帝国の逆襲、つまり既得権益者たちの逆襲

滅多にテレビなど見ないのだが、日曜日の朝台所で珈琲をいれていると、つけっぱなしにしたテレビから関口宏が司会をするバラエティショーの音声が聞こえてきた。聞くともなしに聞いていると、その週にあった重要と思われるニュースを紹介し、それに政治評論家たちがコメントをつけている。そしてそのコメントがあまりに酷くて日曜日の朝から気分が悪くなってしまった。

鳩山由紀夫及び邦夫兄弟への母親からの政治資金提供問題や、米軍沖縄基地の普天間飛行場移設問題、そして小沢民主党幹事長の中国韓国訪問使節団の件などについてこれでもかというほどの批判を展開する。

批判自体は全く構わないし、大いにやるべきだろうと思う。しかし彼ら政治評論家の言葉の内容そのものがあまりにお粗末で、物事を一方的に解釈して、その歪んだ解釈にのみ立脚した批判を展開している。彼らの言葉の先にあるものは鳩山政権早期退陣を促すというものばかりである。

ふと思い立って政治などには関わりのない友達のブログ等を見て回ると、政治に関連したエントリーが増えていた。しかしそこで展開されている論旨がこの偏向したマスコミが垂れ流している汚物のような論調の影響を受けているものばかりである。普段会って話をすると聡明で公平な人達ばかりなのだが、偏向した報道の嵐に晒されて、自分でも知らぬうちに影響を受けつつあるようである。

このような事態を見てすぐに思い起こす事件は三つある。細川政権崩壊のきっかけにもなった佐川急便からの政治献金問題、小泉政権時代の郵政選挙フィーバー、そして今春の小沢一郎秘書逮捕という所謂西松事件である。どの件も現時点で総括すると内容のない空騒ぎに過ぎないのだが、これら全てに共通するのは、この国のマスコミが何らかの方向を示し合わせた如く一斉に騒ぎはじめると、やがて国民がその思惑にまんまと乗っかってしまうという事態である。

これは報道フィーバーと呼ぶのだろうかと言葉の定義を考えてみると、そんな生易しいものではなく、報道によるファシズムと呼ぶのが相応しい。大衆を扇動してある目的を達成しようと画策するという行為そのものがファシストの手法である。

ニュース映像などでムッソリーニが大群衆となった聴衆を前に熱弁を振るう姿を見たことがあるけれど、現在のファシストは自ら群衆に演説などしない。テレビや新聞で日夜偏向報道をし続けるのである。ムッソリーニと現在の日本のマスコミとは執る手法は違えど目的は同じである。つまり大衆陽動である。

先に三つ挙げた事件、細川政権と佐川急便献金疑惑、郵政選挙フィーバー、西松事件のどれをとっても、マスコミは全力で国民を煽り続けた。そして多くの国民はいつしかマスコミの言説に飲み込まれていく。その結果はどれもこの国の将来に暗雲をもたらすものばかりだった。

要するにマスコミが騒げば騒ぐほど国の将来が損なわれてきたのである。マスコミが騒ぐ目的はつまり日本という国を正しい方向に導くことではなく、ましては権力の監視などでは毛頭なく、多くの国民にはまるで関わりのないものを守り温存するためのものだろう。それは既得権益という魔物で、ここには巨額の税金投入による富の力と、それに関わる権力が存在するのである。

そしてマスコミは既得権益を守るための仕掛けを着々と実行している。もはやなりふり構わずと言った方がよいぐらい一心不乱に記事を捏造し、事実を歪曲することに明け暮れている。これに騙されない人も多いけれど、騙されてしまう人はもっと多い。

今でも小泉政権郵政選挙の時を思い出すのだが、ろくに内容を審議もせず無理矢理に法案を遠そうとした小泉政権のやり方に誰もが嫌悪感を持った。郵政民営化法案が参議院で否決されたとき、これで法案が廃止になり再びじっくり時間をかけて決めてくれるのだろうとホッとした。しかし小泉首相(当時)は国民の意見を聞きたいと理屈をつけ衆議院を強引に解散し、劇場型選挙に突っ走ってしまったのである。

この時、小泉にとって最も大きな援軍になったのはマスコミたちで、郵政民営化法案に異議を唱えたばかりに自民党公認から外れた候補者と彼らを討つために送り込まれた刺客候補たちを面白おかしく、しかし圧倒的な物量で連日報道し続けたおかげで小泉フィーバーが起こり、自民党が300議席を超えるという事前の予測ではあり得ない展開を見たのである。

小泉が衆議院を解散したとき、僕はネットの論説等を読んで、これは小泉敗北だろうと思っていた。勿論僕の予想は外れた。それは僕が自分の論旨とそれを裏付ける記事ばかりを読んでいたからで、マスコミによる大衆煽動の凄まじさを計算に入れていなかったからである。圧倒的な物量投下によるマスコミ煽動は、論旨の正否をねじ曲げてしまうのである。

そして今あのときと同じことが鳩山政権に起きようとしている。鳩山政権がこの攻撃をかわせることが出来るのかどうか予断は許さない。何よりも鳩山政権の脇が甘すぎる。とくに官房長官が役立たずに過ぎて、これらマスコミのコントロールがまるでなっていない。唯一の救いは細川政権の時とは違って、民主党単独で300議席以上あるという安定多数を手にしている点である。勿論民主党は常に分裂の危機を抱いているのだが、せっかく政権交代したばかりなのに分裂させようとするバカはいない。

僕はこのブログを読んでもらえれば分かるように、ずっと政権交代を応援してきた。また政権交代後の敵はマスコミと官僚だろうと予測もしてきた。それがこうして現実のものとなり、しかも現政権を揺るがそうとする力は予想したよりも大きい。そして鳩山政権にそれを正面から跳ね返す力はあまりないように思える。安定多数の力を背に、鳩山政権は存続するだろうけれど、その求心力は日に日に弱まることが今後予想される。

9月16日に発足した鳩山政権は12月24日で政権発足100日を迎える。100日というのは離陸のための準備期間であり、露骨な批判を控えようと思っていたのだが、今は政権交代をより確実なものにするために、この政権の灰汁を出さねばならないと思い始めている。勿論僕などに出来ることは限られていて、このブログで指摘を行う程度にすぎない。しかしもう少しこのブログを続ける意義はありそうである。