中村哲治X平野貞夫の講演に行って感じたこと

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2月19日(土曜日)。奈良県立文化会館で民主党参議院議員中村哲治氏と小沢一郎の懐刀といわれる元参議院議員平野貞夫氏がコラボした講演会があり、僕も参加してきた。

僕の場合、参加したといっても椅子に座って聴いていただけなのだけれど、これから書くのはそこで聴いて感じたことをまとめようとしたものだ。

なお、この日の講演の一部は岩上安身氏のHPからUstream3のバナーをクリックすればビデオを視ることができるようだ(2月20日現在)。約2時間あった講演会の一部しか視られないようだけれど、会場の雰囲気は掴めると思う。

中村哲治議員といえば昨年の民主党代表選で小沢一郎を応援した議員であり、平野貞夫氏といえば小沢一郎との関係は誰よりも深く「日本一新の会」代表でもある。だから、この日の講演は菅対小沢といったよくある図式に当て嵌めると小沢寄りだと考えていいだろう。*2

ちょうど先週、民主党の比例代表から当選した衆議院議員16名が会派を離脱するという事件が起こり、菅おろしと呼ばれる政局が一気に動いた直後の週末でもあって、そのあたりの真相や評価など聴けるのではないかという興味を僕は持っていた。

結局のところその興味は満たされたのだが、その後スッキリとしたのかといえばそういうわけでもなく、逆にからっぽな気分に覆われてしまう結果になった。使い終わったシャンプーのボトルとか、風にヒラヒラと舞っているスーパーのビニール袋のような、きっとそれは充実感とはほど遠い気分である。それが一体何なのか週末の間自分なりに考えたことを述べるのが今日のブログの趣旨である。そして最初に断っておくけれど、いまだに結論など出ていない。だから今日のブログに結論はない。

まずはこの講演会の第一部について書いてみる。第一部は平野貞夫氏の講演である。流石に力強い言葉で時にユーモアを覗かせながら、世界の情勢から政局の動きまで解いていく。特に夏までに世界で起こるかもしれない3大危機として「ドル崩壊」「中国の崩壊」「中東の崩壊」を挙げ、菅内閣ではこれらに対処できないだろうと述べた。これにはまったく賛成だ。特にドルと中東の崩壊は猛烈なスピードで進行しているのが目に見える。そして日本政府はそれを指をくわえて見ているだけである。或いはアメリカの顔色を窺っているだけである。

そして政局の話に移る。マスコミへの批判、政倫審への批判、そして菅政権への批判と続く。特に政倫審に関しては議長を務める土肥隆一議員(民主党衆議院議員)への批判があって、その真偽は定かではないけれど納得のいくものが多かった。

そして例の16人の会派離脱劇で裏方を演じたのは自分である、との話が出た。最初は一人二人と話をしていたのが、何時の間にやら16人も集まってしまい、会派離脱のための手続き等、以前国会職員であった経歴を生かして指南したとのことだった。また彼らの行動を小沢一郎に伝えたのは16人の決起が発表される2〜3日前で、小沢はそれを聞いてまあ仕方ないなというニュアンスの返事をしたとかしないとかで、金曜日に日本自由報道協会で予定されていた小沢会見のキャンセルに繋がることになる。

結局平野氏の講演の結論は、民主党がもはや国民の代表となっていないことが不安定さを生んでいて、マスメディアの偏向した報道姿勢が大きな弊害となっていることも付け加えた。

そして第2部となり、中村議員と平野氏との対談が行われ、16人の会派離脱事件に関しての話も引き続き行われた。そこで中村議員が自分たち参議院議員にはまるで何の相談もなかったことや、小沢一郎が彼らの決起の2〜3日前にこの件を既に知っていたことについて多少の不快感のようなものをもっているように見えた。

しかし中村議員は、彼ら16人が会派を離脱しながらも党籍を残すところにこの問題の意味があると指摘し、16人としては新党を作った方が政党助成金も出るし政局に対する影響も大きくなるというのに、そうしないことは民主党を建て直そうという意思の表れだろうと付け加えた。彼らは比例区選出の議員とはいえ、皆それまでの県議や市議などを辞して立候補してきた人々であり、比例区だからといって軽く見るものではないとも述べた。*3

中村議員は多分、彼ら16人の行動に軽い違和感をもちながらも支持しようという気持ちなのだろう。そして実は僕も同じ気持ちなのである。つまり、彼ら16人のとった与党議員でありながら予算案を人質にとるという行為は前代未聞であり、いくら何でもそれはちょっとどうよと思いはするけれど、行動を起こすこと自体にはシンパシーを感じるのである。

最終的にはこの16人は彼らが宣言したとおりに行動すれば予算関連法案を精査することになる。それがマニュフェストと外れた方向にあるとすれば、彼らは法案に賛成しないと明言している。彼らが法案を通せば菅執行部は大手を振ってマニュフェスト遵守を宣言できるし、法案を通さなければ16人は離党することになるだろう。その際、菅総理が総辞職ではなく解散を選べば、16人としては新党を作って選挙資金を集める余裕もなく殆どが討ち死にすることになる。

どのみち解散すれば民主党議員は半減以下となるだろうから、それは想定内なのかもしれないが、せっかく党に反旗を翻してまで行動を起こしたのに何とも儚い運命となる。離党はせず別会派を作ることのツケを払わされるだろう。

一方で現在の中東情勢などを見るにつけ、大衆が社会をを変える運動が世界に拡散しつつあるように思えるわけで、日本だけが政界工作等で変化を遂げることは時代遅れなのではないかとも思うのである。例えば小沢一郎への支援デモというものが既に何度か全国で行われ、それは政治団体が主催したものではなくインターネットを見た一般の市民が自然発生的に集まり行ったもので、極めて民主的なデモのようなのである。

こうした流れを彼ら16人が上手く利用出来ていたのなら評価はまるで違ってくる。多分その点が最も残念な部分なのである。きれい事を言うようだけれど、菅政権のいびつな弾圧に対して政局工作で反発することは、即ち菅政権のレベルの低さに自ら合わせてしまうことでもあるわけだ。

この日の講演はその後来場者との質疑応答になり、平野氏は東京へ戻らなければならず一足先に会場を後にし、残った時間は中村議員が一人で質疑に応答する展開になった。予算等財政に関して流石に淀みなく受け答えをし、取り調べの可視化に関しても経緯を丁寧に説明し、こういったところはやはり若い最前線の国会議員という印象だった。ただ一点、取り調べの全面可視化については進展はあるというものの、その進むスピードがあまりに遅く、こうしている間にも冤罪は生じているかもしれず、何よりもスピードが優先されるのに丁寧にやりすぎなんじゃないか疑問を持ったことは自分の備忘録としてここに残しておこうと思う。

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*1:写真はトニー四角がiPhoneで撮影し中央を拡大したもの

*2:一方で中村議員は反小沢の筆頭である前原外務大臣とも近い

*3:TBSラジオ政治記者武田氏は、比例区選出の1年生議員はどの報道陣もノーマークで全くの盲点であり、彼らが普段どのような仕事をしているのか報道されることはないと言っていた