U18ベースボールを知っていますか?

現在発売されている「新潮45」に、スポーツライター玉木正之氏の「これでいいのか! WBC」という記事が載っている。これは主としてワールドベースボール・クラシックという、先に閉幕したプロ野球の国際リーグ戦についての考察が述べられていて興味深いのだが、その中で一点唖然とした記述があったのでここに記すこととした。

それは、実は野球においてもサッカーと同じくU-18(18歳以下)の世界大会が30年近くも以前からIBAF国際野球連盟)の主催で開催されていて、日本では高野連夏の高校野球大会を優先して代表チームを参加させていない、という事実である。そしてこれをメディアはまったく報道していない。(新潮45 2009年4月号110頁)

この大会はwikipediaによると「AAA世界野球選手権大会」と呼ばれる大会で、歴代27の国と地域が参加し、2004年に台湾で開催された第21回大会の本戦出場国は12カ国ある。2年毎の隔年開催で、2000年以降の優勝国は韓国(00,06,08)、キューバ(02、04)。日本は 1982年、1999年、2004年の三度参加し、各準優勝、5位、準優勝と立派なリザルトを残しているのである。

ここで問題とするのは高野連の態度と報道各社の姿勢である。

18歳以下の青少年が国際大会に出場するというのは、甲子園目指して全国大会を勝ち抜くことよりも意味があるのではないだろうかと思う。甲子園大会は国内の選手権で閉ざされた大会である一方、AAA世界選手権大会は文字通り外国の有力チーム、あるいは有力選手と戦うのである。これら未成年の選手にとって、外国へ行き外国選手とベースボールのゲームを行い、その結果交流を深めることができるのである。

その貴重な機会を高野連が奪っているのではないだろうか。

また報道しない報道各社は、夏の高校野球という利権を手放したくないのではないだろうか。夏の高校野球大会には熱心なファンが多く、またマスコミによる取材と報道が毎年のように過熱する。そこには部数、視聴率の上昇と、スポンサー各社による纏まった金額の流れが存在し、それらの結果報道各社の懐が潤うという事実が歴然と存在する。

高校野球報道で報道各社が潤うのは一向に構わないと思う。しかし、その利得のために、U-18の選手たちの国際試合の機会が奪われているとしたらどうなのか。また、AAA世界野球選手権大会の存在そのものを報道しないというのは、如何にも自らの利権隠しのために行っているようにしか見えないのである。

ちょっと話は変わるけれど、背後で大きなスポンサーマネーが動いている高校野球大会で、高校球児らが団結して出演料を請求したらどうするのだろうか。NHKならまだしも、民放はその放送を自らの利潤のために行っている組織である。高校球児らにとっては、自分たちのプレイによって民間会社が利潤を上げているとすれば、その利益配分に与る権利が生じると考えて当然である。万一本格的に裁判となると、報道各社は甚だ不利な状況に追い詰められるかと思う。しかも彼らから国際大会の機会を奪ってまで行っているのだ。

この国のマスコミのおかしさはいろいろな所で垣間見ることができるという一例である。