デマゴーグ(独:demagog:扇動政治家)はアジテーション(英:agitation:煽動)報道で生きている

暫く私事にかまけてこのブログの更新もままならなかった。その間も世間では相変わらずの偏向報道と、デマゴーグ達の無意味なアジテーションばかりが繰り返し行われ、いつしか鳩山内閣の支持率は30%を割り込み危険水域に入り始めたという。

最近起こった出来事の中で特に可笑しいのは、生方幸夫民主副幹事長が解任されたニュースで、最初は驚いたけれども、それはいつしか苦笑に変わってしまった。特に解任された生方議員が、辞任を迫った高嶋良充筆頭副幹事長との会話を録音しメディアに公開したり、さらには地元の千葉県で小沢幹事長に辞任を迫る演説をぶったりしているのを見聞きするにつれ、政権交代といってもまだまだ過渡期なんだなあという感慨を持つに至ったのである。

週末になると生方氏が政治討論番組などに次々と出演し、得意げに自身の正当性を一生懸命アジテーションする様を見て、何とも情けない人がいるものだと体中からエネルギーを奪われるような脱力感を感じていたら、今日になって小沢幹事長が生方氏の副幹事長解任を撤回し、生方氏もそれを了承したというのだから苦笑を通り越して狐につままれた気分になる。

この件の元々のきっかけは生方氏が産経新聞にインタビューされたところから始まる。
【単刀直言】生方幸夫民主副幹事長「党の“中央集権”、首相は小沢氏を呼び注意を」 (産経ニュース)

ここで生方氏が言っているのは主として次の2点である。「政策調査会と、その下の部会を再び作って、みんなが自由な意見をいえるように」することと、「民主党への信頼が低下している要因には「政治とカネ」の問題もあります。小沢さんに関して、今までの説明に納得していない人が圧倒的に多数で、幹事長をお辞めになるべきだという意見が多い」から小沢幹事長は辞任せよ、という意見である。

こうした生方氏の主張に対して丁寧に反論したブログがあり、そちらから少し引用してみよう。
生方氏の「単刀直言」に「直言」する (永田町異聞)

【生方単刀直言】

与党に政策部門がないのは絶対におかしい。民主党に元気がなくなったのは、自由に議論する場がなくなったからです。政策調査会と、その下の部会を再び作って、みんなが自由な意見をいえるように戻さないといけません。


(筆者直言)

政調会と部会をつくって自由に議論したいという。まさか、自民党のような政調会と部会にしたいというのではないだろう。

自民党政調会の部会には、官僚が法案を通すための用心棒として育てた族議員が跋扈し、利権を漁っていたではないか。

官僚の根回しで党の部会が了承し、政調会、総務会の議決を経た政府提出法案は、官僚トップの事務次官会議で形式的に審議したあと、ほとんどそのまま閣議決定されたものだった。

つまりは、自民党政調会が政策決定の実権を握っていたのだ。

それを根本的に変え、政策決定を内閣に一本化するために民主党政調会をなくしたはすだ。

その政調会と部会を復活させようというなら、その組織の性格、中身、政策決定との関係を国民に明らかにしたうえで、議論すべきである。

そしてもう一つ、

【生方単刀直言】

 われわれは自民党政権がやってきた中央集権はダメだと言ってきた。地方分権にしようといってきたのに、民主党の運営はまさに中央集権です。

今の民主党は権限と財源をどなたか一人が握っている。下に権限と財源が与えられていない状況はおかしいでしょ。

党の代表である鳩山さんは、小沢さん(一郎幹事長)を呼んで党が中央集権になっていることをきちんと注意してほしい。


(筆者直言)

地方分権に関する民主党の構想は、政治・行政の統治権に関し、地方にできることは地方に任せ、中央政府は国レベルの仕事に専念しようという理念である。

党の運営を地方分権にしようということではない。党運営が中央集権であることにどのような不都合があるのか、明確にしていただきたい。

自公政権では、地方の首長らが霞が関詣でをして公共事業などへの予算付けを陳情するさい、地元選出国会議員が介在して恩を売り、地元への利益誘導で票獲得につなげていた。

それに対して、民主党の陳情ルールはこうだ。地元国会議員は単なる窓口として党本部の幹事長室につなぐだけ。当然、各省庁は受け付けない。つまり、幹事長室に陳情を一本化させることになっている。

これが、民主党の中央集権的党運営だと、筆者は理解している。

幹事長が権限と財源を握っているのは自民党も同じだった。それを下に与えるというのは、具体的にどのようなイメージの仕組みを考えておられるのか。その点をはっきりさせて議論しなければ、生方氏の真意が見えない。

鳩山首相も、小沢幹事長に注意しろと新聞で直言されても、注意すべき中身がよくわからないだろう。

ここで「永田町異聞」が生方氏に対して述べた反論は一つ一つその通りであろう。また伝え聞くと、この生方氏は会合に出ても発言しないしそもそも出席率が非常に悪いといわれる。副幹事長職を全うしていない人のようである。

そして高嶋良充筆頭副幹事長が生方氏と話をし副幹事長職からの辞任を求めたのだが、生方氏はそれを拒否、それどころか高島氏との話の席に録音機を持ち込み一部始終を録音しメディアに渡して得意になっていたのである。勿論メディアは生方氏が盗聴したことを伏せたまま、ニュース映像にその録音が流れるというおかしな展開になっていたのである。

(参考)
民主内紛 生方、高嶋両氏それぞれの言い分 (産経ニュース)

マスメディアはここぞとばかり小沢幹事長が独裁者であり、民主党は小沢独裁のしたにあるダークサイドの政党であるという印象操作を一生懸命に行う。西松事件や、鳩山献金問題、石川議員や秘書逮捕事件などでお馴染みのマスゴミの常套手段である。ニュースソースをマスメディアからではなく、インターネットのブログやツイッターからもインプットしている人々は「ああ、またか」と思ったろう。

そして実はこの時、ちょっと気になる記事が読売新聞からの記事の中にあり、報道されていることと実際に起こっていることにズレが生じている隙間が見えたのである。ちょっと長いのだけれど、読売のことなのでいつ勝手に削除するかもわからないから全文引用する。しかし肝心なのは中程にある一文だけである。その部分を朱色にしてみた。朱色の部分だけ読めば事足りる。

生方氏解任「言論封殺だ」民主内に批判の声

3月19日0時34分配信 読売新聞

 民主党小沢幹事長を批判した生方幸夫副幹事長が18日、解任に追い込まれたことは、結束を乱す不満分子は許さないという同党執行部の強権的な姿勢を強く印象づけた。

 鳩山首相が「民主党らしさ」をキーワードに政権浮揚を図ろうとしていた中での解任劇に、党内からは「言論の自由もない」と批判の声が上がっている。

 生方氏の解任について鳩山首相は18日夜、記者団から「言論の自由を封じる形は民主党らしくないとの声がある」と問われると、「レベルが違う議論だ。執行部に対する批判はあっていい。ただ、党の中では一切話をしないで、メディアに向かってされることは潔いのかどうかという議論だ」と述べ、党の対応に理解を示した。

 生方氏は衆院千葉6区選出で当選4回。読売新聞記者出身で、経済評論家として著書も多い。党内では横路衆院議長に近い。問題とされたのは、17日付産経新聞のインタビューで、生方氏が党運営を中央集権的と批判し、「鳩山さんは小沢さんを呼んできちんと注意してほしい」などと求めたことだった。

 高嶋良充筆頭副幹事長は18日、生方氏を党本部に呼んで副幹事長を辞任するよう求めたが、生方氏は「普通のことをしゃべっているのに辞めろというのは、党内に言論の自由がないということだ。情けない」と反発。高嶋氏は「議論する場がいっぱいある。なぜそこで言わないのか」と指摘したが、生方氏は「(処分するなら)正式に倫理委員会にかけてください」と求め、平行線に終わった。

 高嶋氏は会談後、生方氏以外の副幹事長を集め、副幹事長会議として交代を求める方針を確認。小沢氏と電話で対応を協議した。小沢氏は「そこまでする必要はないのではないか」と語ったが、高嶋氏が説得したという。

 高嶋氏は記者団に「放置しておくと党の求心力や他の議員の意欲がそがれる。解任ではなく、役職の交代だ」と強調した。

 高嶋氏の強硬姿勢の背景について「生方氏が呼びかけた政調復活を求める会合に41人が集まったことで、党運営批判の高まりに焦りを感じたのではないか」との見方がある。生方氏の行動について、輿石東参院議員会長が「幹事長室にいる人が、いかがなものか」と批判するなど党執行部としては、災いの芽を早めに摘もうとする姿勢が見られた。

 小沢氏に距離を置く議員からは公然と批判の声が上がっている。

 枝野行政刷新相は18日の記者会見で「生方氏が何か問題のあるようなことを言ったことが最近あるとは認識していない」と語った。野田佳彦財務副大臣も記者会見で「耳に痛い話をした人が辞表を迫られるのは極めてよろしくない。もっと自由闊達(かったつ)に感想や意見を述べてしかるべきで、闊達に意見を言う文化を持ってきたのが民主党の魅力だった」と党の対応に疑問を呈した。若手衆院議員は「これでは北朝鮮と同じだ。言論封殺の党と思われる」と語った。

 民主党の規約では、副幹事長は幹事長が選任すると規定されているが、解任などの手続きは明記されていない。生方氏は18日夜、党の対応について「幹事長を批判したから更迭というのは民主主義の原則を無視した行為で、国民は納得しない。副幹事長交代は承服しておらず、異議を申し立てたい」と語った。小沢氏の進退についても「国民が納得しなければ、幹事長を辞めるのが当たり前だというのが党内の多数派だ」と指摘した。

最終更新:3月19日1時16分

なんだか民主党内が一斉に反小沢の狼煙を上げたかのような印象を持つのだけれど、これは休み明けの火曜日に払拭されることになる。というか、火曜日にならないと払拭されなかったので、週末はマスゴミが生方氏を使ってしたい放題に反民主反小沢アジテーションを繰り返した。生方氏も実はマスゴミにのせられ利用されているだけとも知らず、得意満面でテレビ出演などをして反小沢アジテーションに躍起になっていたのである。

そして今日、火曜日に次のニュースが一斉に報じられた。
小沢氏、生方民主副幹事長の解任を撤回 「もう一度補佐してほしい」 (産経ニュース)

民主党小沢一郎幹事長は23日午後、国会内で副幹事長解任が決まっていた生方幸夫衆院議員と会談し、「続けてくれないか。もう一度補佐してほしい」と述べ、続投を求めた。生方氏はこれに応じた。

つまり結局は、小沢幹事長は元から生方副幹事長を解任するつもりはなく、高島筆頭副幹事長が少々勇み足で解任を要求していただけの話だった。解任するかしないかは幹事長である小沢が決めることなので、読売の記事のように小沢幹事長が乗り気でなければ解任にはならないわけである。

そして驚いたことに、生方副幹事長解任は週明けに撤回されるだろうという予測は、民主党議員をはじめ多くのメディア関係者が知っていたというのである。そのあたりの事情はTBSラジオ小島慶子のキラキラ」という番組内で、フリーランス記者の上杉隆氏が喋っている。

「ジャーナリスト 上杉隆さん」のポッドキャストを聴く! (小島慶子のキラキラーこのリンクは明日の夕方くらいまで有効です)

つまり生方解任の報道があった日には、解任自体が連休明けに撤回されることは明白で、その正式決定が今日火曜日になると既に決められていたのである。それは当初の小沢幹事長の発言からも明らかだった。また高嶋筆頭副幹事長の言う生方解任も仮処分でしかなかった。そこに最近少々ネタ不足気味のマスゴミが飛びつき、火のないところに無理矢理煙をあげ、生方という少々見識のない議員が一生懸命ハダカ踊りを踊ってみせたという訳である。この議員も目立たない地味な人のようで、こうして顔を売っておけば知名度も上がりメリットもあるのだろう。

マスゴミの報道の酷さはいつものことだけれど、民主党内にいるバカ議員の酷さも相当なものだということがわかる一件だった。

(3月25日 追記)
上杉隆氏がコラムでこの件を取り上げたので以下にリンクする。基本的に「小島慶子のキラキラ」内で話した内容と重複しているけれど、活字として残っているので、この生方問題に疑問のある方は目を通されるとよいと思う。
生方副幹事長解任という“誤報”で得をしたのは誰か? (ダイアモンド・オンライン)

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