小沢一郎党員資格停止処分提案にみる民主党執行部の思考停止状態

本当はエジプトの市民蜂起とその後の軍のいかさまぶりを書こうと思ったのだが、民主党執行部が小沢一郎党員資格停止処分にする提案を行うことを決定したというのでそれについての感想を書こうと思う。

小沢氏の党員資格停止を提案 民主役員会で決定 (MSN産経ニュース)
民主党は14日、菅直人首相(党代表)が出席し、政治資金規正法違反の罪で強制起訴された小沢一郎元代表の処分問題を議論する役員会を国会内で開いた。岡田克也幹事長は、裁判が終わるまで党員資格停止処分とするよう15日の常任幹事会に諮ることを提案し、了承された。
枝野幸男官房長官は記者会見で、提案された党員資格停止処分について「党としてしっかりけじめをつけようとする姿勢は、国民から一定の理解を得られる」と述べた。
役員会に先立ち、小沢氏に近い衆院1回生でつくる「北辰会」の福嶋健一郎衆院議員ら約20人は、岡田氏を国会内に訪ね、処分は党内結束を乱すとして平成23年度予算審議中は避けるよう申し入れた。岡田氏は「検察審査会の強制起訴も通常の起訴と同じだ」と述べ、処分はやむを得ないとの認識を示した。

(参考)「党の品位を汚す行為に該当」 民主役員会の小沢氏処分案全文

もう少し詳しく書いているのが中国新聞である。

「小沢切り」尻すぼみ 3分の2確保を優先中国新聞
民主党が強制起訴された小沢一郎元代表への対応をめぐり、ようやく党員資格停止の処分方針を打ち出した。一段と厳しい離党勧告に踏み切る構えを見せていた菅直人首相の「小沢切り」路線は尻すぼみに終わった格好。2011年度予算関連法案を衆院で再可決する3分の2勢力を確保するには、小沢氏支持議員の造反を避けねばならないとの判断を優先させた結果といえる。
だが再可決の鍵を握る社民党の協力は見通せない。10日の小沢氏との会談でも離党を迫ったはずの首相。その「有言不実行」ぶりは、内閣支持率のさらなる下げ要因となりかねない。
14日午後の民主党役員会。「党に功績のある方なので私もつらいところはある。しかし公党としての責任を果たすために提案したい」。岡田克也幹事長は、こう語りながら党員資格停止の提案書を配った。
小沢氏に近い参院平田健二幹事長や羽田雄一郎国対委員長は「起訴と強制起訴は違う」と処分への反対論を展開した。
ただ、これに同調するとみられていた輿石東参院議員会長は、個人としては反対だが決定には従うとの立場を表明。反小沢の急先鋒せんぽうである仙谷由人代表代行も「岡田氏の説明は正しい。同意する」と提案了承の流れをつくり、最後に首相が「幹事長提案の方向で了としたい」と首相がまとめた。
処分の中では最も軽い党員資格停止を、多数決もない「あうんの呼吸」で決めた役員会。党幹部は「他の人だったらもっと重かった。小沢氏だからこそあれで済んだ」と、党内対立の激化を回避するための苦肉の策だったことを明かした。
除籍(除名)に直結する離党勧告を恐れていた小沢氏サイドにとって党員資格停止は「受忍できるぎりぎりのライン」(周辺)。ここを落としどころとするために、ポーズとして処分反対の声を上げてきた節もある。
14日昼すぎには、小沢氏を支持する衆院1回生議員でつくる「北辰会」メンバー約20人が国会内の幹事長室に押し寄せ、処分反対の申し入れ書を提出したが、役員会後は動きをひそめた。輿石氏は、小沢氏側に電話し「こういうことになりました」と報告した。
当の小沢氏はマイペースそのもの。14日の講演では「聖徳太子の十七条憲法第1条は『和をもって貴しとなす』だ。最後の第17条には、独りで物事を決めてはならないと書いてある」と首相を暗に批判した。この後、女性議員約10人からバレンタインデーの贈り物を受け取り、開封に手間取ると「力も衰えている…」と軽口をたたく余裕も見せた。

同じ件を扱っているのだが、民主党執行部の馬鹿さ加減がわかるのでロイターの記事も張っておこう。

民主党の小沢氏処分、国民から一定の理解得られる=官房長官 (REUTERS)
枝野幸男官房長官は、民主党が14日午後の役員会で、強制起訴された小沢一郎元代表を裁判が終わるまで党員資格停止処分とするよう常任幹事会に提案することを決めたことについて「党として一定の処分を行う方向で、しっかりけじめをつけようとの姿勢に立っていることは、国民からも一定の理解が得られると思う」との認識を示した。
党内でこうした処分に反対する意見があることに対しては「党のしかるべき機関で手続きを踏んだことで、全体として、それを踏まえた対応をしてくれると確信している」と語った。午後の会見で述べた。

枝野官房長官は、小沢一郎党員資格停止処分にすることで「国民から一定の理解」が得られ、反対派からも「党のしかるべき機関で手続きを踏んだことで、全体として、それを踏まえた対応をしてくれる」と確信しているというわけだ。何ともおめでたい話である。

まだ小沢一郎党員資格停止処分を15日の常任幹事会に提案する、というところであって決定されたわけではない。常任幹事会でどのような結論が出るのか定かではないけれど、普通に考えれば党執行部が正式に提案してきたものを常任幹事会が覆すことが出来るのかどうか大いに疑問である。つまりは小沢一郎の党員資格は停止される確率が高いだろう。

前ふりが長くなってしまったけれど、今日のブログはこの執行部の決定がどれほど日本の民主主義の発展を阻害するものであるか述べるのが目的である。それは小沢一郎という政治家を擁護するものでもないし、逆に民主党を貶めて自公政権がマシだということでもない。民主党はこんな事やっている場合ではない、という意見も尤もだけれどもここで述べるのはもっと基本的なことである。

約2年前に小沢一郎の秘書である大久保氏がいきなり逮捕された、所謂西松事件に遡る。この事件はその後陸山怪事件へと発展し、これら事件に関係したとされる大久保氏ら二人の秘書と元秘書だった石川衆議院議員への取り調べや起訴という結末となった。その結果、当時民主党代表だった小沢一郎は代表の座を退き、政権交代を為し後も政策決定権を持たない幹事長という身分に甘んじることになる。民主党きっての実力者である小沢一郎が排除された形で鳩山政権は崩壊し、次に菅政権という怪しげな政権が誕生してしまい現在に至るわけである。

東京地検特捜部は長い時間と予算と人員を割いたこの小沢一郎案件を最終的には不起訴とした。しかし検察審査会という謎のベールに包まれた審査会が強制起訴を決めた。とは言っても特捜部が不起訴とした案件を今更新たな証拠もないままに裁判に突入させてみたところで、これを有罪と出来る根拠は極めて薄弱である。巷間言われているように、小沢一郎は無罪となる確率が高い。(その一方でこれが政治的策略であるとすれば有罪はあり得るのだが)

こうした特捜部と小沢一郎との間の一種の戦争状態のおかげでどうなったか、と考えると色々と気が付くだろう。つまり、もし特捜部が西松事件を始めなかったら今の日本はどうなっているのかを考えるわけである。

2年前の政権は麻生太郎首相率いる自公政権だった。漢字は読み違えるし連夜ホテルのバーで飲んでいると言われた麻生の支持率は低く、景気も回復せず、唯一の功績といわれるエコポイントだって一部自動車メーカーや家電メーカーだけを優遇し、その財源を赤字国債で補うことに疑問を持つ国民も多かった。小泉=竹中改革以降開いた貧富の差を目の当たりにした国民はもういい加減にしなければならないと考えていた頃である。

麻生政権末期となると政権の支持率も墜ちて、反対に民主党の支持率は上がりだした。つまり、そのままいけば民主党政権が誕生し、代表だった小沢一郎が総理大臣となる可能性が高かったのである。

しかし小沢は西松事件に巻き込まれ代表の座を退かなければならなくなった。特捜部は充分な証拠もないままに連日マスゴミにリークをくり返し、いかにも小沢一郎は大悪人であるかのように恣意的に報道させたのである。マスゴミは世論を誘導し連日悪意を持って小沢辞任を報じ続けた。これは現在も続いている。

もし特捜部が西松事件などを起こさずにいたら、その後の日本の政権はは今とはまるで違っていた。つまり検察が日本の総理大臣を恣意的に替えてしまったわけである。これは明らかに民主主義の理念から外れた行為である。

この顛末から何がわかるのかというと、日本国憲法で規定された三権分立が侵害され、その結果三権のうち司法のみに突出した権力(スーパーパワー)を持たせてしまったということである。本来、立法府、行政府、司法府と三つに分かれた三権のうち、司法府に次代の総理大臣となるはずの政治家を証拠もなくパージ出来るスーパーパワーをもたせてしまったわけである。

三権は本来対等であり分離して独立するからこそ相互に監視でき、権力の暴走が食い止めることが出来る。しかし一局が他を圧倒するスーパーパワーを持つと三権部立は権力の暴走を食い止める縁(よすが)に欠けてしまうことになる。スーパーパワーを持つ権力である司法が暴走したらもはやそれを止めることは他の2局には出来ない。司法が気に入らない人間は次々と逮捕投獄される可能性が出てくるわけである。これでは警察国家であり法治国家ではない。

政治家であればその危険性に真っ先に気付かねばならない。しかし民主党執行部がやっているのは独走する司法への迎合であって、それは警察国家へと突き進んでいく暗黒の恐怖に満ちている。小沢一郎が好きとか嫌いなどといった低レベルの話ではないのである。

今回の民主党執行部による小沢一郎党員資格停止処分への提言というものには、そうした立法府や行政府の危機感がまるで反映されていないものである。枝野官房長官が言うように、国民に納得がいく決定とはほど遠いばかりかむしろ逆なのだ。

政治家は自らの政治活動の自由を守らねばならない。なぜならば政治家とは多くの有権者たちの選択の結果だからである。政治家が自らの政治活動を守ることは、有権者から託された政治活動を保証するものである。特捜部の根拠のない捏造リークを有り難がって報道していたマスゴミが作り出した国民の声とやらに振り回され、自らに降りかかっている危機に気づきもせず、司法のスーパーパワーを放置してしまう民主党の反小沢議員達の鈍感さと軽さは救いがたい。逆に司法のスーパーパワーの突出に乗じて世論からの支持を得ようと画策している。

エジプトでの市民蜂起を見てもわかるように、もはや世界中の国民は体制側のメディア報道を鵜呑みにしない。日本人も程度の差はあれ段々とマスメディア企業の報道から離れていっている。そうしたマスゴミに作られた世論などに迎合しようとする民主党の現執行部につける薬はない。思考停止状態と言うより元々低脳のクズなのだろう。

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