那覇地検「日中関係を考慮」発言は官邸を巻き込む自爆テロ発言

今月7日に尖閣諸島周辺で海保巡視船に体当たりし拘禁されていた中国漁船の船長が処分保留で釈放された。

沖縄県尖閣諸島周辺の日本の領海内で今月7日、海上保安庁の巡視船に中国漁船が衝突した事件で、那覇地検41件は24日、公務執行妨害の疑いで逮捕、送検されていた漁船のセン其雄船長(41)を処分保留で釈放することを決めた。船長は25日未明に釈放され、チャーター機で中国・福州に向け石垣空港から出国。(47NEWS)

最初このニュースを聞いたときは、漸くこの馬鹿げた事件のケリがついたのかやれやれとホッとしたのである。しかし事態は奇妙な方向に舵が切られていた。

那覇地検は「わが国国民への影響や、今後の日中関係を考慮すると、これ以上、身柄を拘束して捜査を続けることは相当ではないと判断した」と異例の説明。(47NEWS)

この那覇地検の説明を聞いたとき、これはおかしいぞと感じた。何か気持ちの悪い感覚がするのである。やがてすぐに仙谷官房長官が会見を開いた。

仙谷由人官房長官は24日午後の会見で、那覇地検が、海上保安庁の巡視船との衝突事件で送検されていた中国漁船船長の釈放を決定したことについて、「地検の判断」だと述べた。(Bloomberg.com)

続いて前原外務大臣、岡田幹事長、菅首相も、相次いで「地検の判断」を歓迎するコメントを発表しはじめた。

一方で一部の識者達は彼ら政府首脳に異議を唱えたのである。

巡視船が負った損傷の補償が決まっていない中、なぜ釈放したか疑問だ。「今後の日中関係を考慮した」というが、外務大臣でもない、一検事が外交を考慮するのはおかしい。中国の思惑に考慮して釈放するというのは、越権ではないか。(識者談話:配慮の釈放は越権 緑間栄・沖国大名誉教授=国際法:琉球新報)

上記緑間栄教授も言うように、外務大臣でもない一検事がどうして「日中関係」を考慮しなければならないのか、僕にはその点が引っかかったのである。那覇地検の「日中関係に考慮して」という発言で感じた気味の悪さはこれが原因だった。

ちょうどフジタというゼネコンの日本人社員が軍事管轄地域を許可なく撮影したと中国政府によって逮捕拘束され、官邸はいかにも浮き足立っていたようである。国連では菅首相と前原外務大臣が“首脳外交”を行っている最中だった。菅首相は演説を始める前に大勢の聴衆が退席したことに気分を害した風も見せず漢字の読み違いなどものともせず厚生相時代の立派な経歴を披露しご満悦、前原外務大臣はヒラリー・クリントン国務長官に「尖閣事件などすぐに解決しますから」と無責任にも言ってのけた。

そしてここからは邪推である。

とにかく国連総会が終わるまでにこの問題を解決したかった仙谷官房長官は中国人船長を釈放するように最高検に圧力をかけた。この問題が長引くと菅政権の命取りにもなりかねないから、船長などさっさと釈放して中国の怒りを静めようとしたのであろう。最高検には「検察の判断で釈放する」ことにするように厳命することも忘れなかった。それもこれも内閣を守るためである。

しかし検察としては釈然としない、と言うか全く気に入らない。最高検を通して官邸が釈放を要請してきたのに「検察の判断」で釈放せよと言う。但し検察の判断の理由については指定がなかった。それならば政治的判断であることをにおわせてやろう。そうすれば検察判断ではなく、官邸判断だと分かる人には分かることだろう。これは官僚の意地である。ふざけるな、と声を大にして言えない悔しさが冒頭の那覇地検の説明となった。

与野党問わず、今回の検察の判断には疑問を持つ議員が多数いるようである。何せ検察が勝手な政治的判断をしたおかげで、日本はとてつもない外向的敗北を喫したのである。図に乗った中国政府は日本に対して謝罪と慰謝料まで請求しようとしているし、今後尖閣諸島沖にもどんどん漁船が侵入してくることだろう。そしていずれ近いうちに今まで領土問題ではないと突っぱねていた日本の主張は覆えされ、これを領土問題として認識させ外交カードとして使われるだろう。

だから、少なくとも今回の検察判断の経緯は明らかにしておくべきなのである。すなわち判断を下した人物を突き止め国会で証人喚問することだ。そこで菅や仙谷、或いは前原の名前が出てきたらそれは見物である。内閣は吹っ飛ぶだろう。すなわち検察の内閣を巻き込んだ自爆テロである。

この邪推はジャーナリストでもない僕が勝手に想像したものであるが、でもこう考えるのが一番しっくりくるんじゃないかと確信している。先日の民主党代表選挙で小沢一郎は立候補した理由を「今何とかしなければ日本は大変なことになる」と言っていた危惧は正しく的中しようとしている。

最後に鳩山前首相の言葉を紹介しておこう。

那覇地検保釈決定についても「国民の中に釈然としないものが残っている。(政府から)何らかの働きかけがあったのかも含めて、事実は事実として真相を国民に知らせる責務がある」と述べた。(Yahoo! NEWS)

さて、菅内閣は一体いつまでもつのだろうか。