悩まされてこられた沖縄の皆様方の思いを大事にさせていただく中で、しかしながら大変難しい日米の交渉の中で、皆様方にもご負担をお願いができれば、その思いで今日は参りました。

 普天間の基地のそばにございます、まさにクリアゾーンの中にある普天間第二小学校でございますだけに、今日も爆音がなっておりました。やはり大変授業にも影響があるだろうなと思いを感じたところです。

 危険性の除去や、騒音の除去のためにも、早く普天間の移設先を探さなければならないことは言うまでもない。沖縄の皆様方のトータルとしての負担をなんとしても軽減さしていただけなきゃいかん。その思いでもございます。

 そのような中でこちらにお邪魔して住民の皆様方の気持ちを率直にお話をお聞かせ願いたいと思います。私も皆様方のお気持ちを大事にさせていただくのが政治の役割でなきゃならない、基本的にはそのように感じておりますので、こちらまいった次第です。

 遅きに失したという気持ちもあるいはあるかと思いますが、ご容赦いただきながら皆様の思いをぜひ短い時間ではありますが、どうぞよろしくお願いします」

ここでも鳩山首相普天間飛行場というものを基本的には否定している。その上で住民の意見を聞きに来たということである。5人のパネリストが意見を言い、その後で鳩山首相が以下の話をする。

鳩山首相「5人の方からそれぞれご要望を賜りました。大変苦痛な叫びと申し上げてよろしいかと思います。

 3点あるかと思います。普天間第二小学校にお邪魔させていただいて、この普天間飛行場の危険を一刻も早く除去してもらいたい、そして騒音の問題に関しても早く解決していただきたいと、これが1点目でございました。

 そしてその普天間の完全な返還の後、しっかりとした町づくりに関しても、政府としても万全の体制を尽くしていただく、ということがが2点目でございました。

 さらにそのために、普天間の移設先が最大の問題で、それは鳩山自身が申していた、いわゆる「最低でも県外」という、私自身の発言に対して、その重さを十分に認識をして解決をしてもらいたい…、申し上げたいと思います。

 このすべてが三点目にかかってくる話ではないかと思っておりますが、政府として普天間の危険性の除去、沖縄の負担の軽減ということに関して、万全の態勢を取っていきたい。今日から始まっているアメリカとの交渉の中で、そこのところはしっかりと求めたい考えております。

 私ども政府の役割の中で、返還後に力を注ぐのは言うまでもないことですし、地権者の皆様方の長年の最大の期待であることは、十分に分かっておりますので、町作り返還後は万全を期してまいることを約束します。そしてその前提として、県内は絶対に認められないという皆様のお気持ちは、私も選挙の時に申し上げた言葉でもございますだけに、沖縄には何度も参るたびに基地がどのように経済を妨げている沖縄の現状を…。

 さらに基地が存在してしまうことは、私の心の中でとても許されない状況ということは事実でございまして、その言葉の重さをしみじみと感じている。政権を担わしている中で、これはさまざま新たに調査している中で、いわゆる抑止力の必要性というものが北東アジアの環境を考えた時に日本とアメリカとの安全保障の中での日米同盟の重要さを認識せざる終えないという状況で。

 そして将来的にということになれば、私はこれは時間軸を グアムあるいはテニアンへの移設ということは十分にあり得る話しと思っておりますが、現在の国際環境の中でそれは残念ながら望めないという思いになりました。従いまして、県内ではなく県外を模索せよということであろうかと思いまして、県外への模索は今も続けているところでございます。

 ただこれも、私も党首討論の中でぜひ国民のみなさん沖縄の今日までの負担を考えるときに何とか負担、国民全体で分かち合う、負担を分かち合う努力をしようじゃないかということを申し上げ、また努力もいたしている所でありますが、一方でこれは陸上の部隊との関わりの中で、距離的な制約というものもあり、あまりにも遠くにすべてを移すということは不可能であるということも判明しております。

 そういう中での沖縄の皆様方に恐縮ではございますが、ご負担をまたお願いせざる終えないというのが現在の政府としての考えでございまして、ただ、そのことに関しては米との交渉の中で、地域との交渉の中で、できる限りトータルとしての沖縄の皆様方のご負担が過重にならない、できる限りやらせていけるような最善の努力を申し上げてまいりたいということも また後で多くの皆様からさらに同じ方向性からの質問をいただくことになろうかと思いますが、その分お答えしたいと思います」

このあたりはかなり大事な部分であって、所謂「試験に出るところ」といった感じである。

沖縄県民の普天間基地施設除去の思いと日米同盟の重石との間での板挟み状態があり、将来はともかく現状では、すぐに普天間基地施設除去は行えないだろう、といったニュアンスである。そしてこれがマスメディア報道の論調のベースになっていると思う。この点を誇張していえば、「普天間基地はそのまま、沖縄に負担させる」となるわけだ。

しかし、こうして鳩山首相の話の流れを追って読んでみると、そうしたマスメディア論調はあまりにも飛躍したものではないかという気がしてくるのである。どちらかというと、「すぐには出来ないけど将来は基地を移すから、それまでしばらく辛抱して欲しい。本当にごめん」といった印象である。

さらに6人の意見が述べられる。その後で再び鳩山首相である。

首相「6人からご意見いただきました。多くの方から手紙いただきました。6年1組の…さん。…多くの皆さんからお手紙をいただいた。後で拝見したい。6人のお話は、普天間小学校をはじめとする基地が存在することによる大変な危険性と騒音に悩まされ、難聴になったり、精神的に大変厳しい状況にある方々の話をうかがいました。危険性と騒音の除去は1日も早く取り組まないといけない。

 13、14年で結論が出ていないのは、政府としてやってはいけない。できるだけ早く解決しなければとあらためて感じました。危険性の除去について手段はあろうかと思っているし。手段を講じて参るが、新しい移設先を探すことが課題ということも、私の心の中でそのように感じている。皆様方の中には基地は国内にいらないと…移設するなら沖縄でなくてもいいという意見もある。

 ただ、抑止力について、ご異論もあると思うが、現在の東南、東アジアの現実を考えたとき、やはり抑止力は日米間、特に米軍の軍事力による防衛は必要だと理解している。その中で、陸上部隊との共同訓練を行う必要性の中で、あまりに遠くのところに普天間の基地の移設先を求めるのは、現実的ではないと思っています。

 新しい政権で考えられている発想。簡単には得られない。きょうはご意見をうかがいに来ました。意見を聞きながら、皆さま方の気持ちを、できるかぎり受け止めて参りたいと思っている。

 官僚支配だから、だらしないという気持ち、分からないわけではありませんが、新政権、できる限り閣僚で議論して閣僚が結論を出して参りたい。その一環として総理が意見を出したい。 沖縄の皆さんの尊厳が踏みにじられているというのは、まさにそうだと思う。沖縄の基地汚染がうたわれる中で、沖縄に負担が集まっている現実はまさにその通り。それだからこそ、私もトータルとして基地問題、沖縄の負担をもっと考えないといけないし、環境問題、日米地位協定の問題、嘉手納以南の施設の整理も含めて、積極的に努力して参りたいと思っています」

この最後のパラグラフで案外踏み込んだことを言っているのがわかる。何せ普天間問題だけではなく、トータルとしての基地問題、環境問題、日米地位協定の問題、それに嘉手納以南の施設整理などといった仰天ものの案が次から次へと出されていく。特に地位協定の再考や嘉手納以南の施設の整理など、大変なニュースバリューのあることを首相は言ったのだが、マスメディアはどういう訳かまるで報じない。こんなこと自民党時代の総理大臣が口走ったら大変なことになっていただろうに。

2人のパネリストが話をして、鳩山首相はさらに続ける。

鳩山首相「2人の意見、しっかりと持ち帰りたい。とくに最初の方の五月末にという気持ちは変わっていません。国際的な約束として、5月末までに結論は出すとオバマ大統領へ再三、申し上げています。特に普天間の危険性、騒音の除去を考えたときに、先延ばしは決して許されない状況です。

 沖縄の皆さまのお気持ち、もっと時間かけてというのは、市町村会の中にありましたが、普天間を考えるにつけ、選挙もあり、当然、政権の考え方を示すというのがあり、5月末は変えるつもりはない。2014年までに普天間の危険性の除去は…、2014年までのロードマップも作られてています。2014年までに最大努力するのが、当然の責務と理解している。しっかりと除去を行っていきたい。

 1500㍍の返還について、嘉手納以南の返還に関しては、日米交渉の舞台で中で、要望として出して参ると確認している。ロードマップに沿って行っていきたいと思っていまして、整理統合についてしっかりとアメリカ側に物を言いながらアメリカへ答えを出す。さらにはホテル・ホテル海域の問題に関しても、日米交渉で勝ち取らないといけないと思っていますし、日米地位協定はすべてではないが、環境に関してはまずはきちんと交渉すると申し上げていきたいと思っております」

ここでも実はマスメディアが喜びそうなネタを出している。それは2014年というもう一つ先の締め切りを出したこと、それと5月末に政権としての考え方を出すのは、選挙への対策もあると認めている点である。将来的にグアム・テニアンに基地機能を移設するというその「将来」の目安は2014年である、というわけだ。またこの普天間問題の結果が参議院選挙に好影響を与えるだろうという読みである。悪影響を与えるものであれば、何もわざわざ選挙前に期限を設けたりしない。つまり鳩山首相が5月末に出す結論は国民の支持を得ることが出来るものだと予想される、と読める。

そしていよいよ最後になる。

首相「あっという間に、時間が過ぎてしまいました。もっと長く要望を申し上げたい方がいたと思います。普天間に関してはもともと…県民の総意が大会として示されたのも民意の現れだと思っていて、このことは政治家として考えないといけないのは言うまでもない。

しかしながら日本の国の平和を守るため、沖縄の皆さま方に感謝申し上げたいと思っています。なぜならこれ以上過重な負担を避けてほしいのが気持ちだと思います。そのようにできる限り、努力して参りたいと思ったし、そのようにこれからも行動したいと思っています。トータルとして負担を軽くする道はないかという判断の中で行動し、皆さんの中でそれは無理という話だと思うが、トータルとして負担を軽減する、その思いをひっさげて日米交渉に望んで参りたいと考えています。

 日米関係が県内だと悪くなるという話。オバマ大統領にも日米同盟を大事にすることがわれわれにとって重要だから、沖縄の負担を軽減させるために、大統領としても協力してもらいたいと申し上げてきたところです。

 どこまで大統領が理解しているかは、判断は付かないところですが、私の基本的な立場はその思いで、これからも申し上げたい。すべてを県外へ移設することが、どうしても現在の状況で実現が極めて困難な中で、しばらく沖縄の皆さんに負担をお願いしないといけない状況であることを、あらためて申し上げないといけないのは、本当につらい思いで聞いていると思うが、そのことを申し上げさせていただくことをご了承させて下さい。

 ただ、私どもとして、今日集まった皆さんの気持ちを大事にさせていただきたい。先ほど市議会からの話があったように、普天間の基地周辺に住んでいるが故に子どもたちが悪臭、騒音に悩まされ、心理的な負担も重いと理解しています。普天間の返還を急ぐために全力尽くすのは当然、努力して参りたいし、さきほど高校生の気持ちの中で住民の皆さんとのコネクションが十分ではないということもありましたが、まさにだからこそ今日、沖縄の皆さんの気持ちを学ばせてもらいにおじゃましました。

 辺野古へ移設するという政府の最終決定はされていない段階なので、具体的なことを申し上げられないことをご了承願います。短時間ではございますし、納得いただけないのは十分理解しています。これを第一回目の対話として、みなさんの気持ちをさらに学ばせてもらう機会を得られたらありがたいと思っております。十分ではございませんでしたが、話をさせていただく機会を設けさせていただいて、あらためてお礼を申し上げます」

ここで大事なことは、「日米関係が悪くなる」と言っている点だろう。これだけ住民感情が悪化した状態で、果たして米軍基地施設をこの場所に留めておくことが最善なのか、この住民の怒りのうねりはやがて大変な嫌米感情に昇華し、それは日米同盟の今後にも影響するだろう。アメリカだって周辺住民の同意の得られない場所での基地移設は不可能と言っているのである。この点に関しては日本より世界中に基地を展開しているアメリカの方が詳しいだろう。

そして政府決定は勿論まだ下されていない。

つまり現状では、「2014年の基地機能の海外移設を目指して努力するが、それまで暫くの間は沖縄の基地はそのままとなる」ということではないだろうか。勿論まだどのような決定も下されていないから、誰も最終案を知ることは出来ない。でも、少なくとも僕は、マスメディアの論調や、一部評論家ほどには悲観していない。所謂「大人の解決策」があるのだろうと思っているのである。とりあえず、「頑張れ鳩山!」と言っておく。

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