フリージャーナリスト上杉隆氏の質問

3月24日夜の民主党本部内で行われた小沢民主党代表記者会見の質疑応答の終了間際にフリージャーナリスト上杉隆氏が質問を行った。

それまでの大手新聞記者による質問が代表職に留まるか否かについての想定内の質問ばかりだったのに対して、上杉隆氏の質問は全く異質な質問だった。

上杉隆民主党記者会見は日本記者クラブと違ってフリーランスのジャーナリストや外国人ジャーナリストにも開放しているが、政権交代後も開放し続けるつもりか?」

小沢一郎「何事もオープンであるべきだと思っている。そのようにしたい」

このときの質疑応答風景はここにあります。二つあるうちのPart2のビデオ、19分30秒あたりから上杉氏の質問が始まります。


ビデオを見た時の記憶だけで書いているので細かい会話の部分は違うと思うのだが、大体こんな内容だった。

この質問がこのタイミングでなされたことをずっと考えていた。未だに真意は正確には分からない。ただひとつ言えることは、その時民主党内の記者会見場にいた他のジャーナリストの大半が日本記者クラブに所属する会社から来た、いわば日本記者クラブの特権を享受する立場いる人々だったことである。

上杉隆氏の「ジャーナリズム崩壊(幻冬舎新書)」を読むと日本記者クラブが如何に腐りきっているのかということがよく分かる。政府は日本記者クラブで会見を行い、それを聞いた記者は他社の記者と会見の内容を照らし合わせ聞き漏らしがないか確かめ、それを彼らの所属する会社に送る。結果、新聞やテレビで各社横並びで全く同じ内容の記事が載る。誰一人としてその裏をとろうとはしない。そして日本記者クラブにはフリーランスの記者、雑誌記者、外国人記者は入ることが出来ない。

これはジャーナリストによる談合なのである。彼らは余計な取材という手間をかけることを厭うあまり政府の都合の良い発表を垂れ流す道を選んだ。どの社も同じ内容を示し合わせるので特オチもない。この結果損をするのは国民の側である。政府の都合の悪い情報に接する機会を奪われるのである。

さて、上杉隆氏の質問である。

今回の大久保秘書事件では、それを報道するジャーナリズムに対しても徹底的な検証がなければならない。大手新聞やテレビニュースでは「関係者」の話として小沢代表の金権体質が暴かれたという報道に終始している。しかしそれは「関係者」が語ったというだけで、報道側はひとつも裏をとっていない、所謂情報の垂れ流しなのである。

さらに今回は異常な現象が見られる。それは、「関係者」の話に異を唱える者を徹底的に無視をするか糾弾しようとする姿勢である。国策捜査だというと、そんなわけがないと述べる専門家を探し出して連れてくるが、そうだという専門家は無視をする。或いは叩く。日本の報道機関は自ら政府宣伝を行う犬として生きる場所を得たようである。小沢一郎を激しく叩いているけれど、その100%は根拠のないモノばかりだ。完全に権力の犬である。

上杉隆氏がどのような理由で小沢一郎の進退問題を中心にした記者会見で、記者クラブ談合制への質問をしたのかは分からない。自分のしたい質問を他の記者がしてしまったので、ついでに聞いてしまえとばかり、関係のない質問をしたのかも知れない。或いは記者クラブ所属の議員に一泡吹かせてやろうという魂胆なのかも知れない。

ただ、あの質問が行われたその一瞬だけ、会場内に清涼の風が吹いたような気がしたのである。