日本記者クラブ制度という既得権益の無効こそ政権交代の醍醐味だ

民主党のマニュフェストには触れられていない公約があって、その中で最も重要だと思うのが記者クラブ制度によらない記者会見制度である。

記者クラブというのは、クラブ加盟の報道機関により自主運営される組織である。首相官邸、省庁、地方自治体、地方公共団体、警察、業界団体などに設置され、クラブ加盟報道機関の記者が常時詰め、政治家や官僚等から取材をするためのものである。

しかし、上杉隆氏の著作「ジャーナリズム崩壊(幻冬舎新書)」などを読むと、日本記者クラブは報道機関による既得権益を代表する機関と成り下がっていることがよく分かる。

日本記者クラブでは、政治家や官僚から記者クラブに与えられた情報を受け取り、そのまま報道するのである。その際、聞き漏らしなどがないかどうか、他社の記者が集まってノートを見せ合いチェックまでするという。結果、どの新聞も同じ紙面が印刷され、各家庭に配られる。

もし一社が独自調査を行い日本記者クラブを出し抜いた場合は閉め出されることとなる。政府からのコメントをそのまま記事にしているだけの新聞各社は、日本記者クラブから閉め出されると独自取材で乗り切らまければならなくなる。この独自取材による報道というのは、先進諸外国では当然のことなのだが日本では出来ていないものだ。

報道機関とは、本来権力を監視する番犬であらねばならないはずである。しかし実は日本記者クラブで政治家や官僚からニュースになるネタを与えてもらって、それを忠実に報道するという権力側の愛玩犬となっているのが現実である。日本人はそのような新聞を読まされているのだ。

例えば次のようなことが起こる。

東京新聞は、小沢一郎公設第一秘書である大久保氏が東京地検特捜部に逮捕されたとき、政権与党である自民党の議員が西松建設から献金をもらっていたと独自調査した内容を記事にしたとき、東京地検東京新聞の取材を禁じてしまった。(参考リンク)

つまり、権力側は、記事にして欲しくない内容を公表した報道機関を村八分とし、以降の情報を与えないことが出来るのである。新聞社にとって、これは特落ちに繋がる状況で、最も恥ずかしいこととされている。

民主党は記者会見を全ての記者に開放している。日本記者クラブに入れない弱小報道局や雑誌社なども希望すれば入れてもらえ、質問さえ出来る。そしてその状態を、政権獲得後も続けるということを明言している。

即ち、政権交代により民主党が第一党となり政権与党となると、日本記者クラブ会員でない雑誌社やフリーランスの記者、その他報道機関も自由に取材できるようになる。また、今まで抜け駆けを許さなかった各社の報道姿勢も、日本記者クラブという高い壁がなくなることにより、独自調査で自らスクープを獲得しなければならなくなる。

それだけでも日本の報道の質は劇的に高まると思うのだが、それより大事なのは、報道機関が権力側におもねり、愛玩犬となる必要がなくなることである。愛玩犬となっていては記事を書けないのだ。正しく権力に対して牙をむけなければならないという、世界標準の正しい報道姿勢がいよいよ要求されるのである。

この日本記者クラブ制度を利用しない民主党の政策のさらなる向こうには日本版FCCの創設という目標がある。これは米連邦通信委員会のような行政から独立した通信・放送委員会(FCC)を設立し、放送免許の付与権限を総務省から切り離すことである。

これにより、放送免許の交付や更新を人質にとって、総務省及び政権側に都合のよい報道ばかりを流させている現在の報道の流れが根本的に変わることになるだろう。以前、安倍晋三NHKの放送内容に文句をつけたという事件などは回避されるのである。

この先にはさらにクロスメディアのあり方を見直すという公約があるのだが、それは新聞社がテレビ局の大株主であったりするように、報道側がカルテルスクラムを組む現状を見直すことである。

こうした政策は以前から民主党は訴えてきているのだが、報道側は一切これを報じない。どれだけ報道側がこれらを恐れているかがわかろうというものだろう、と思う。

日本の政治の混迷は、その実際を報じない、名ばかりの報道によって命を長らえてきたのである。現代の民主国家では、まず国民が真実を知ることが大事である。その上で政治家や官僚が動けばよいのだ。そうしなければ政治事態が既得権益の温床となるだけである。日本記者クラブというぬるま湯に浸りきった報道各社、或いは権力の狗どもを、駆逐せねばならない。

因みに、今回の衆議院選挙に於いて自民民主両党よりマニュフェストが発表されたのだが、その発表会見では、自民党は日本記者クラブ優先で、民主党は全ての報道各社を対象とした。この事実をどう考えるかが、また日本人の成熟度合いを測るリトマス試験紙となるだろう。

参考
大手メディアが決して報じない、「メディア改革」という重要政策の中身