小沢幹事長、いいじゃないか

鳩山次期総理大臣が小沢一郎に民主党の次期幹事長を要請し受託された。

僕は小沢一郎は現在と同じく代表代行のまま選挙担当になると思っていたのだが、鳩山次期総理は小沢一郎を幹事長に就け、自身は正々堂々と総理大臣職に専念するつもりのようだ。これでいいじゃないか、と思う。

今や民主党の国会議員は衆議院だけでも300人を超える大所帯となった。当然政党助成金や(今のところ禁止されていない)企業献金、個人献金など、扱うお金の金額も今までと比べものにならないほど膨れあがる。そして多くの新人議員を含む多数の議員を取り仕切る役目となる幹事長には、経験豊富でかつ誰からも一目置かれる存在の人間こそ相応しい。そうなると小沢一郎以上の適任者が民主党にいるだろうか。まずいないだろう。これだけの存在感のある政治家は自民党にだっていない。

この人事にマスコミは無理矢理疑問を作って不安を煽ろうとしている。彼らの言いぐさは「二重権力構造」である。要するに、小沢一郎の政治力が鳩山由紀夫を上回るから、小沢一郎院政が敷かれるのではないかと言いたいようである。

このような報道には、鳩山小沢両氏ははっきりとクギをさしておけばよいかと思う。「二重権力構造」だの、いくら言論の自由だからと言って、日本の議会制民主主義を冒涜するものだ、と言っておけばよい。また、国民の大多数の信任を受けた先の選挙結果をも軽視する意見であり、ひいてはその結果を生み出した国民を愚弄するものだ、と。

そのような心配を煽るよりも、党務を小沢一郎幹事長が取り仕切った安定感の上に、鳩山新政権が建てられることのメリットを考える方がずっと健康的である。党務を小沢一郎に任せておけば鳩山新総理は総理大臣という重責のある職務に専念できるのである。政権交代をして、初めて与党となる民主党にとって、これ以上の人事があるだろうか。

それでも小沢一郎がいつ鳩山由紀夫の寝首を掻くかも知れない、と心配する人もいるのかも知れない。所謂小沢アレルギーを持つ人々なのだが、そういう人は3月の西松事件を思い出してみればよいかと思う。

大久保秘書が逮捕され、マスコミから誹謗中傷の謂われのないバッシングを小沢一郎が受けたとき、最初にこれは国策捜査であると言い放ったのは鳩山由紀夫である。この時、小沢一郎がバッシングで沈めば自分も一緒に沈んでしまう危険を冒したのである。しかも鳩山由紀夫はその後も国策捜査という言葉を引っ込めることはせず、一貫して小沢一郎を擁護する姿勢を崩さなかった。一蓮托生である。

こういう人達を同士と呼ぶ。この間柄は他に石井一、西岡武夫平野貞夫等にまで拡がっている。また新党日本田中康夫代表もこの輪の中に入る。一方でこの輪から距離のある人達も存在する。

そして、彼ら外れた人達が現在一生懸命権力闘争の真っ最中のようなのである。

鳩山=小沢ラインから外れた人々が、「政権移行チーム」というものを作り、小沢一郎を外した形の人事構想を作り、鳩山=小沢ラインの思い通りにならない人事を先に発表して既成事実を作ろうとした。それを鳩山=小沢ラインが気付いて止めた。多少の動揺が党内に広まったと見るやすかさず小沢一郎幹事長を決めて事態を収拾した、というのが真実のようである。

平野貞夫著「わが友・小沢一郎(幻冬舎)」では、西松事件が起こった際、石井、西岡、田中、平野が集まって会談した内容が記されている。その時の平野の発言が興味深い。

「ただ、民主党議員の中から事実として、平然と小沢辞任論と説明責任論が出ています。2つの傾向がありまして、ひとつは一部マスコミと結託して、計画的に『小沢降ろし』をやっているグループ。もう一つは何もわからずにマスコミにつられて小沢辞任論を口にする人達です。前者は以前からの確信犯で、ポスト欲しさの人達だから放っておくしかありません。後者は教育すれば理解しますから、誠実に説明をしていけばいいと思いますよ(38P)」

この平野の会話に於ける前者のグループが今回も暗躍したわけである。

小沢幹事長人事は党内を安定させ、鳩山新総理を職務に専念させ、ポスト欲しさの権力闘争を防ぎ、なおかつ来年の参議院議員選挙への小沢一郎の影響力を最大限に行使できるという一石二鳥以上の効果を持つわけである。これ以上の人事があるだろうか。

一部問題があれば、それは東京地検特捜部が再び暴走する懸念であるが、それに対して鳩山由紀夫は大丈夫とインタビューで答えている。総理大臣就任前に希望的観測で答えることはないだろうから、何らかの確信があるのだろう。

マスコミや反鳩山=小沢派は次々と策を弄し、次から次へと搦め手を出してくるだろうが、常に正々堂々と中央突破をすればよいと思う。選挙結果を見るとわかるとおり、あれだけの国民の信任があったのだ。その国民を裏切らない限り、国民は支援を続けるだろう。