次の日本の平等主義ということ

アーサー・M・シュレンジャーJr.という歴史家が「アメリカ史のサイクル」という著書で、アメリカには約30年ごとにイデオロギーが交代するというサイクルがあるといっている。
1930年から1970年までは「ニューディール連合」と呼ばれ、1980年から2008年までが「レーガン連合(もしくは保守革命)」である。

ニューディール連合」は「大きな政府」であり、1929年にフランクリン・ローズベルト大統領が行ったニューディール政策が代表的である。それ以前の時代では「保守主義」のとった自由競争社会が行き着くところに行ってしまい、1929年に大恐慌アメリカを襲ったのである。

ニューディール連合」以降、第2次世界大戦を経て、アメリカは緩やかに「レーガン連合」へと向かっていく。「小さな政府」が国家の美徳となり、経済は自由競争に任された。そしてその行き着くところが2008年の金融崩壊である。

そして新しく大統領に就任したオバマは、倒れかけた金融機関に資本を注入し、クライスラーGMも国有化した。これは「ニューディール連合」の復活である。時代の循環が始まっているのである。アーサー・M・シュレンジャーJr.のいうサイクルがここにある。

ニューディール連合」は平等主義に近い。一昔前の平等主義は共産主義の代名詞のようであったが、既に共産主義は敗北し、自由主義に於ける左派に組み込まれてしまった。オバマに代表されるように、今は平等主義の時代である。これから暫くの間、時代は転換しようとするのだろう。

日本でも長らく続いた自民党政権が崩壊し、民主党政権が取って代わろうとしている。自民党政権は日本の経済成長をある程度推し進めることにも成功したが、日本経済自身が行き止まりに遭遇し立ち往生している現在では、自民党の政策は効果などなく、逆に国力を埋没させるだけの結果となっている。

自民党から新時代のリーダーが出ない、とよく言われることだが、当たり前である。もはや自民党の存在自身が新時代にそぐわなくなっているのである。新しいリーダーは外部に求めるのが筋である。日本ではその役割を民主党が持つことになるのだろう。

今、何としてでも権力にしがみついていたい自民党が暴走している。小泉竹中路線の所謂構造改革路線のクライマックスであった郵政民営化は、実は自民党政治崩壊の象徴でもあった。

保守主義が行きすぎた時代に、小泉竹中は構造転換が求められていた潮流を利用して、郵便局の行ってきた郵便や銀行業務を民営化することを改革と呼び替えた。この改革がなぜ必要なのか、或いは改革後どのような事態になるのかといった説明が曖昧なまま、強引にこれを推し進め、反対すると植草一秀氏のようにパージされた。

結局郵便貯金の持つ345兆円という資産がアメリカの金融会社を通して売り払われてしまうだけという、日本国民にとっては巨額の損失が見込まれる事態に直面しているのだが、同じ時期にアメリカではブッシュ前大統領が石油資本や兵器産業の利潤のためにせっせと戦争を行っており、ブッシュ=小泉竹中というのは同時代性を持った驚くほどの腐敗政権だったのである。

アメリカがその指導者を大統領任期を利用して、その方針までも替えたということは、多くの日本人にとっても新鮮なことで、それが現在行い得る最も正しい道であると映ったのである。だから、小沢一郎の秘書が逮捕され、小沢一郎が代表職に留まり続けたことがメディアからバッシングされていた最中に於いても民主党の支持率は微減に留まったのである。日本人はアメリカで起こったことを正確に見抜いているのである。

もはや自民党には政権に留まって日本を運営していく力などない。仮に留まったとしてもますます日本の国力が落ちていくだけの話である。小泉安倍福田麻生と、選挙も行わず総理大臣を回転寿司のようにくるくると回しているだけではもはや救いようがないのだ。

この数年間で自民党から最も品格を感じることの出来た発言は尾辻秀久参議院会長の発言であり、「下野することは恥ではない」と選挙の必要性を説いたスピーチである。尾辻氏の言うように、下野し野党となって、与党の権力を監視するのも立派な政党の役割である。そして政権から離れている間、新しい政策を議論し次の時代に備えることこそ王道である。

保守主義は一旦退き、そして平等主義ができる。それが本来の流れであり、その流れに逆らうと日本は真っ逆さまに凋落することになるだろう。現在の麻生首相自民党の見苦しいあがきは極めて反国家的である。