もっと暴れよ、亀井静香。

東京オリンピックの招致が失敗したり、中川昭一財務大臣が急逝したり、何かと慌ただしい週末だった。

東京オリンピックはその招致に150億円(うちスポンサー協賛金50億円)という大金をかけた挙げ句での落選で、そのお金が何にどのように使われたのか精査を求める声が今後高まるだろう。石原都知事はその声に答えると約束したそうだが、新銀行東京での巨額赤字の責任を問われた際も経営陣にその責任を転嫁させた前歴があり、オリンピック誘致の赤字など何とでもかわせる算段があるのだろう。

中川元財務大臣に関しては、生前の業績に共感できるものは少ないといえ、死者を悼む気持ちは持ち合わせているつもりである。酒で仕事を棒に振り、さらに人生まで棒に振ってしまった。そんな弱みを持っていた人間くさい人だったんだなあ、というのがこの世襲政治家に対する僕の最終的な印象である。きっと政治を離れた場所で普通に話をしたらとてもいい人だったんだろう、と思う。

そして植草一秀氏が拘留地より生還した。健康なまま出所できたようで何よりである。暫くは休息が必要となるだろうが、英気を養ったら再び活発な言論活動を再開して欲しく思う。植草氏のブログというのは、インターネットで政治の情報を得る際のメートル原器のような存在で、他のサイトに書かれた意見がどのようなバイアスがかけられているのか、植草論に立ち返って考えるとそのブレが理解できる存在なのである。

そして鳩山政権が発足してそろそろ3週間である。新聞やテレビではあの手この手を使って民主党マニフェストを実行しようとする邪魔をしているようだが、まだ国会も始まっていない状態でどうのこうの言っても始まらない。ここまで肩すかしを食った部分もあったし、逆に良くやっているなと感じる部分もある。

肩すかしを食った部分は、このブログでも何度も取り上げているように、記者クラブの開放を行わなかったことで、これはそろそろ何か手を打たないとメリットよりデメリットの方が上回ることだろう。

また前原国交大臣が日本航空の救済チームに小泉竹中路線の人を登用したことなど、これで大丈夫なのかという不安が残る。経営難とされる日本航空の再生を目指すタスクチームを作った訳だが、このチームが主要プレイヤーとなって日航再建を指導し失敗した場合の責任は政府が負うことになる点、そしてタスクフォースのメンバーが悪名高い産業再生機構OBであって彼らが小泉竹中人脈とされている点である。

(参考)「JAL再生タスクフォース」は何様なのか?日経ビジネス EDGE)

日航の再建というのは年末までに2000億円の運転資金が不足すると言われるほど金額が巨大で且つ締め切りに至るまでの猶予がない。これを早急に救済するだけでなく今後も航空会社として存続させる為には、オバマ大統領がGMに対して連邦破産法を適用させたように一旦会社を解体させ、優良な部分だけをすくい取って存続させる方法しかない。しかし前原大臣は日航を潰すのではなく再建させる方向の発言をしたことでさらに日航の信用不安を結果として煽ってしまった。

何かとちぐはぐな船出ばかりが目に付くのだが、これはある程度報道にバイアスがかかったものである点も考慮しないとならないだろう。

今日発売の週刊ポストには、例の八ッ場ダム中止を反対する地元住民たちが国交通省の官僚や役人たちと仲良くゴルフをプレイしたという記事がある。そのゴルフ接待はダム建設を請負うゼネコンの負担だという。ダム存続を訴える地元の人々がどのような背景を持っているのかよくわかる記事であるが、そのような地元住民側に一方的に肩入れしてきたテレビや新聞の報道というものが如何なるものか、常に割り引いて考えなければならない。

多少ぎくしゃくしたところのある鳩山政権の船出ではあるが、勢いがあるのが新党大地鈴木宗男国民新党亀井静香である。両者とも民主党ではないところが興味深い。

岡田外務大臣の下、外務委員長となった鈴木宗男は既に外務省に対して質問主意書を22件提出したという。全ての質問主意書の数は26件なのでその殆どが鈴木宗男外務委員長によるものである。通常質問主意書は野党が出し与党がそれに対して省庁を守ろうと動くものなのだが、与党のしかも外務委員長が率先して外務省を問いつめている姿勢は文句なく賞賛せねばならない。

そしてモラトリアムを提案して鳩山内閣に侃々諤々の議論の大波を起こした亀井静香郵政金融大臣も要注目である。実際は閣内ににそれほどの波紋はたっていないらしいが、ある意味亀井静香こそ鳩山内閣のハイライトであるといえる。

モラトリアムというのは金融機関から借り入れた借入金の返済を猶予してもらえるという措置である。これが企業だけに適用されるのか、個人のローンなどにも適用されるのかわからないし、モラトリアムが実施される期間が3年なのか1年なのかも決まっていないけれど、鳩山内閣でこれほど面白いことを言う大臣は他にいない。

まず銀行などが貸し付けたお金の支払いがなくなるので、銀行の経営が圧迫されるとの反論があるが、亀井大臣は「銀行が経営危機だったときに巨額の資金を税金から融資してもらって立ち直ったのに、中小零細企業が苦しんでいる時に貸し剥がしするとは何事か」と一顧だにしない。今まで銀行の査定に苦しんだ庶民はこのような理屈がたまらなく好きである。

僕はモラトリアムは是非やればいい、と思う。勿論これで銀行の儲けはかなり吹っ飛ぶだろうから、銀行自身も自己改革を行わないと立ち行かなくなるだろう。しかし亀井大臣の言うように、銀行はバブルの後始末を税金投入で乗り切り、その後日銀のゼロ金利政策で儲けに儲けたのである。儲けが出たら役員賞与などの大判振る舞いではしゃいでいる。それであれば今度は銀行に汗をかいてもらおう、という話だ。

但しモラトリアム期間が3年というのは長すぎるだろう。3ヶ月から6ヶ月あればいいだろうと思う。それだけでかなりの中小零細企業は一息つける。

僕がモラトリアムで不安なのはただ一点だけである。それは所謂ブラック企業といわれる道徳を無視した企業まで救ってしまうことである。銀行は今後もモラトリアム政策が行われることを見越して、融資先がブラック企業であるかどうかきちんとチェックする必要があるだろう。そして融資先がブラック企業であればこの機会に整理せよ、と言いたい。勿論失業した社員の受け皿となる政策は別に必要となる。しかし、こうした企業で働く人々はある意味救いを求めていることも事実である。

ブラック企業を見分けるのは簡単で、社員規模に対して新規雇用率と退職率が異様に大きいかどうか見ればよいだけである。何故ならばブラック企業は社員の定着率が著しく低いからである。

鈴木宗男なり亀井静香なり、自民党時代に政権の中枢にいたことのある政治家が元気なのが鳩山政権発足3週間の感想である。彼らは紳士然とした民主党閣僚と違ってはしゃぎ方を知っている。政権交代明治維新以来の革命であるというのだから、それなら徹底的に旧秩序を破壊してこそ華がある。官僚にのせられているようでは失態である。民主党閣僚も遠慮せずどんどんはしゃいで欲しいと思うのである。