さもしい首相の任期満了解散

吉田茂のバカヤロウ解散は有名だが、その孫である麻生太郎の解散はどう呼べばいいのだろうと話していたら、「そのまんま麻生解散」がいいのではないかと言うので、「自爆テロ解散」も捨てがたいなどとと答えたのだが、要するに衆議院議員任期が9月11日に切れる直前であるから、ここはやはり正々堂々と任期満了解散と言えばよいのではないかと落ち着いた。

先週は解散をめぐって野党ではなく与党内から麻生降ろしと呼ばれる異論が多数出た挙げ句、結局それは今日の両院議員懇談会で総理大臣自らが陳謝するという結末を持って幕が下りた。総選挙直前に首相が頭を下げなければならないということ事態が異常事態で、もはや自民党も行き着くところまで来たようだ。

小泉元首相をはじめ河野衆議院議長なども、今日の解散で政界を引退するという。また津島派会長の津島雄二氏も引退である。今夕のテレビニュースで、津島氏へのインタビューがあったのを見た。津島氏は、4年前の郵政選挙で自民は大勝したが、選挙の争点というものは郵政のみであるはずはなく、それ以外の争点もあったのに、郵政が話題になりすぎて他が隠れてしまい、それぞれの政策が吟味されずに成立した結果、今日の格差社会や年金・医療の問題を増幅させてしまったと述べていた。

津島氏はいかにも残念そうに答えていたのだが、ちょっと待てよ、と言いたくなった。4年前に郵政選挙を行った時に、ワンフレーズで選挙をする危険性を十分知っていたのなら、どうしてそれを止めなかったのか。「改革」などと中身のない声を張り上げる小泉首相を危険と感じていたのなら、その時体を張ってでも止めるべきだったろう。津島氏はベテラン議員であり派閥の領袖であろう。その怖さを知らぬ訳ではあるまい。それを今頃残念です、等と言っても誰が聞くものか。何とさもしい言葉だろうか。

前回の選挙からの4年間、自民党はさもしい政権を作り続けてきた。「さもしい」というのは「見苦しい、みすぼらしい、卑しい、卑屈である、心が汚い」といった意味を持つ形容詞である。

与党だけで衆議院議席数の3分の2以上を占めるという絶対安定多数の力をバックに、自公政権はしたい放題し続けてきたのである。人気取りだけの政策をばらまき、政局争いばかりをして総理大臣は毎年のように替わった。その結果、国力が衰退しても、津島氏のように他人事のように嘆いてみせる。さもしいという言葉は正しくこのような人々に対して使う言葉である。

直近の麻生政権だけでも、定額給付金や14兆円近くのバラマキ政策と、さもしさ一杯である。小沢一郎公設秘書逮捕も漆間内閣官房副長官が関わったとされ(公式には否定)、それは小沢一郎を嵌めようとする意図が麻生内閣にあったから起こったことである。また鳩山由紀夫故人献金疑惑にしても、1000名近くにのぼるといわれる個人献金主の戸籍を調べ生存を確認するという作業は、公安か検察以外に出来るわけもない。要するにこれも国策捜査の一環である。何とさもしいことか。

例のエコポイントというのも酷いもので、どうして車を買い換えたら減税されるのか、僕にはまるで理解できない。それが低公害車、高燃費車であるからだというのだが、エコというからには車から自転車に乗り換える、或いは電車やバスといった公共交通機関に振替えることがエコだろうと思う。

その他冷蔵庫を買い換えたり、液晶テレビなどを買うこともエコというのが分からない。分かるのは自民党に多額の献金をしている経団連の中枢企業はこれで儲かるのだろうな、ということぐらいである。来年も麻生政権が続いていたら、フィルムのカメラをキヤノンのデジカメに買い換えたらエコポイントがもらえるように改正されるのだろう。

そしてここに来て麻生政権は民主党の政策を誹謗中傷するのに熱心である。高速道路無料化などの財源について、民主党の政策は無理があり信用ならないという。でもね、官房機密費を縮小するだけでだいぶ違うんじゃないか、或いは霞ヶ関埋蔵金はどうなった、と疑問が浮かぶ。世界一働き者の国民が納めた税金を湯水のように使い私腹を肥やしてきたのは誰なのか。

選挙は8月の30日である。まだ40日もある。この間、このさもしい麻生政権が何を仕掛けてくるのか見物である。また公安や検察を使うのか、人為的に社会不安を煽るのか、さもしい麻生劇場は今日から40日間の限定公開である。