長崎知事選挙と町田市長選挙で逆説的に日本人の政治的マチュア(成熟)度をみる

2月21日に行われた長崎知事選挙で、自民党公明党の支援を受けた無所属新顔で元副知事の中村法道氏(59)が、民主、社民、国民新の与党3党が推薦した元農林水産省改革推進室長の橋本剛氏(40)ら無所属新顔の6人を大差で破り、初当選を果たした。

その開票結果はここを見ていただければ詳しくみることが出来る。投票率が60.08%で、中村氏316.603票、橋本氏222.565票、である。その差約10万票。投票者数が約70万人なので思いの外、大きい数字である。

また長崎知事選挙と同じ日に東京都町田市で町田市長選挙も行われた。無所属で現職の石阪丈一氏(62)が、無所属で元首都大学東京教授の秋山哲男氏(61)=民主、社民、国民新、生活者ネット推薦ら新人4人を破り再選を果たした。昨年の政権交代後、都内の市長選で民主が推薦する候補が敗れたのは初めて、ということである。

その開票結果もここで見てみよう。投票率50.02%で、石阪氏80.299票、秋山氏48.435票、その差は約32.000票である。これはとにかく圧倒的な大差だ。

そしてテレビや新聞などのジャーナリズムは、鳩山首相小沢幹事長の政治と金の問題が民主党への逆風となって、その結果大事な選挙を落とす原因となったと盛んに報じている。政治と金の問題を必要以上に煽っていたのはこれらのメディアなのだが、自分たちが一生懸命煽りに煽った結果、このような選挙結果になったということで鼻高々の様子である。

しかしここで少し立ち止まって考えてみると、何かおかしな違和感を感じることも事実である。その違和感とは、昨年の衆議院選挙で、あれほど圧倒的な勝利を収めた民主党が、政治と金といった問題でここまでの逆風に晒されることが納得できない不思議な気持ちである。

確かにマスメディアは「政治と金問題」や「小沢一郎は推定有罪である」といった風説を必要以上に煽ったし、その煽りを受けてついつい踊ってしまった人々も多くいたろうと思う。しかし、東京地検特捜部に標的にされ、連日誹謗中傷を受けた小沢問題の期間中も、民主党支持率は微減する程度で決して大きく落ち込んだわけではない。つまり、日本人はその程度のことで、民主党が掲げる政策を見捨て、またあの自民党に政権を戻そうなどと考えていないはずなのだが、という確信が僕には何となくあったわけである。

ただ僕の確信など、理論付けもない単なる憶測でしかない。だから口にするのは憚られていたのだが、ここでその憶測を立派に証明してくれたサイトがあったので以下に紹介する。

【速報】長崎県知事選・町田市長選の分析(暫定→詳細) 日本情報分析局

ここでは昨日の長崎知事選挙と町田市長選挙を分析し総括しているのだが、その結論は以下の通りとなる。

【選挙結果について】

1)長崎県知事選は、『実質的には“自民党の敗北”』である。

2)町田市長選は、『実質的には“自民党の辛勝”』である。

3)民主党が現在抱える問題、地方選の特徴を加味すると、
  長崎県知事選は『実質的には“自民党の大敗北”』、
  町田市長選は『実質的には“自民党の敗北”』となる。

この結論を読んでにわかに信じられない気持ちをもたれる方も多いだろう。なぜならあまりにもマスメディアが報じる分析と正反対であるからだ。

しかしこのブログにある説明をよく読んだ後で、この表を見ると、長崎知事選挙では確かに自民党は得票数を減らしていて、民主党は微増しているのである。町田市長選挙では自民党は得票数を大幅に伸ばしているのだが、一方の民主党自民党ほどではないが得票数はきちんと増加している。つまり、民主党は得票数を減らしたわけではなかったのである。

つまりどちらの選挙も、自民党系の候補が勝ったのは浮動票が自民党に有利な方向へシフトしただけであり、特に長崎では積極的に自民党系候補者を選んだわけではなかったということだろう。何せ自民党系候補者への得票数は前回に比べて減少しているのである。一方の町田市長選挙では、民主推薦の秋山てつお氏と、鳩山友愛塾(鳩山首相主宰)出身の宮本聖士氏が立候補したおかげで、民主党が二分された戦いとなったという特殊事情があった。この対立する民主党系候補二人の得票率の合計は前回比14%増となっていて、ここでも実は民主党はそれほど負けていないのである。

参考 : 町田市長選 候補者の横顔 毎日.jp

それでいてどちらも民主党系候補が負けたのは、民主党の選挙下手な面が出たのではないか、と僕は思っている。選挙準備期間から選挙戦において、小沢幹事長が検察との戦いを強いられて、実質的な指揮をとれなかったことが原因かもしれないし、長崎での候補者が元官僚であったことが嫌われたのかも知れない。町田では分断選挙となったことは響いたろうと思う。

そこで2月22日の鈴木宗男衆議院議員ブログにおける分析が面白い。

 私の知る長崎県民の人からの報告では、民主党推薦の候補者は知名度もなく、目つきがきつく、40代にしては若さが感じられなかったとのことだ。あわせて私は、候補者の選び方に問題があったと考える。
 昨年8月の選挙で民主党は、官僚政治の打破を訴え、政権交代できた。その民主党が官僚を候補者にした。しかも、見るからに受けの悪そうなタイプの男である。そもそも、スタートの段階で民主党長崎県連は大きな判断違いをしたのである。
 鳩山首相小沢幹事長に全て責任があるやの話は、的外れである。
 「政治とカネ」の問題が全く影響しなかったとは言わないが、何よりも候補者の発信力、存在感が、一人を選ぶ選挙ではモノを言う。

今さらいっても仕方ないのだが、ムネオ議員によると長崎知事選挙では民主党県連による候補者選びから問題があったように思える。つまりマスメディアがいっているように、ここ数ヵ月間煽りに煽った「政治と金問題」などで有権者は投票しなかったように思えるのである。

そうは言っても、民主党系候補者が敗北したことは事実であるので、民主党は冷静になって今回の敗因を分析するべきである。一つ確かなことは、マスメディアのいう「政治と金問題」のせいで、有権者民主党への投票を控えたという事実はかなり根拠があやふやである、ということだ。きっとそんな理由ではなく、もっとテクニカルな選挙戦術の問題だろうと思う。

また有権者東京地検特捜部対小沢幹事長という報道の馬鹿騒ぎに対して、思いの外冷静に対処したのではないか、という気がしている。50年以上も続いた所謂55年体制を昨年の選挙で終わらせた国民である。成熟していないはずはない、と思う。

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