マイケル・ジャクソン死亡報道がそのまんま騒動を霧散する

米ロサンゼルスで25日(日本時間26日))、世界的人気歌手マイケル・ジャクソン(享年50)が急死して以来、テレビ番組はその追悼色の濃いプログラム一色に塗り替えられてしまった。

朝から晩まで、マイケル・ジャクソンの在りし日の映像や歌や識者達の想い出が語られ、それを見ていると僕も自分が80年代にまだ学生だった頃の想い出が甦ってくるのだが、よく考えてみるとこのニュースがテレビ報道の多くの時間を占めたおかげで、例の東国原知事の国政転出問題とそれに絡む自民党総裁後継問題が霧散しているのである。

勿論いくつものテレビ番組は東国原知事の問題を取り上げはするが、それは後ろに追いやられ、もはやそれほどの興味を持たれていない。明らかに熱は冷めてきている。古賀選挙対策委員長等が中心となって周到に仕掛けた「そのまんま騒動」が、もしマスメディアを賑わせ世間の注目を自民党に集めようという目的も持つものなら、それはマイケル・ジャクソンの死によってはぐらされてしまった格好である。

ついでに言うと、与謝野馨財務相渡辺喜美行政改革担当相への、「オリエント貿易」によって行われた迂回企業献金疑惑も蓋をされた格好である。この件は元々なぜか検察は興味を持っていなくて、調べようという気配さえもなかったのだが、マイケル・ジャクソンの死亡報道で世間が浮かれているのをこれ幸いに、知らぬ存ぜぬを押し通すようである。

小沢元民主党代表秘書が逮捕起訴された時、それが国策捜査であるかどうかと議論になったのだが、今回それよりもっと悪質な与党の担当大臣の疑惑を封じ込めてしまうのなら、もはや小沢氏への攻撃は国策捜査ではないとの言い逃れは出来ないだろう。

勿論検察は国策捜査ではなかったと相変わらず言い張るのだろうが、やがて歴史はその嘘を見破ることになる。歴史が見破るということは、次の世代が見破るということで、今現在の時代が如何に権力側の強引な既得権益の保護を目的に成り立っているかが将来の世間の常識となってしまうことである。

つまり、強引な利益誘導を改革の美声を借りて進めた小泉首相を擁した自民党政権が、今緩やかに且つ決定的に自壊に向かっているように、検察も10年後には権威が失墜し、その結果、本当に犯罪を犯した犯罪者の立件すらままならない状況におかれることも予想されるのである。

今、権力側にべったりと寄り添った検察上層部を、次の世代の若い検察官はどのような目で見ているのだろうか。次の世代は、現在の上層部のツケを否が応でも払わされることになるのだが。

マイケル・ジャクソンの死は、民主党側のスキャンダルである、鳩山代表の故人が献金を行っていたという不可思議な疑惑や、石井一参議院議員の郵便不正スキャンダル等も霧消した。前者は単純な経理ミス、後者は元秘書の勇み足らしいのだが、民主党にとっては、変な疑惑が降りかかってその対応に大わらわとなる矢先だったこともあり、僅かに追い風となるのかも知れない。

どちらにせよ、マイケル・ジャクソンという稀代のポップスターの死をトップに報じ、まともな報道を後回しにするマスコミというものの低俗さが如実に現れたことを覚えておこう。世界では10億人もの人々が今も飢餓状態にあり、日本の隣国は核開発をしていて、反日を国是にする国々に取り囲まれている状況で、年金財源も解決せず、道路建設はいつの間にか再開され、郵便貯金は証券となって外国に売り払われようとしている。もはや国家的危機なのだが、マスコミはマイケル・ジャクソンの死亡で浮かれている。その程度の連中がこの国の世論を作ってきたのである。そして政府はその世論を最大限利用してきた。

麻生首相にとっては少し物事を考える時間が出来たということだろうが、いよいよ衆議院の解散を決断しなければならない。西川社長支持派と鳩山邦夫支持派、麻生落とし派と麻生継続派、というように自民党は分裂し始めている。選挙結果がどうなろうと自民党もマスコミもいよいよ終息しそうに思うのである。