クリントン元大統領と麻生首相、拉致被害者への対応の違い

8月4日、クリントン元大統領は平壌に到着した北朝鮮が今年3月から拘束している米国人女性記者2人の引き渡しを求めての訪問である。

拘束されているのは米カレントテレビの女性記者で、韓国系米国人のユナ・リーと中国系米国人のローラ・リンの両氏で、3月17日に中国=北朝鮮国境地域で取材していたところを拘束された。6月に二人の罪状は「朝鮮民族敵対罪」とされ、労働教化刑12年の判決を言い渡された。

その後二人は平壌の招待所に軟禁されているようで、政治的取引の材料に使おうとされていることが明白になったようである。

一方の麻生首相だが、8月1日に横田めぐみさんが拉致された新潟の市立寄居中学校周辺にある拉致現場を訪れ視察した。その後市民にではなく記者団に談話を発表したという。

麻生首相サイドは拉致現場視察を行うにあたって、予め拉致被害者の蓮池薫氏に面会を打診していたのだが、蓮池氏は「政治利用されたくない」と断り、兄の透氏は「パフォーマンスだ」と批判した。また曽我ひとみさんにも首相は面会を打診した模様だが、結局曽我さんは拉致現場視察に現れなかったので断ったと思われる。

この拉致被害者の人々からの冷たい対応は、ひとえに小泉首相以降の自民党の対応によるものである。今や彼らの政府への怒りは頂点に達しているようだ。その怒りは、政府と北朝鮮の交渉が暗礁に乗り上げていることもさることながら、拉致被害者へのあまりに無責任な対応が続いたのが原因であると、蓮池透氏は最近の講演で述べている。

参考 (8月5日追記)
新党日本BS11で放送している「にっぽんサイコー!」のシリーズにて、有田芳生氏の主催する有田塾に蓮池透氏が招かれ講演した模様が下記リンクから見ることが出来ます。この講演の模様は2回に分けて放映され、どちらのビデオも始まって21分あたりから有田氏のコーナーを見ることが出来ます。該当部分は各6分程度に編集されていますので是非ご覧下さい。

BS11「にっぽんサイコー!」第59回2009/05/09(土)放送
BS11「にっぽんサイコー!」第64回2009/06/13(土)放送

拉致被害者数名が北朝鮮から帰ってきたとき、安倍晋三中山恭子などが、彼らを二度と北朝鮮に帰すな、と訴えたというのは作り話であって、本当は北朝鮮と約束したとおり、期限が来たら彼らを北朝鮮に戻す予定だったことも、蓮池透氏の講演で暴露されている。

一時帰国の予定だった拉致被害者をそのまま日本に留めることに成功したのは、拉致被害者の家族の説得があったからである。その説得が成功したのを見届けて、安倍も中山も、彼らを北朝鮮に戻すべきではないと主張し始めたのである。

また、福田康夫に至っては、拉致被害者家族が帰ってきていない被害者はどうなるのかと尋ねた時、「黙りなさい。あなた達の家族は帰ってきたんだから」と強い口調で言い放った。

小泉、安倍、福田、麻生と、最近のめまぐるしく入れ替わる総理大臣は皆、拉致問題の解決に向けて努力すると言ってきた。北朝鮮側と拉致被害者はすぐに北朝鮮に帰国させると、勝手に北朝鮮と約束していた小泉から、安倍、福田とたいした成果もなく、麻生に至っては拉致現場で記者に談話を発表する程度である。米国政府の非公式な意向を受けたとはいえ、一線を退いてからも、平壌に向かったクリントン元大統領と行動力の違いは明らかである。

自民党議員たちは、自らを責任政党と言うのだが、彼らの言う責任なんてこの程度のものである。極めて軽量級だ。

それにしても、と思う。どうして平壌と書いて「ピョンヤン」と読まなければならないのだろうか。僕は日本に生まれ、日本の教育を受けて育った日本人だけれど、平壌は「へいじょう」としか読めない。しかし、マスコミは平壌と漢字で表記しながら、アナウンサーは「ピョンヤン」と発音するのである。このあたりの不思議さもいつも疑問に思う。