菅から前原へ。総理交代の許可が下りたのかもしれない

新聞を手に持ったまま新聞を探したりするようなことが日常茶飯事で、我ながらそそっかしくボンヤリとした性分であることが情けない限りなのだが、世の中には常にアンテナを張り巡らし微弱な信号の断片を捕らえて、そこから一つのストーリーを組み立てる才人がいるものである。

今朝何気なくTwitterを流して見ていたら、元外務官僚で防衛大学教授も務めた孫崎享氏が意味深なtweetをしていた。アーミテージ(A)と日本政治と題された連続投稿で、それを最初に紹介する。

アーミテージと日本政治1:ジャパン・ハンドラーとして今最も動くは政権内でキャンベル国務次官補、外でアーミテージ元国務副長官。日本の米関係者は配下的存在。文藝春秋2月号アーミテージの対談掲載。「小沢氏に関しては今は”反米”と思わざるをえませんね。何らかの理由があって考えが固くなった 12:42 AM Jan 7th

Aと日本政治:のかもしれません。彼はいうなればペテン師(crook)ですね。彼は日本の将来を”中国の善意”にあげようとしている。」傲慢さむき出し。この意をうけて小沢排除に動く日本。菅総理尖閣関連発言に関し、「彼は自分が何を言っているか理解していないでしょうね」。菅氏と仙石氏 5:49 PM Jan 7th

Aと日本政治3:小沢切りが任務。この役目果たせばご苦労さん。それだけに菅氏任務遂行に必死。でも菅さん、米国は見限ってますよ。文藝春秋同時期に「菅・仙谷には国を任せられない」の標題で 西岡武夫参院議長論評。一見議長の総理批判異例。米国の風読めばOK.辺野古移転力説しセーフと思う 5:56 PM Jan 7th

Aと日本政治4:「安陪さんは日本の望む物は自立しても得られないことを判っている。そして安保枠内で強くなること。恐らく前原氏も同じでしょう」、自立目指さない政治家かどうかがAの基準。前原氏見事合格。おめでとうございます。こんな台詞吐くのが今日本を牛耳っている。日本政財官報道諾々追随 6:06 PM Jan 7th

ここで孫崎氏が言わんとしていることは、菅と仙谷はそろそろお役ご免で、いよいよ前原総理誕生の準備が整ったということだろう。

孫崎氏のtweetにも出てくる西岡武夫参議院議長の仙谷官房長官批判はもちろん、民主党の川内衆議院議員Twitterを使い菅首相批判を展開させた。

来週、両院総会に党大会。その後に人事なのだそうだ。どういうメンバーで、通常国会に臨むのかも分からず、どう方針を説明するのだろう。やり方が全て姑息だ。 Jan 07, 11:51pm

「こんなに頑張っているのに、なぜ理解してくれないんだ」と、総理は語ったそうだ。頑張る方向が間違っているからでは?国民を裏切って、頑張ってると力んでも、詮無きことではないか? Jan 07, 11:58pm

川内議員は今朝のTBSのテレビ番組でも菅首相批判をしたようで、その時の様子も記事となっている。

民主・川内氏、「マニフェスト勝手に見直し、なんだ!」 首相発言ばっさり
民主党川内博史衆院議員は8日午前のTBS番組で、菅直人首相がマニフェスト政権公約)の全面見直しに言及したことについて「いろんなことを発言されるのはいいが、十分に議論してからすべきだ。勝手に『これはできません』というなら選挙の公約、政党の約束はなんだということになる」と批判した。

首相が「徹底的にやる」と総辞職の可能性は否定したことに対しても、「国民生活のために政策を前進させるのなら大いに結構だが、単に破れかぶれで暴れてやるということでは困る」とかみついた。

さらに「覚悟の方向性が問題ではないか。政治は国民のためだ。自分のために首相でいるわけではないということを菅首相は分かってらっしゃるのか」と指摘した。川内氏は菅首相と距離を置く鳩山由紀夫前首相、小沢一郎元代表に近い。

西岡参議院議長も川内議員も言っていることは尤もなことで共感するのだが、ここで注目すべきは、どうしてこのような政権批判が今頃マスメディアに載り始めたのか、という点である。つまり、マスメディアは今まで菅政権批判を封印してきたのに、ここにきてそれをニュースにし始めたことである。少し前ならこのような発言はなされても報道されることはなかった。

何故かというと理由は簡単で、即ち一種のスピンコントロールが始まったからだろう。つまり確実に何らかの意図があって報道がなされている。その意図の元で行われているのは、少し前までの菅政権擁護と小沢攻撃ではなく、菅政権を崩壊させ次の政権を作るための世論誘導にあると見るべきだろう。

もう一つ例を挙げる。

それは5日に菅総理が出演した報道ステーションというニュース娯楽番組の視聴率が異様に低かったという話がネットだけではなく色々な媒体で流れたことだ。

この低視聴率に関しては、通常12〜13%である視聴率が菅総理出演時には6.9%だったことからくるのだが、専門的に言えば必ずしも菅総理出演のせいだとはいえないようなのである。以下はそのあたりを解説した参議院議員有田芳生氏のブログからの抜粋である。

21時54分に番組がはじまったとき、画面には司会者とともに首相の姿があった。そのときの視聴率は5・4パーセント。そもそも「入り」から低視聴率だったのだ。その原因はテレビがまだ正月体制にあったからである。日本テレビは午後7時から11時24分まで「ザ!世界仰天ニュース」、フジテレビは同時間に「超ホンマでっか!?」という特別編成だった。この2番組が高い視聴率をあげたことは翌日に明らかとなった。それに対抗した「報道ステーション」は、最初から苦戦を強いられていたのだ。菅首相の出演は2つのCMを挟んで22時40分まで続く。その間の最高視聴率は8・7パーセント、コーナー終了時は6・7パーセント。菅首相が出演したコーナーの平均は7・2パーセントである。

そこから次のコーナーに移り視聴率が下がった結果が6・9パーセントという数字となった。菅首相が出演したから視聴率が下がったのではないことが、この流れからも明らかである。菅首相が出ていた同時間帯の日本テレビの視聴率は19・7パーセント、フジテレビが20・8パーセント。多くの視聴者が総理の話を聞くよりも娯楽番組にチャンネルを合わせていたということである。安倍晋三元総理がかつて「報道ステーション」に出たときは16・7パーセントだったと報じた産経新聞は、放送時期などの比較条件を欠いたため、いささか単純にすぎる。菅首相の出演についていえば、チャンネルを合わせた人の多くはコーナーの最後まで見ていたということが視聴率グラフから見えてくる。ただし首相が語ることを聞きたいという新しい視聴者が増えなかったと評価することもできる。

決してこれが低視聴率であったわけではないと有田氏に分かるなら、プロのテレビ関係者なら勿論分かっているはずである。だのに菅首相登場が低視聴率を生んでテレビ関係者が愕然としたという噂が流された。最初はネットから始まった噂だったのだろうけれど、マスメディアもこれを打ち消そうとはせず流れるままに放置していたのが尋常ではない。

孫崎氏のtwitterはこれらを敏感に察したものである。しかも現在前原外務大臣アメリカに渡っているではないか。

前原外相、米国務副長官と会談 日米関係進展で一致
【ワシントン共同】前原誠司外相は7日昼(日本時間8日未明)、スタインバーグ米国務副長官とワシントンで会談し、春に予定される菅直人首相の訪米時にまとめる日米同盟深化に関する共同声明をめぐり安保、経済、文化の各分野で日米関係を進展させていくことで一致した。

6日の日米外相会談で合意した新たな「共通戦略目標」策定に向け、外務、防衛閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)開催時期をめぐっても意見交換したとみられる。北朝鮮問題など東アジア情勢についても議論した。

会談にはグレグソン米国防次官補らが同席。前原氏はこの後、ドニロン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)とも会談した。

前原外務大臣はこの他にもジャパンハンドラーズとも呼ばれる人々と会談を持ったようである。そして恒例の献花も行われた。これは日本の国会議員が総理就任前に行うと総理大臣になる確率がぐんとアップすると言われている儀式でもある。勿論それは冗談だろうが、リンク先の写真を見るとあながちジョークではないような気がしてくる。(写真はbilderberg54氏のtwitterより)

そして明日から始まる一週間は国会開催前の波乱の一週間となる様子である。13日(木)には党大会があるのだが、前日の12日(水)か或いは党大会当日は小沢一郎への強制起訴が行われる可能性が高いと報道されている。昨年9月の民主党代表選の投開票日が検察審査会による強制起訴議決の決定日だったことからも分かるように、小沢一郎に公権力が仕掛けを行うのは常に代表の交代があり得る日である。

逆に考えた方が分かりやすいだろう。

13日の党大会は、支持率低迷している菅総理への批判で粉砕する可能性がある。いくら菅が権力にしがみつこうと党内からの支持がなくなれば続投は不可能だ。菅内閣総辞職が既定路線となり予算案と引き替えに辞任することになるだろう。ほぼ同じ時に小沢一郎への強制起訴が発表され、小沢一郎は勿論、親小沢議員に「ここはもう一回休み」と思わせれば民主党は一気に前原政権へ梶を切る準備が整うだろう。

そうなった場合、菅と仙谷はお役御免で三行半が突きつけられ、前原のライバルである岡田幹事長も同時に捨てられる可能性が高い。

マスゴミらの菅首相を突き放したような態度への変化と、こうした政治日程とを考え合わせると、遂に米政権は菅を見限り次の政権へのゴーサインを出したと予想されるのである。

前原総理のミッションとは何かというと、沖縄米軍基地関連での思いやり予算等の増額、日米同盟の深化、米国債の大量購入、日本国内法の従米改正、そして反中国路線の強化である。中国に対して警戒発言をしその後逃げ回っていた枝野前幹事長あたりが外務大臣に就任するかもしれない。

勿論こうした筋書きは単なる予想であるけれど、いずれこうなりそうだと思っていた悪い予感というものは当たるもので、新年早々陰鬱な気分にさせられる。菅内閣総辞職は兎も角、前原総理誕生は予想が外れるようにもう一度初詣にでも行きたい気分である。

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