馬渕澄夫シビックミーティングに出かけて思ったこと

衆議院議員小選挙区の奈良1区というのは、民主党の馬渕澄男(まぶちすみお)氏の選挙区で、僕はその地区の住人だ。先日、うちに電話があって、馬渕澄夫さんからだったと家人が言うので、まさかと思って詳細を聞くと、8月9日に奈良県立文化会館においてシビックミーティングを開くので是非参加下さい、との内容だったという。

馬渕氏は選挙で忙しいだろうから、事務所のスタッフが電話帳等を見て電話をかけてきたのだろうが、家人は本人だったと言って譲らない。本人に会ったことなどないのに、なぜか確信しているところがおかしくて仕方ないのだが、どうせ日曜日には何も予定はないのだし、家でじっとしていても暑いだけだからということで、生まれて初めて政治家の集会というものを見に行ってきた。

僕はこれまで政治家の集会というものを見に行ったことがないが、駅前などで政治家が演説をするのは何度か見たことがある。最も印象に残ったのは、小学生だった頃に見た田中角栄で、この人の演説は漫談を聞いているように面白かった。そこに集まった大群衆のあちこちから笑い声が絶えなかったことを記憶している。その他、細川護煕鈴木善幸という総理大臣経験者の街頭演説を聴く機会もあったが、全く面白味に欠ける演説だった。

田中角栄とその他政治家の演説の最も大きな違いは、その面白さではないかと思う。学校の先生でも、生徒を飽きさせずに教えることの出来る人もいれば、教科書を棒読みで済ます人もいる。政治家も同じであって、田中角栄は集まった聴衆を、笑わせ、くすぐり、やがては魅惑させる術に長けた人だったとの印象が強い。何せ小学生をも魅了してしまったのだから。

8月9日(日曜日)、約千人が収容できる県立文化会館の一階席はほぼ満席で(二階席は使われなかった)、その聴衆の前で馬渕澄男氏は民主党のマニュフェストの説明を中心に演説を行った。

演説の内容をかいつまんで書くと、日本の国家予算は、本当は207兆円あり、政府が補正予算を含めて111兆円と言っているのはまやかしである。特別会計と言われる官僚が自由に使える予算が存在し、それらの使用用途は国民生活に関係のない、天下り団体などに注ぎ込まれる。だから天下りを廃止することは重要なのである。

麻生政権が行った14兆円に及ぶ補正予算の規模というのは、現在5%である消費税の一年分を上回る金額であり、しかも14兆円のうち4兆円は官僚がプールし使われておらず、用途も決められていない。また3兆円は天下り団体に注入されることが決定されている。要するに14兆円のうち7兆円が、景気対策などにまるで関係のない使われ方をしているのである。

高速道路料金の無料化によって、一般道の自動車が高速道路に入ることになり、一般道の渋滞が緩和され、このことによってCO2の排出量が削減されることが国土交通省の資料によって明らかにされている。また、物流コストが10%低下し、小売価格に反映されることになる。

そのほかにも馬渕氏は熱心な演説を続けたのだが、日頃ネットを巡回して民主党のマニュフェストに関する様々な意見を読んでいると、特に目新しいと感じるものはなかったように思う。きっとこのような集会というものは、候補者の存在感を高め、運動員の志気を上げ、支持者の連携を深めるためにあるのだろう。

僕が感じた印象を率直に述べると、もはや選挙戦も後半戦に突入したのだから、マニュフェストはマニュフェストとしておいて、別の視点を作るべきだろうと思う。多分、普通の国民はマニュフェストには食傷気味だと思うからである。マニュフェストに述べられた内容に対して、政権による公約の裏切りという形で、既に国民は何十年も辛酸を舐め続けているのである。

勿論公約を裏切り続けたのは、自民党を中心とした政権であるが、今更マニュフェストなり公約なりを信じろと言っても、そううまくはいかないだろう。国民にとっては、自民党であろうと民主党であろうと、政治家は皆狼少年に見えるのだ。

年金や、情報公開、天下りなど、既にマニュフェストに書かれていることを、マニュフェストから離れて主張する、或いはその議員自身の言葉に置き換えて発言していくことが大事だろうと思うし、僕はそのような演説をこそ聞きたいと思う。そしてその時こそ、政権交代の足音が身近に聞こえると確信できるように思う。