朝日新聞はどこへ行こうとしているのか

天木直人史のブログを興味深く読んでいる。天木氏はレバノン大使を務めた元外務官僚で、小泉政権イラクへの自衛隊派兵を批判してパージされた。その後「さらば外務省」などの著作を世に出した人である。

さて、そのブログに「政権交代を否定する朝日新聞」という記事が出た。僕も常々、朝日新聞の記事のあり方に疑問を持っているので共感した次第である。その記事の中で最も核心の部分は下記の所だろう。

 その論調は、一見まともな体裁を取っている。すなわち、政権交代の長所は政権の刷新性であり、日本政治に競争原理が導入される点であると言い、短所は政策の継続性が失われる事にともなう混乱だ、競争原理が行き過ぎると政局中心主義に陥る(薬師寺)、などとバランスをとった言い方をする。

  しかし紙面を注意して読むと随所に民主党批判や政権交代への否定的物言いが表出している。まるで読者に対するサブリミナル効果を狙っているかのようだ。


薬師寺というのは薬師寺克行氏(朝日新聞論説委員)を指す。この対談では議長のような役割を担当している。

多分朝日新聞はよっぽど小沢民主党代表が嫌いなのだろう。前原誠司氏と同じで、何時までも執拗に小沢攻撃を繰り返している。

もう一つ、面白い例を挙げる。昨日のエントリーで、前原誠司氏が小沢代表批判をした記事を紹介したのだが、それは朝日新聞の記事であった。一方同じ記事が日経新聞にも出ていたのを見つけた。同じことを書くのに朝日と日経ではこれほど温度感が違うという例である。

朝日新聞 前原副代表ら小沢氏批判「このままでは政権交代ない」

民主党前原誠司副代表は9日、京都市で講演し、世論調査では違法献金事件を巡る小沢代表の説明に納得していないとの回答が多いことをふまえ「このまま選挙に突っ込んだら政権交代はない」と指摘。「選挙に臨める形にしていかなくてはいけない。(小沢氏が)仮に辞めた場合は(代表)選挙をやった方がいい」と述べた。代表選での自身の対応については「今回は出るつもりはない」と語った。

 仙谷由人政調会長堺市での講演で「公共事業の適正化を言ってきた民主党(の代表)が、なぜ西松(建設)からお金をいただいていたかが問われている」と指摘した。

 一方、鳩山由紀夫幹事長は記者会見で「代表にはベストを尽くすよう申し上げている。説明責任を果たしていると国民が感じることで、代表の下で十分に政権交代をなし得る」と強調した。



日経新聞 小沢氏進退、選挙情勢調査で判断 前原氏「続投も」

 民主党前原誠司副代表は9日夜、京都市内での集会で、西松建設の巨額献金事件に絡む小沢一郎代表の進退問題について「党の(衆院選)情勢調査は恐らく5月いっぱいはかかる。いまガタガタ動くのではなく、分析結果に基づき執行部がどう判断するか待ちたい。その前に解散があれば直感的に判断する」と語った。

 同時に「このまま選挙に突っ込むと政権交代はない」としながらも、党首討論有権者との対話集会に前向きな小沢氏の姿勢を踏まえ「しっかり説明し、納得しない(有権者の)方が減るなら続投もあるかもしれない」との認識を示した。小沢氏が辞任した場合は代表選挙の実施が望ましいとしたうえで「私は今回、出るつもりはない」と述べた。


日経新聞だって小沢批判を繰り返していたわけで、それも最近は流石に沈静化してきたようなんだけれど、一方の朝日新聞だけはいまだに粘着している。

もはや東京地検特捜部も、小沢代表の秘書を逮捕し起訴してはみたが、事件はそれ以上広がらず、世間からは検察批判が嵐のように起こっている状態である。朝日新聞はその逆風の中、自分だけが正義であると信じ、こうした小沢批判を繰り返しているように見える。

面白いのは朝日新聞社という大企業として括ってみると、朝日グループの中でも意見の対立があることがわかるのである。

週刊朝日5月15日号

続・検察の劣化
徹底検証
西松建設事件」とマスコミ報道

貝になってしまった「法の番人」たち ジャーナリスト 松田光世

あえて言う「いま小沢が辞めたら民主主義の敗北だ」ジャーナリスト 高野 孟


上記記事はとても読み応えのある記事であり、朝日新聞とは真っ向から対立するかのように検察批判を行い、小沢代表続投を支持しているのである。

同じ新聞社の出している、最も発行部数の多い新聞と最も発行部数の多い雑誌が、正反対の主張をしているのである。これは船頭がいないことを意味する。新聞編集部は部内の空気を読んだだけで記事を書いているのではないか。渡辺恒雄といういい意味でも悪い意味でもカリスマが居座っている読売新聞ではこうはいかないだろう。

天木直人史のブログに戻る。天木氏の記事は以下のようにしめられる。

ついに朝日新聞はここまで来てしまった、という事である。

朝日の読者離れは加速していくだろう。いや、ひょっとしたら朝日新聞はメディアから消えていくかもしれない。


全く同感である。下手をしたら3年程度で今の経営形態では立ちゆかなくなるのではないだろうか。そうなったところで誰も困りはしないのだが。