シルバーウィークって何ですか

長らく外国生活している日本人に先日、「日本は今シルバーウィークなんだ」とメールに書いたら、「シルバーウィークって最近よく聞くんだけど、それって何ですか?」と尋ねられた。

5月のゴールデンウィークは昔からあって馴染み深いのだけれど、そういえばシルバーウィークって何なのだろう。僕は先の問いに上手く答えることが出来なかったのである。

9月20日敬老の日であり、23日は秋分の日である。しかし以前、敬老の日は9月15日だったはずで、2001年の祝日法改正(ハッピーマンデー制度)の適用によって2003年からは9月第3月曜日となった。そして秋分の日は「地球が秋分点を通過する日」ということになっており年度によって日にちが違うが、通常は9月23日である。

21日が敬老の日、23日が秋分の日となると、間に挟まれた22日は祝日法の規定によって国民の休日となるわけである。

不思議なのはこのハッピーマンデーという制度である。これは「週休2日制が定着した今日、月曜日を休日とする事によって土曜日・日曜日と合わせた3連休にし、余暇を過ごしてもらおうという趣旨で制定された」という解説が付いている。実際に月曜日に移動してしまった休日以下の4つだ。

  • 成人の日(1月15日 小正月 → 1月の第2月曜日 2000年〜)
  • 海の日 (7月20日 旧海の記念日 → 7月の第3月曜日 2003年〜)
  • 敬老の日(9月15日 旧としよりの日→ 9月の第3月曜日 2003年〜)
  • 体育の日(10月10日 東京オリンピックの開会式の日 → 10月の第2月曜日 2000年〜)

それで結局、国民の祝日は1年で何日あるのかというと、2007年からは合計15日ある。これは先進国では最多であるという。

祝日が多いと言われているドイツでは年間14日あるが、これは各週に於ける独自の祝日も合わせた日数で、この中には祝日である州とそうでない州も含まれる。日本のような全国的に休みとなるのは年間8日だけである。

イギリスではこうした祝日はバンクホリディと呼ばれ、基本的に年間8日である。その他、北アイルランドスコットランドに独特の祝日があるが、日本人から見ると祝日が少ない印象である。

さて日本の祝日を考える際に忘れてはならないのは、日本独自の年末年始休暇とお盆休みの存在である。通常先進国でこのように全国民が一斉にとる長期休暇というものは存在しない。各人が雇用主と話し合って独自に2〜3週間の休みを取るバカンス休暇が一般的だ。

僕は短い間だったけれど(2年間ほど)、イギリスで生活したことがあるのだが、イギリス人達は12月31日まで普通に仕事をし、翌元旦は休み、2日からはまた通常業務に戻っていくのである。話を聞くと、もっと以前は元旦も休みではなかったというのだが、みんな大晦日にパーティをやって翌日は使い物にならないので仕方なく元旦を祝日にしたのだ、と笑って教えてくれる。

日本人は働き過ぎのワーカホリック民族であると言われてきた。しかし、この祝日の多さをみるとどうやらそうではないようだ。みんな休みたいのだけれど、一人だけ休むのは心苦しい。だからみんな一斉に休みましょう、というのが本音である。

それはそれでいいではないか、休みたいのが本音でなぜ悪い、という声に対して、日本は貿易立国であるというのに諸外国が働いている間に休んでいると取り残されますよ、という答えを返してみよう。

例えば株式市場である。東京や大阪の証券取引所がシルバーウィークで休んでいる間、ニューヨークやロンドンでは活発に売り買いが行われている。日本の株式市場はその間とり残されるだけである。日本の株式市場が世界から軽く見られている一因である。

その他の業種においても貿易が絡んでくる業種は一様にデメリットが目立つ。中には従業員のシフトでそれに対応している企業もあるのだが、その代表的な会社がトヨタ自動車である。とても有名なトヨタカレンダーというものがあり、祝日等は休業日ではなく週5日の営業日とそれに続く2日の休日が繰り返される。その代わりにゴールデンウィークや年末年始などの大型連休にはまとまった休みが設定されているものである。

トヨタ式カレンダーの例(年末年始と夏期休暇は含まず)

年末年始休暇、お盆休み、ゴールデンウィーク、シルバーウィークと全国民一斉に祝日をとると公共輸送機関も道路も混雑するのは自明の理である。報道ではETC利用者のみ休日一律1000円となった高速道路料金によって、道路が渋滞して大変なことになっているかのようなニュースばかりを流すのだが、こうした休日の取り方をしている限り一斉渋滞はなくならない。

ついでに書くと、各報道機関がやたら高速道路無料化をすると渋滞が増えて大変なことになると煽っているのは、彼らのスポンサーに鉄道会社や航空会社がいるからで、高速道路無料化によって自動車移動の方が安くなって客を奪われたり、自分たちの料金設定を安くせざるを得なくなるのを警戒して報道側にスポンサー圧力をかけているだけの話であろう。日本の報道機関なんて娼婦のようなもので、金銭次第で体を売るようなことを平気でする一例だと思う。一方のスポンサーである自動車会社は高みの見物の最中である。

結局日本の国体を考えたとき、現在の国民の祝日や長期一斉休暇のあり方というものは、経済活動に支障を生じさせる一因であるとの認識が出てくるだろう。その時、日本が向かうべきなのは、ヨーロッパ型の完全週休二日制に、2〜3週間の長期休暇を交代で取るというバカンス制度を組み合わせたものだろうと思う。つまりトヨタカレンダーの年末年始休暇や夏期休暇を個人によって移動させる形態である。

これに関しても経営側はそのような人員シフトに対応できる余裕なんかない、といってくるだろう。しかし、僕は自分なりに中小企業の経営というものを見てきて率直な感想を述べるのだが、どの企業にもその程度の余裕はあるというのが本音である。長くなるのでここに書くことは控えるけれど、ちょっと考え方を変えるだけで大抵は可能である。それにこの休日案が実現するときは、出来るだけ全国一斉に始めなければならないから導入しやすいはずである。

現在のハッピーマンデー制度なんて、公務員の為にあるようなものだからなかなか変更は難しいだろうし、現在の休日のあり方の方が都合がいいと考える人も多いだろうが、きっと今後この制度のデメリットと真剣に対峙する時期がやってくると思う。

結局のところ、長らく国外で暮らしている日本人への返信に、「多分官僚達がもっと休みが欲しいから、9月に無理矢理連休を作って、5月のゴールデンウィークにかけたシルバーウィークというものを作ったんだ」と書いたら、「日本人は真剣に世界同時不況から脱しようとしているとは見られないわけだ」と返信が返ってきた。「日本人てどこか脳天気というか、何か自分の力でないものが事態を好転させるという奇跡にすがっているような気がする」とのことである。なるほど、と思った。