かんぽの宿問題と小泉元首相の詭弁

4月8日、京都グランビアホテルに於いて小泉元首相が演壇に立ち、「かんぽの宿売却問題の本質は何かよく考えて下さい。これは役所がやらなくていい仕事を今までやってたんです」と演説を行った。

僕はこのニュースをテレビのニュースで知った。そしてその直後言い様のない不快感に襲われた。何というか、全く理解できないのである。僕の頭が悪すぎるからだろうか。確かにそれほど優秀な頭脳ではない。

かんぽの宿売却問題とは、2400億円の資金を注入された79施設を109億円でオリックス不動産に売却することを決定したという不明瞭且ついかがわしい不動産取引に纏わる問題である。

オリックス不動産は一般競争入札で落札したという建前だったが、実際のプロセスを調べると随意契約といえるものだった。2400億円かけた施設を109億円という安値で売却する根拠はかんぽの宿赤字経営であったからとされるが、実際はメルリリンチが作った入札参加者へ提供した資料によると、平成21年は27億円の赤字だが、来年22年からは10億円、13億円、16億円、17億円、17億円と毎年黒字経営ができるという。

この赤字の根拠となった資産価値評価の中心的役割を果たした奥田かつ枝委員はオリックス関係者であった。また、奥田かつ枝委員に限らず、かんぽの宿売却を含む郵政民営化に大きな影響力を持った総合規制改革会議の議長を務めたのがオリックスのトップである宮内義彦氏である。

一方既に売却された施設があり、それらを調べてみると、1万円で売却した施設が6000万円で転売されていたり、1000円で売却した施設が4900万円で転売されていたという事例が見つかった。

つまり、かんぽの宿売却問題というのは、小泉政権時に行われた郵政民営化を隠れ蓑にした、不動産の不正取引の問題であって、その疑惑は総合規制改革会議という政権中枢部に置かれた司令部が関与している疑いがあるという国家ぐるみの詐欺疑惑なのである。

(これら郵政民営化に対して極めてバランスよく事例を整理しているのは経済評論家植草一秀氏のサイトである。是非御一読下さい。)

僕は少なくともそう理解をしていたので、昨日の小泉元首相の演説には違和感を感じ、全く理解不能の状況に陥った次第な訳である。「役所がやらなくていい仕事を今までやってた」から問題なのだ、と言う小泉首相は、説明責任を果たしているのだろうか。

また郵政民営化に於いてはさらなる疑惑が出ている。郵便貯金が米国の投資会社によって米国の国債を購入することに使われているという疑惑である。本来郵貯の資金は日本の国債を買うために使われてきたと思っていたのだが、こうなると日本の財政はどうなるのだろう。米国は経済破綻目前の状態だが、日本だって楽ではなく、借入金は1000兆円を超えるという。これは外国から借りていない国民から借りた金なので踏み倒しても大丈夫という専門家がいるのだが、それは国民を馬鹿にした話であり、国民からの借金を踏み倒したりしたら政権や国家の骨格自体が支持を失い、普通は革命が起き前政権に関与したものは厳しく断罪されることになるだろう。日本のチャウシェスク化である。

斯様に郵政民営化というものは疑惑の総合商社なのである。小泉元首相、竹中平蔵氏らはこれらの疑惑のひとつひとつに懇切丁寧に答えなければならない。それは彼らの義務なのである。また郵政民営化を煽ったマスコミも、この疑惑をきちんと報じ、謎を解明しなければならない。