15兆円経済政策は誰のため?

今月8日、政府は新たな追加経済対策の裏付けとなる平成21年度補正予算の財政支出を15兆円規模、事業規模は総額約56兆5000億円とする方針を固めた。その財源は10〜11兆円は国債発行で賄い、その内7〜8兆円は赤字国債となる。この経済対策によって景気効果があるのかどうかは不明だが、将来の財政がますます逼迫するのは確実である、というのが今日のブログの趣旨である。

麻生首相は会見で、景気回復後の「消費税を含む税制の抜本改革」の必要性をあらためて強調した。つまりこの経済対策は将来増税となって返ってくることが約束されている。それなのに国民的議論もなく一方的にこの政策は政府主導で決められようとしているのである。

ついでに書くとこのような政府の動きに対して、国民の反応は内閣支持率が28パーセントに微増するなど、訳の分らない状況に陥っている。国民の程度が知れる数字である。

さて、その追加経済対策の内訳を見ると、ハイブリッドカーに買い換え時の補助(5〜25万円)、小学校入学前の3〜5歳児への補助(一人当たり36000円)、省エネ家電購入金額の5パーセントを他商品購入費用に使えるエコポイントの創設、などが目玉となっている。

上記はマスコミ受けを狙った目眩ましのような政策だと思うのだが、雇用のための基金を作ったり、雇用調整補助金を振る舞ったり、交際費課税を軽減したり、という話を聞くと僕のような一般人は、これは何か怪しいのではないかという気になる。

これらとは別に、中小零細企業融資のため信用保証協会への資金の投入も活発になるという。僕は以前、零細企業の経営を見てきたことがあるのだが、この信用保証協会というものこそ、日本からゾンビ企業がなくならない最も大きな理由なのである。信用保証協会は中小零細企業が銀行などから融資を受ける際債務保証をし、融資を受けやすくすることを業務としている。

いずれ整理して書こうと思うのだけれど、その実態といえば、馬鹿経営者の持つ土地などの資産を担保に、統廃合されるべき企業に資金を投入し、低収益体質を保持させたまま生き存えさせる。結果その企業や業界はますます弱っていくのであるが、それら問題は関知しないのが信用保証協会という組織である。

なぜなら信用保証協会というものは経営判断というものをしない。保証枠というものが設定されたら、あとはその枠の中で債務保証を行うだけの組織である。信用保証協会の窓口の向こう側には正に天下ってきた役人たちが蠢いている。彼らに経営指南など出来るわけもない。枠がある、担保物件(これは実はとても怪しい)がある、書類が揃っている、ということでオーケーな訳である。

勿論信用保証協会の意義を疑っているわけではない。こういった制度が必要なのは分る。問題は彼らの仕事の精度が悪いということである。ずぶずぶに資金を注入させるだけで、融資を受けた会社はそのまま低収益な体質を維持する結果となることが多いのである。役人がやることなので、結果に対する総括がとても甘いのだ。

15兆円の経済対策によってGDPの2%を押し上げる効果があると政府はいうのだが、それは甚だ疑問であり、その理由は上記信用保証協会の例に代表される。

追加経済対策の15兆円は直接国民が手にするわけではない。一旦役人の天下った組織などにプールされ、場合によっては天引きされたあと、時代に即さない使われ方をする。やがてそのツケは将来増税となって国民が支払うことになるのだ。この経済対策のあと、役人は肥え太り、ゾンビ企業の経営者たちは相変わらず高級車を乗り回しているという結果となるだろう、と思う。そして虐げられた雇用人たちが、ますます低くなった所得からそれら資金を税金として、或いはその他社会サービス料(高くなった医療や交通費など)として支払うのである。


参考