結局二大政党制は目の前にある

近所のおばさんと挨拶する。いよいよ選挙ポスターの掲示板などが町内に建てられましたね、といった会話をする。するとおばさんは言うのである。
「今度の選挙には行くけれど、白紙で投票するわ。だって入れたいと思う政党なんてないんだもの」

12月16日に投開票が行われる衆議院選挙では、民主党と自民・公明党との垣根が崩れ、日本維新の会のような政党が第三極として脚光を浴びている。また日本未来の党など小政党が乱立した状態で混乱ばかりが伝えられているようだ。

今、巷間よく言われるのが『二大政党制は日本に根付かない』とした俗説である。民主党と自民・公明党との第一極・第二極、そして日本維新の会の第三極、さらに日本未来の党みんなの党など少数政党が入り乱れている状況が二大政党制からはほど遠い姿に見え、その結果先の『二大政党制は日本に根付かない』という俗説の根拠となっている。

しかしここでよく見ると、民主党自民党公明党などによる政策の大きな違いは存在せず、日本維新の会に至ってはそれら三党に分け入り一気にイニシアティブをとろうとする政局的な動きばかりが目に付いてしまう。つまり、民主党自民党公明党日本維新の会までが実は同じような政党であり、自民党の最盛期のように、同じ政党の別派閥が争っているような様相を呈しているのである。

今回の選挙の主たる争点は、『消費増税』『TPP』『原発』の三点セットであって、民主党自民党公明党日本維新の会らはこれらの政策では実に似通った立ち位置をとっている。『消費増税』は何れも増税派、『TPP』は参加派、『原発』は部分稼働を含めた再稼働容認派である。主要な争点がこれだけ一致する政党を分けて考える方が不自然だろう。

一方で『日本未来の党』は上記主要三争点に関しては全て反対の立場をとっている。『消費増税』は反対、『TPP』は不参加、『原発』は停止撤廃である。みんなの党は『TPP』は参加とするなど中間派っぽい。

つまり、今回の選挙は実は二大政党制において争われようとしている、と認識するのが正しい。二大政党制による選挙というとどうしてもイデオロギーの違いによる二極化した対立を思ってしまうのだけれど、左や右というイデオロギーは既に死に、また大きな政府と小さな政府という分類も決着がついてしまっている。こうした分け方はもはや想像の中の産物でしかないのが現実なのである。

折角の選挙なのだから、こうした対立を鮮明にさせ、一体何を目的に選挙が行われ、投票した結果どのような社会が構築されようとしているのか有権者は知ることが大事である。しかしながらマスコミがこうした争点を全くといっていいほど報道しようとしない。さも民主党対自民・公明党、そして両者への対抗として日本維新の会があるかのような絵空事を報道しているのが現実である。つまり対立軸が報道されていない。だから一般有権者はどうしていいのか分からないでいる。

小泉時代の有名な郵政選挙の例を挙げるまでもなく、この国の報道は真実を伝えることよりも自分たちに都合の良い世界を勝手に創造し、その想像の世界の中の出来事を報道と称して伝えてきた。今回の衆議院選挙も同じく、大きな枠組みではほとんど同じといえる政党間の些末な争いを、さもイデオロギー的な対立が行われているかのように報じている。特に第三極などといった存在すらしていない対立まで演出するという念の入りようである。

今回の選挙にはれっきとした争点があり、それは『消費増税』『TPP』『原発』の三点セットなのである。その争点を巡って争う二つのグループが存在する。この点がクリアーになれば冒頭で紹介した近所のおばさんだって白票を投票しないはずである。第三極などというのはこうした争点を隠すための言葉遊びでしかない。

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