政権交代2.0

激動の一週間だった。
鳩山首相が辞意を漏らしたと伝えられた直後、小沢幹事長と一緒に辞任、そしてあっという間に菅新総理が誕生した。このあたりの手際の良さ、尋常ではない。

鳩山首相が辞任に至った動機は沖縄普天間基地移設問題が国民の支持を得られなかったことが主な原因とされているし、本人もそのように会見で述べている。また小沢幹事長にも辞任を求めた理由を「政治と金」と言う問題で民主党の信用が地に墜ちたことへの反省を込めて、とも言う。

果たしてそうなのか、と誰もが思う。
確かに鳩山政権は普天間基地の移設問題で、当初約束していた県外国外移設を達成することはならなかった。しかし辺野古周辺への移設という結果は自民党時代に決められていた所謂「現行案」であって、鳩山政権でなくともこの結論になっていた可能性は高い。

また小沢幹事長の「政治と金」問題も東京地検特捜部が渾身の力を振り絞って捜査したにも関わらず、証拠も何も出ず最終的に不起訴という結論が出た。どちらかというと鳩山首相の「政治と金」問題の方が相続税の未払いがあった点で問題だろうと思う。

しかしマスゴミとも呼ばれるマスメディアは推定無罪の原則をねじ曲げ、または些細な問題を煽って鳩山政権を執拗に攻撃した。その結果鳩山政権の支持率は遂に20%を切り危険地帯へと突入し、反対に自民党みんなの党などが支持率を上げ、来月にも参議院選挙が行われるという切羽詰まった日程上、何らかのアクションをとらなければ民主党参議院選挙で惨敗必至という状況であったことも確かである。

そこで鳩山・小沢のダブル辞任という挙に出たことは(個人的には残念だったけれども)英断だったと思う。最新のマスメディアの世論調査で菅新首相の支持率は6割を超え、民主党の支持率も自民党を10ポイント突き放すほどあっさりと回復した。菅新内閣の主要閣僚は殆どが変更されず、普天間基地問題も鳩山内閣の決めた辺野古移転案を引き継ぐと明言しているのにも関わらず、ツートップを替えるだけであっという間の支持率回復には驚くほかない。

さて、鳩山が小沢を辞めさせたのか、或いは小沢が鳩山を辞めさせたのか、その辺りは情報が錯綜していて真実は未だに藪の中である。しかも内閣の側近である立場の人がそれぞれにどちらかの理由を主張しているほどバラバラだ。そうなるともはや真相は誰にもわからない。今更鳩山或いは小沢本人が出てきて釈明したところで、それすら信じることも出来ないだろう。要は今目の前にある真実だけを見て判断せざるを得ないということだ。

そして菅新内閣の閣僚人事が週末から今日にかけて朧気に現れるようになってきた。その人事は基本的には鳩山内閣を踏襲したものであるが、しかし官房長官と幹事長に仙石、枝野、財務大臣も野田といった反小沢色の強い人を起用し、鳩山総理が責任を背負った普天間基地移設問題で本来なら共同責任を負うべき岡田、前原、北澤らも留任となった。これらの留任組も反小沢閣僚であり、菅新内閣自体が反小沢内閣といった様相を呈している。

この人事に不快感を持つ人は思いの外多いようで、特にネット言論の中ではこれまで民主党支持だった人々の菅離れが加速しているようである。僕の場合も、小沢一郎の世界観を中心に民主党を見ていたこともあり、反小沢議員による組閣に対しては不快感を持っている。しかしながら、来る参議院選挙に勝つためには最良の選択であろうとも思うのである。

なぜならば世論を煽るマスメディアを暴れさせないことを主眼においた場合、この人事は功を奏することになるだろうからである。マスメディアにとって反小沢議員を叩くことは、また小沢派に力を持たせることに繋がることになる。だから叩きにくい。また、彼ら反小沢議員の主張が自民党の一部やみんなの党などと相通じるものがあるおかげで、彼らの政策も強く叩けない。こうなると後はスキャンダルしかないだろうが、もうあっという間に選挙に突入する時期であり、現時点でそのような報道をすることは極めて政治的であると捉えられ、民主党を貶める工作としては得策ではなかろう。

つまり、あくまで参議院選挙を目的としてみた場合、鳩山・小沢のダブル辞任は「詰み」の状態である。マスメディアが昨年の西松問題から延々と仕掛けてきた民主党への謂われのない攻撃も、ここであっさりと全面敗退となる。まるでオセロゲームの最後の一手で形勢が大逆転するかのようなことになっているのが、今現実に目に見える変化だろう。

昨年の衆議院選挙で民主党は圧倒的な世論の支持を得て300議席以上を獲得し政権交代を達成した。歴史的快挙である。そしていよいよ参議院の番である。これを制覇して漸く次のステップに踏み込むことが出来るわけだ。その結果こそが政権交代の完成形であろう。つまりは政権交代2.0である。それまではここの政策如何よりも政局が優先されるべき、という考え方が民主党執行部にはあるのだろうと思う。

但し、そのためにここまで反小沢派を重用せざるを得なかったことは、民主党内に時限爆弾が設置された結果となる。菅新総理の任期は一応は9月までとなっている。9月には一応代表戦が行われる日程である。そこで何が起こるかで将来に変化が生じる可能性がある。

僕は、そんなわけで、反小沢議員ばかりの菅新内閣を生暖かい目で見ている。決して熱い目ではない。田中眞紀子が代表選を打診されて言った言葉「どうせ参院選挙の管理内閣なんだから」という言葉はかなり意味深である。とりあえず目の前の参議院選挙で勝利すること。まずはそれが菅新内閣の使命であり、参議院選挙の結果次第で、つまり政権交代2.0が成就するか否かで再び乱世がやってくるのかもしれない。

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