沖縄についての備忘録

最近ラジオではポッドキャストという番組配信を行う番組が増えている。これは番組を電波ではなくインターネットを使って配信する仕組みで、リスナーはiTunesなどのソフトを使って配信された番組を聴くことが出来る。

この方式の利点は例えば関東圏でしか放送されない番組を関西など他の地方で聴くことが出来ることであり、インターネット環境さえあれば世界中どこででも聴くことが可能なわけである。逆に不利となる点はコマーシャルを入れ辛い点で、商業採算ベースに乗りにくい点であると思う。

そんなポッドキャスト放送を幾つか聴いているのだけれど、今朝TBSラジオのアクセスというポッドキャスト番組を聴いていて、沖縄についてちょっとメモをしておきたいことが述べられていたのでここに紹介する。

ここでは新党日本田中康夫衆議院議員国民新党下地幹郎という沖縄選出の衆議院議員の二人が、沖縄の現状と普天間基地移設問題について意見を述べている。

アクセス特集・田中康夫+下地幹郎・1109をダウンロード

まず驚いたのは、沖縄県民で米軍基地関連で就業し生活している人の割合が5%ほどでしかないということである。

もはや誰もが知っているように、在日米軍の基地施設の殆どは沖縄に集中している。これは国土面積の0.6%に過きない沖縄県に全国の米軍施設の約25%が存在することであり、米軍専用施設面積では全国の約75%となる。沖縄県に限って言うと、県土面積の約10.7%が米軍基地で沖縄本島では面積の約19.3%の割合を占める。(数値は1997年のデータ)

参考:沖縄の米軍基地の現状と課題

戦後ずっとこうした米軍基地を受け入れざるを得なかった沖縄では、国からの補助金であるとか米軍基地関連雇用によって米軍基地存続派が多くいると僕は思っていた。しかし下地議員によるとそれは5%ほどで、今の沖縄は米軍基地がなくなってもそれほど困らないだろうと言うのである。確かに30年ほど前なら基地に依存していた人の割合はもっと多かったらしいのだが、現在では全くそんなことはない。

この事実は沖縄に於ける米軍基地問題沖縄県民の意向を無視した政治問題であることを示す。なぜならば大多数の沖縄県民にとって、もはや生活の糧でもなくなった米軍基地とは「必要悪」から「必要」という文字を除いたただ危険で五月蠅いだけの存在だと思われるからである。

そして今、普天間基地移設問題が大きな問題としてクローズアップされている。

参考:普天間基地問題
参考:普天間飛行場

オバマ米大統領がこの週末あたり日本に立ち寄りそうだということで俄にこの問題がクローズアップされ、鳩山政権が県外或いは国外に移設しようというコメントを発し、アメリカがそれに反発し、閣僚の一部が辺野古への移設や嘉手納基地への統合などの私案を出し、さらにアメリカが反発しという循環に陥っている。

しかしこの騒動において目に付くのは、橋本内閣の時にアメリカと密約したとされる普天間基地移設問題が、政権交代した途端にマグマのように沖縄で吹き出した事実である。特に今月8日に宜野湾市の海浜公園で開かれた県民集会には2万人以上が参加し政府の在沖縄米軍基地問題を糾弾した事実はとても大きな意味を持つ。

長い間本心では米軍基地問題に対して怒りを持ちながら、沖縄独特の圧力によってその感情を封印してきた県民たちの本音がいよいよ沸騰し始めている。ちょうどベルリンの壁が崩壊して20年ということでテレビなどで記念番組をやっているのだが、その時の東欧の姿がダブって見えるというのは言い過ぎだろうか。

鳩山政権は革命的政権ではあるけれども合法的に選ばれた政権である。発足の時期が今年の9月という、それ以前の政権が予算も方針も全て決め、国の事業の全てが動きだした後に成立した政権である。だから鳩山政権としては次年度予算を成立させて新しい事業が動き出すまで、前政権が動かしてしまったものを一旦踏襲しなければならない宿命を持つ。この在沖縄米軍基地問題もその一つである。

だからこの問題のとりあえずの結論は決まっている。多分一旦棚上げにし、来年度への宿題とすることだろう。だから現状維持だろう。実際に岡田外相はオバマ米大統領が日本に立ち寄った際には「普天間移設問題で踏み込んだ協議は行われない」との見解を表している。

一方で来年はいよいよ日米安保50周年であり、何か動かすにはとても区切りのいい年となる。

鳩山首相がこの問題を本当に解決するには日米安保の根幹から考え直さねばならないだろう。アメリカと友好関係を維持しつつ、在沖縄米軍基地を削減し、東アジアでの防衛力は維持しなければならない。そこには有形無形の圧力が存在し、ハンドリングをひとつ間違うと国家の存続さえも危ぶまれてしまう。その為には国民全体を巻き込んでの議論が必要だろうし、何もかも一気に変えるのは難しいだろう。

鳩山首相にそこまで踏み込む度胸があるのかどうかはわからないが問題は確実に存在している。そしてこの問題の解は、誰もが納得できるものとはならないし、明らかに不満足な立場ができるのである。それを分かって「トップとしての孤独な決断」ができれば凄いことだと思う。

僕の個人的な見解としては、この在沖縄米軍基地問題をみて、民主党政権がこの問題をきちんと受け止めようとしていることに好感を持っている。今までの自民党政権は表面上どっちつかずの対応をしながらも、その影では強引な移転に向けて地ならしをしていたのである。いかにも従米隷属なやり口だった。沖縄県民は地方独特の有形無形の圧力を受け、忸怩たる思いで事の推移を見守るしかなかった。しかし今、この問題はようやく大きな社会運動になるところまで来たのである。

先のTBSラジオの番組内で、田中康夫が滑走路が二つあるのに一つしか使われていない関西空港や、利用者があまりなく閑散としている神戸空港を使うことにして米軍基地を移転してみたらどうかと言ったら、自民党の町村前官房長官が「それでは関西の人が可愛そうだ」などと言ったと暴露している。それでは沖縄の人は可愛そうではないのかと突っ込みたくなるのだが、そんな発想の政治家がつい先日までこの国をドライブしていたのかと思うと背筋に冷たいものが走るのである。