もはや後戻りできない新政権への期待

最近行われた地方選挙で非自民党候補が勝利を重ねている。

6月14日の千葉市長選では民主推薦、社民支持の元市議の熊谷俊人氏(31)、6月28日の横須賀市長選挙では無所属の前市議の吉田雄人氏(33)*1、そして7月5日の静岡県知事選挙では前大学学長で民主、社民、国民新党推薦の川勝平太(60)が当選した。

これらの選挙に於いて、自民党候補が尽く落選しているのである。これは驚くべき結果だ。特に最後の静岡県知事選挙の期間、例の東国原宮崎県知事が任期内にもかかわらず国政に転出しようとし、挙げ句の果てには自民党総裁の地位までを要求した件が新聞やテレビを過熱させていたし、鳩山民主党代表の故人による献金が発覚し、自民党国会議員が必要以上に騒いでいた時期だったのである。

これまでの自民党の選挙方程式なら、自民党主導による政治ワイドショーのメディアジャックが成功すれば、票は自ずと自民党に流れるはずだったのである。ところが結果は正反対に出た。

今頃自民党選挙対策本部は頭を抱えているに違いない。タレント芸人を踊らせても駄目だし、スキャンダルを焚き付けても駄目なのだ。もはやこうしたカウンターパンチに効力はないとわかってしまった。すると今の自民党には打つ手はない。

メディアを踊らせて選挙を乗り切るというやり方は、2005年の郵政選挙が有名である。当時の小泉首相郵政民営化に反対する議員を公認から外し、刺客まで送って新聞やテレビを盛り上げた。僕の記憶では2ちゃんねるなどのインターネットサイトも工作員と呼ばれる自民党支持者たちに占領された。その結果、自民党は300議席以上の獲得という大成功を納めたのである。

この時から小泉首相の劇場型選挙は神話となったのだが、しかしよく考えてみると、小泉首相が選挙に大勝したのは後にも先にもこの一度限りなのである。

小泉首相在任中の2003年に行われた第43回衆議院選挙では、233議席が237議席と微増しただけである。一方の民主党は127議席が177議席と躍進している。また、2004年に行われた第20回参議院選挙では、改選47議席が49議席と、これも微増である。一方の民主党は改選33議席が50議席議席を増やしている。

どちらも勝ったとか負けたとかというレベルではなく、自民党は現状維持である。そして民主党の躍進を許している。小泉首相は常に高い支持率を保っていたが、選挙に特別強かったわけではない。

そして2005年の郵政選挙で小泉自民党は大勝する訳だが、今回の静岡知事選挙での為体を見ると、あの時小泉自民党が使ったメディアジャックという劇場型選挙は後にも先にもこの時だけしか効果がなかったようである。

その理由は色々と考えられるのだろうけれど、まずは小泉純一郎というキャラクターが劇場型選挙にピタリと嵌ったという点、そして有権者の目が段々と厳しくなってきたという点の二つが大きな割合を占めているように思う。

現在では小泉純一郎のメッキは剥がれ堕ち、新自由主義の綻びの原因との認識を持つ人が多くなってきた。そしてその新自由主義の行き過ぎと急ぎ過ぎの結果、国民の生活は貧窮し余裕がなくなり、有権者の目はますます厳しくなっているという訳である。もはや日本国民には小泉劇場型選挙のようなものを楽しむ余裕はないのだろうと思う。

この状態の先にあるのは、自民党政権への疑心暗鬼と、非自民党政権への期待であって、この流れはもはや止めようがないほど強くなっている。自民党としては近々行われる衆議院議員選挙に於いては、勝つことではなく、その次の選挙に向けて体力を温存できるかどうかが焦点となるだろう。選挙の結果よりも、その後自民党が崩壊するかどうかが勝敗の決め手となるだろう。

今後注目される地方選挙として、東京都議会議員選挙、そして自民と民主がガチンコ対決となった(他に共産候補もいるが)奈良市市長選挙がある。どちらも自民党は窮地に立たされているようなリサーチ結果が出ている。とりあえず両選挙が行われる7月12日は、いよいよ誰の目にも結果が見える日となると注目しているのである。

*1:自民と民主が相乗り