民主党は取調べ可視化法案の成立を急ぐべき

昨年3月に唐突に始まった東京地検特捜部による小沢一郎捜査は、昨年の大久保秘書の拘留逮捕から、先月の石川衆議院議員の逮捕、大久保秘書の再逮捕、池田元秘書などの逮捕とエスカレートしたのだが、結局のところ特捜部が本丸とした小沢一郎自身は不起訴となり、逮捕した3人の保釈も認められた。

特に小沢不起訴の後、保釈された3人に対して検察が準抗告(不服申し立て)をしなかったことは、この3人の容疑すら固めることが出来なかったのではないかという見方をすることが出来る。本来ならば3人の拘置期限を延長し、さらに過酷な取調べをするのだが、肝心の小沢一郎への追求を諦めてしまったのだから、これ以上検察批判が拡大しないうちに撤退したというのが整合性のある考え方だろう。

つまり、東京地検特捜部は完敗で、小沢一郎は多分初めて特捜と正面から戦い勝利した政治家になった。小沢の先輩の金丸信のように、特捜をかわせても国税に脱税で捕られたケースもあるけれど、僕はその可能性は低いだろうと思っている。

なぜなら一年間もの時間をかけて世間を騒がせ、次期首相候補だった政治家を引きずり下ろしながらも不起訴という結末を迎えた特捜部の失態を、国税局は冷ややかに見ているだろうと思うからである。今、小沢に手を出すと世間が騒ぎ、もし脱税を見つけることが出来なかったら大変である。特捜に替わって国税局が非難を受け、とんだ恥さらしとなる。よほどの証拠を握っていない限りそのような決断をすることは出来ないだろう。

僕の予想だが、東京地検特捜部は小沢一郎との対決で地に墜ちた権威復活のため、再び政治家案件を復活させるのではないだろうか。但しその場合、捜査の対象となるのは自民党側だろう。これ以上民主党を攻撃することは出来ないし、とりあえず名誉を回復する為には、捜査の公平性を証明しなければならない。その為には野党側から生贄の羊を数人引っ張るのが手っ取り早い。永らく政権にあった自民党にはこの手の汚職は揃っている。特捜から見ると選り取り見取りである。後は自民党側が切り捨ててもよい政治家を差し出すだけだろう。身に覚えのある自民党議員は気をつけるがよい。

さて今回、特捜が白旗を揚げることになった原因の一つとして、特捜の行った世論誘導がとんでもない失敗であったことを指摘しておこうと思う。これは容疑者の自白が特捜の捜査の基礎的な部分であるが故に、特捜は世論を自分たちの都合のよい方向へと誘導するのが常道である。

鈴木宗男衆議院議員など、こうした特捜捜査の犠牲になってきた人達は一様に指摘しているのだが、特捜はまず自分たち自身で事件の構図を描き、登場人物たちをその構図に当て嵌めていく。その人物たちが否定しようと事実が違ったものであろうと、最初に特捜が描いた構図が優先される。その為に取調室では被疑者を恫喝・脅迫し闇司法取引を行い、特捜の構図に沿った調書にサインをさせるのである。

予め特捜側に都合がよいように誘導された世論により、既に容疑者はクロであると世間は見ている。公開処刑の様相を呈してる中で取調べを受ける被疑者たちはもがき苦しみ、最終的にはほんの僅かな救いを求めて、捏造された調所にサインをしてしまうのである。勿論これは取調室が密室であって、被疑者は弁護士とも十分に面会できず、取調べの際も入れ替わり立ち替わりやってくる鬼の検察官に対して連日一人で立ち向かわなければならないので追い込まれた結果である。

このような取調べのやり方は人権無視も甚だしく、その為に取調べの可視化という、取調べの全ての記録のテープ記録(後編集不可な装置を使う)や弁護士の立ち会いを義務図蹴る法案の成立が叫ばれているわけだ。またこの密室での取調べは取り調べる側に断然有利であり、今まで数々の冤罪がこの中で作り出されてきた。その問題点は例えばアムネスティなどからも指摘され抗議されている。

今回の小沢不起訴に至る特捜の失態は、その取調べ方法の残忍残虐さを世間に知らしめる結果となった。大手マスコミはそのようなアンフェアな特捜捜査の実態を報じないが、週刊誌メディア等の非記者クラブメディアの一部やインターネットメディアはそれを一生懸命に報じ、その結果ネットで情報を得ている人々から、新聞やテレビから情報を得ているような普通の人々へと、特捜の捜査についての疑問点が知れ渡る結果となったようだ。

小沢不起訴は特捜にとって忘れらない十字架となるだろう。特捜にとって幸いなことに、民主党は取調べの可視化法案をやる気があるのかないのかよくわからないほど愚鈍なスピードで進められている。2年後をめどに法案成立を目指す、等と言ってるのだが、その2年間で冤罪が起きた場合はどう責任をとるつもりか、民主党はよく考えた方がいいだろう。僕としてはこの際、鈴木宗男議員と同じく、特捜などなくしてしまい検察一本でやった方がいいとさえ思うのだが。

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